2010年4月24日に琵琶湖の湖岸で採集したオオウラカワニナです。
写真同定して頂いたS先生(多謝)によると、普通に同定するとオオウラカワニナだそうです。
琵琶湖の湖岸ではオオウラカワニナによく似て、比較的よく見られるものとして、
タテヒダカワニナがあります。「びわ湖の底生動物」によると、
両種は次体層の縦肋数が数えることが出来る形質として挙げられます。
オオウラカワニナ 次体層の縦肋数 10~12(平均11.0)
タテヒダカワニナ 次体層の縦肋数 14~20(平均16.9)
この個体は次体層の縦肋数が12で、タテヒダカワニナよりは黒く太短く思えました。
このオオウラカワニナは環境省レッドデータブックによると、
「琵琶湖北岸の西浅井町大浦でのみ知られる琵琶湖固有種である」とあります。
おもっきり生息地公開ですが、そこしかいないし、和名もあるので隠しようがありません。
なお、写真の個体は西浅井町大浦で採集したものではありません。未記録産地かも。
この個体はまだ小さいですが、次体層の縦肋数は11でした。
同所的に捕れたカワニナ類です。
オオウラカワニナの他にはチリメンカワニナとハベカワニナが捕れました。
ギバチ水槽に入れてみました。軟体部の写真はあまり世に出ていないかも。
この日の2箇所で捕ったカワニナ類です。
最近はビワカワニナ亜属貝類のよくわからなさに少しはまっています。
カワニナ類そのものは、あまり興味ないのですが、ピンポイントで独立種が分布し、
環境が違うにしても、どれだけ違うものなんだろうと、色々と考えるうちに、
その生息環境が知りたくなりました。琵琶湖は船が頻繁に移動し、昔から漁業が盛んで、
貝引きやエリで混獲されたカワニナ類が、帰港途中や港などで選別後に捨てられ、
色々な種類のカワニナ類が、人為的な移動があると考えられるにも関わらず、
どうして湖岸の局所的にしかいないのだろうと。
そう考えると、カゴメカワニナの記事にもコメントしましたが、
環境地域変異程度の種類もあるのでは?と思っていました。
琵琶湖淀川水系という同じ水域に生息するため、種と扱われていますが、
見掛けはほとんどが亜種か、それ以下の違いしかないのでは?と思っていました。
学名が全て付いているのにまず驚きました。
「日本産淡水貝類図鑑1」によると琵琶湖淀川水系にはビワカワニナ亜属が15種分布します。
カゴメカワニナ、イボカワニナ、ハベカワニナ、タテヒダカワニナ、ヤマトカワニナ、
タケシマカワニナ、シライシカワニナ、モリカワニナ、ホソマキカワニナ、ナカセコカワニナ、
タテジワカワニナ、ナンゴウカワニナ、クロカワニナ、フトマキカワニナ、オオウラカワニナ、
本当に15種もいるのだろうか?
逆にカゴメカワニナの記事の個体は「日本産淡水貝類図鑑1」や「びわ湖の底生動物」
にある写真の個体よりも、螺層が多く、やや細長く、殻口に近い部分まで籠状が強く現れ、
採集した水深もかなり浅く、湖底は礫だったことから、何か違うなという気がしました。
それ以上を言及するだけの知識を私は持っていないため、
「まだ知られていないカワニナ類がいるのではないか」と書くに留めました。
しかし、カゴメカワニナはS先生によると2種あるそうで、納得ができました。
また「日本産淡水貝類図鑑1」にも2タイプあるような記述もありました。
ようするに、カゴメカワニナは種群のようです。
S先生によると確りとした論文として証明されたものではないですが、
現時点での私見・報告書・研究会・学会発表の知見からだと以下の考え方もあるようです。
ビワカワニナ亜属は種内変異が著しく、琵琶湖湖畔の分かり難い種は、
染色体がほとんどハベカワニナとか、ホソマキカワニナはタテヒダカワニナかもとか、
胎殻はヤマトカワニナとハベカワニナとタテヒダカワニナの3タイプしかいないとか、
先に記したタテジワ~オオウラまでは、別の種の生体型ではないか。オオウラカワニナは
タテヒダカワニナという種で、異なる形質に固定されただけの型ではないのか、
などなど非常に混乱し、ややこしい状態のようです。交雑もあるかもしれませんね。
魚屋さんから見たら、ビワヒガイとアブラヒガイ、フナ類やヨシノボリ類などが、
近いかもしれません。ようするに、ビワカワニナ亜属はよくわかっていないようです。
でも、それっぽい巻貝が捕れたら、そういう種だとして、当ブログでは紹介します。
この文章はそのための注意書きです(汗)。本当にS先生には快くご教授下さり多謝です。
個人的にはオオウラカワニナが種でなくても、狙って捕れて嬉しかったです。
オオウラカワニナかもと思ったときは、怪しく1人でニヤニヤしていました(爆)。