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琵琶湖の湖岸で採集したタテジワカワニナです。
本種は「日本産淡水貝類図鑑1」で「縦肋が次体層より上にみられる」とあります。
これは日本語的に次体層を含むのか、含まないのかで迷ったのですが、
「日本産淡水貝類図鑑1」の写真は次体層にないため、含まないと判断しました。

「びわ湖の底生動物」にある個体は、明らかに縦肋が次体層にあります。
更には次体層の縦筋数まで書いてあります。これはどういうことなのでしょう。
また、体層にも縦肋がある個体もいますが、これはハベカワニナとして良いのか、
タテジワカワニナとして良いのか、まぁ同種だろうなというのはわかりますが(爆)。

写真の個体は左と中央は、何とかハベを脱したタテジワと言って良いでしょう。
右の個体はハベの範囲にも入りますが、これを分ける意味は感じられません。

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別の場所で採集した個体です。どちらかと言うとハベの範囲ですが、
場所からタテジワとも言えます。中間型という楽な表現方法もありますが…。

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こんな感じで採集していました。ショルダーベルトがねじれているのは内緒です。
写真の個体はタテジワカワニナと、一番右だけタテヒダカワニナです。
紛らわしい和名ですが、両者は別種だと思います。まだ捕れていない種類はいますが、
カワニナとチリメンカワニナの2種を除いて、私の大まかな印象で言えば、
ハベ系(7種)
 ハベカワニナ、タテジワカワニナ、フトマキカワニナ、クロカワニナ、
 ナンゴウカワニナ、ナカセコカワニナ、クロダカワニナ
タテヒダ系(5種)
 タテヒダカワニナ、オオウラカワニナ、ホソマキカワニナ、
 タケシマカワニナ、シライシカワニナ
カゴメ系(3種)
 カゴメカワニナ種群(顆著)、カゴメカワニナ種群(顆無)、イボカワニナ
ヤマト系(2種3型)
 ヤマトカワニナ(ヤマトカワニナ肋型とチクブカワニナを含む)、モリカワニナ
この4つくらいに分けることが出来るのではないかなと思います。
根拠は適当なので、西村はそう思ってるんだぁ、くらいに捉えて下さいね。

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軟体部はどれも一緒にしか見えないですが、今後に同定ポイントになったら、
後悔するので、一応撮っておきました。そういう撮り方すると切が無いですけどね。

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必然的に食べておきました(笑)。この流れを作ったのは失敗だった…。
いつものように塩茹で2分。爪楊枝で掘り出しました。そしてまたアレが見えたよ。
なるべく特徴のある大きな個体を選んで、食べるようにしているのですが、
そういうのはメスが多いようです。胎殻がどんな食感なのかは、十二分に知っているので、
外して食べたのですが、やっぱりまだ少し残っていて、バリッジャリっと。
しかし、他は苦味がほとんどなく、食感がとても良い、磯臭さのようなものはあるが、
あっこれなら食える。と思わせるものでした。美味しさランキングでは上位です。

この土日は4人で、カワニナ、チリメンカワニナ、ハベカワニナ、タテジワカワニナ、
フトマキカワニナ、クロカワニナ、タテヒダカワニナ、オオウラカワニナ、
ホソマキカワニナ、ヤマトカワニナ(ヤマトカワニナ肋型を含む)の10種を確認しました。
私としては自分でクロが捕れ、前から気になっていたことが、確認できて良かったです。

それは写真2枚目の上です。オオウラかもと。場所は大浦や大浦湾ですらありません。
何とか1個体だけ捕る事が出来ました。よく似たタテヒダは捕れませんでした。
次体層の縦肋を数えると11でした。普通に同定すればタテヒダではなくオオウラです。
典型的なオオウラよりかは、やや細長く、縦肋がやや弱く、見方によっては、
タテヒダの要素が入っています。同定者によって、意見が分かれそうです。
「日本産淡水貝類図鑑1」のオオウラも中間型というかそんな感じがします。
これまでカワニナ類の記事で述べたように、オオウラとタテヒダは同種だと思いますが、
オオウラの決定的な同定ポイントは、大浦産かどうかで決まるのかもしれません。
ひどい同定方法ですが、そうなるとタテヒダということになるんでしょうね。
タテジワも琵琶湖北湖西岸以外で捕ったら、それは別種ですのでお間違いなく(苦笑)。

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前回は食べられなったカワニナ。滋賀県の水路で捕ってきました(苦笑)。
フトマキカワニナもたくさん捕ってきました。写真はその一部です。よーく見て下さい。
ハベカワニナ、タテジワカワニナ、クロカワニナの要素が入っているように見えます。
さぁ、どれをフトマキにしようかな(爆)。悩んだ結果。一番左のがフトマキに決定!

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左から、カワニナ、フトマキカワニナ、ナンゴウカワニナ、ナカセコカワニナです。
カワニナはミスジカワニナではないか、という突っ込みは、ナシでお願いします。
フトマキはナンゴウにそっくりの個体だと、並べた後で気付きました(失敗したなぁ)。

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塩茹で2分。爪楊枝で綺麗に掘り出せました。よしっ食べよう。
カワニナは本当に美味しいのかな。しかし、ちょっと待て。前回の経験を経て、
一番口にしたくない物体が、たくさんフトマキに入っているのが見えるぞ。

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食べる前に恐る恐る解体してみました。胎殻(胎児殻・胎貝)さんたちの登場です。
なんだかヤッターメカが、メカの素を食べて、ビックリドッキリメカが出た感じです。
タイカク、タイカク、タイカクって言いながら行進。メカは硬いです。バリッジャリ。
これを口にするんだから、ドロンボー一味が自爆スイッチを押すようなものです。
それでも4種ともきっちり食べましたよ。これはもう自虐食です(ドクロ雲)。

カワニナ
 歯応えは良いが、やや苦い。胎殻あり。
フトