記事一覧

ファイル 790-1.jpg

和歌山県の河川で採集したヌマエビ南部種日本列島集団です。
ヤマトヌマエビの記事で、3枚目の個体です。4枚目も4個体がこの種類かな。
この長い和名は何や。と思われた方は、ヌマエビ類の考察をご笑覧下さい。
学名は Paratya compressa としたら、単純で楽なんだけど、
そこまで言及できる材料が無いので、 P. sp. か P. c. subsp. でしょうね。

旧来のヌマエビとヌカエビは、隠蔽種群としておくのが、一番な気もします。
ヌマエビ種群 Paratya compressa species complex です。
分布と生態が最大の特徴で、形態からは同定できないし、これは何々だなんて、
確りした根拠が無いので、怖くて言えません。言う方は重宝がられるでしょうが…。
カワリヌマエビ属の一種に見習って、ヌマエビ属の一種という表記も良いでしょうね。

ファイル 790-2.jpg
額角の写真も貼っておきます。
ヌマエビ種群の同定に使えるかすら分からないですが…。

ファイル 790-3.jpg
上からです。どうしても模様や色に目が行きますが、模様は標本にしても不変なものと、
生体だから発現するものとがあり、後者は決定的ではなく、傾向的な特徴なことが多く、
そこばかりに注目すると、誤同定や迷宮入りします。でも同定したくなりますよね。
ここまで難解なものは、無理に同定する必要ないんです。未同定はむしろカッコイイです。
何も分からないからではなく、わかっているからこそ、未同定にするのですから。


追記 2013年1月31日
日本列島集団と琉球列島集団は遺伝的距離が近いため、
あえて集団名を書く必要はないと判断しました。
南部種を池田氏の示し方に従い、南部グループと改めました。

ファイル 789-1.jpg

ヌマエビの記事に、にいつまさん(2013/01/11)から、ヌカエビというご指摘を頂きました。
写真は同じ個体です。調べれば調べるほど、厄介な状態みたいで、しんどかったです。
これがヌマエビかヌカエビか、それも大事ですが、ここでは考察を楽しみたいと思います。
オガサワラヌマエビのことは、異所的な別種なため、ここでは考えないことにします。

日本産ヌマエビの地理的分布と種内分化に関する遺伝学的研究(1994年)
↑まとめを抜粋「日本産ヌマエビは遺伝的に均一な集団として存在するのではなく、
遺伝的および形態的に分化した北部、中部、南部の3大グループに分けられ、
これらの3大グループは亜種レベル以上に分化した10の地域集団から構成され、
さらにそれぞれの地域集団は各地に独立した繁殖集団より構成される
という階層構造を持つことが示された。」とあります。

ここで言う3大グループとは、種を指していると思われます。図4を見て下さい。
すなわち、ヌマエビ北部種(2亜種)、ヌマエビ中部種(7亜種)、ヌマエビ南部種(亜種なし)。
2年後に同じ方が出された論文↓に名称が記されていました。
Genetic and morphological analysis of...omitted(1996年)
ヌマエビ属
├ヌマエビ北部種
│├日本海集団
│└太平洋集団
├ヌマエビ中部種
│├関東集団
│├北陸集団
│├山陰集団
│├周枳集団
│├東海集団
│├高岡集団
│└琵琶湖集団
└ヌマエビ南部種
日本産(小笠原除く)ヌマエビ属は、3種9集団(亜種)に相当するものがいるようです。

このため旧来のヌマエビ Paratya compressa compressa
ヌカエビ P. c. improvisa という1種2亜種の関係では示せず、
ヌマエビ南部種はヌマエビ P. compressa とし、
ヌマエビ北部種はヌカエビ P. improvisa とし、
2種として扱うことが増えたのだと思います。分布的に重なるところがあるため、
同所的な亜種関係はありえず、形態的差異が小さくても、2種とするのは当然ですね。

そして日本産(小笠原除く)ヌマエビ属を、ヌマエビとヌカエビという2種にする場合は、
ヌマエビ中部種は別種だが、遺伝的にどちらかといえば、ヌカエビに近縁なため、
第3の種として P. sp. とはせず、ヌカエビにまとめてしまっているのでしょう。

それでは3種いることが判明しているのに、なぜ20年近く経っても混乱しているのか。
おそらくヌマエビ中部種が、遺伝的に判別可能でも、分類学的には形態的差異が必要で、
ヌマエビとヌカエビの模式標本を検証できたとしても、3種のうちどれに該当するか、
判別が難しくて、放置されているのが現状かなと想像します。分類学あるあるですね。

さて、私の見解が正しければ、冒頭のこれが最も的に近いのは、
ヌマエビ中部種琵琶湖集団 P. sp. subsp. ということです。

ちなみに、琵琶湖でヌカエビの記録は見たことがありません。おそらく無いでしょう。
琵琶湖生物多様性画像データベースでもヌマエビだけ記されています。
また、滋賀県RDB(2010年版)では、ヌマエビ P. c. compressa とし、
亜種としてヌカエビ P. c. improvisa という旧来の説明が書かれています。

これは20年近く前の論文を知らないのでしょうか。この2つを書かれた西野先生は、
面識があり、論文もいつくか拝読しましたが、普通に考えると、ありえないです。
そう考えると、分類学的にカオスなため、無難に旧来の分類に、従ったのだと想像します。
学名の変更が記された論文はないはずで、旧来の分類は今なお生き続けているため、
学名の未確定な情報の扱いを無視するのは、ある意味ではこれも正しいと思います。

結局は何に従うかです。その判断は個々にあります。
私はヌマエビ中部種琵琶湖集団 P. sp. subsp. と暫定結論することにしました。
これはヌカエビとご指摘下さった、にいつまさんが間違っているとかではありません。
現段階では正解が複数あり、様々なことを鑑みて、その選択の1つとして判断しました。

ファイル 789-2.jpg
これは1枚目の写真と同じ場所で、同じ日に捕れたカワリヌマエビ属の一種です。
先日もエビ2種を県指定外来種に追加へという記事がありました。
「琵琶湖在来のヌマエビ」と記されていますね。わかりやすくていいなぁ…。

ファイル 789-3.jpg
ヤマトヌマエビの記事で、たぶんミゾレヌマエビと書いた個体です。
今見ると、どこがミゾレだと、言いたくなります。気にはなっていたんですと言い訳。
これはヌマエビ南部種だと思います。ヌマエビ記事の訂正と、新記事を近々に作ります。
本来であれば専門屋さんに、同定依頼をお願して、客観的な判断を仰ぐところですが、
淡水甲殻類屋さんに、知り合いがほとんどいないことに気付きました。。。疲れました。
(ヌマエビ類の考察2へつづく)

ファイル 749-1.jpg

2012年10月14日に三重県の汽水域で採集したコブシアナジャコ Upogebia sakaii です。
「伊谷行 (2012) コブシアナジャコ. 日本ベントス学会(編), 干潟の絶滅危惧動物図鑑
 海岸ベントスのレッドデータブック. 東海大学出版会, p. 183.」によると、
コブシアナジャコの分布は、和歌山県、徳島県、高知県、鹿児島県、沖縄県とあります。
また、本州,四国の産地は5ヵ所以内。すなわち、和歌山県、徳島県、高知県で5ヵ所以内。
私が捕った写真の個体は三重県産です。おそらく北限・東限を更新したと思います。
三重県の他水域でも、見かけた記憶があるため、まだ見つかるかもしれません。

ファイル 749-2.jpg
本種の特徴である、鉗脚の上面が深紅で美しく、鋭い棘が目立ちます。

ファイル 749-3.jpg
正面から見ると、何かとぼけた顔をしています。

ファイル 749-4.jpg
腹側から撮影。汽水魚水槽に入れてから、背側を撮影していないことに気付きました…。
こういう分散できる生物は、黒潮影響地域の沖縄県から茨城県(もしくは福島県)までの、
どこで見つかっても、不思議ではありません。ただ、基礎的な記録は必要かもしれません。

ファイル 733-1.jpg

愛知県の汽水域で採集したオサガニです。
これは昨日採集しました。呆然とするほどの土砂降りで、長ズボンをめくって、
半ズボンで道を歩くほどでした。ついつい「干潟雨泣」ってツイートしてしまった。
止んだと思ってやっていると、また土砂降りで、その後はカンカン照りでした。

ファイル 733-2.jpg
目的のチワラスボB種は捕れませんでしたが、運転免許証入りの財布が捕れました。
一応然るべき対処をしましたよ。オサガニはどこでもいると、高を括っていたけど、
何年も見かけず、ここであっさり捕れ、一番喜んで撮影したのがこの個体です。
魚はガンテンイシヨウジ、ウロハゼ、スジハゼA種、ヒモハゼ、アベハゼ、チチブ、
シモフリシマハゼ、トビハゼなど。増水で川の流れが速く、軟泥でしんどかったですっ。

ファイル 728-1.jpg

愛知県の一時的水域で採集したホウネンエビです。
シーモンキーを彷彿させます。分類で目は同じようですが遠縁みたいです。
シーモンキーことブラインシュリンプは、ビール酵母(粉末)とスピルリナを与え続けると、
これと同じような感じになります。それはやや大きめのヨウジウオ類の餌になります。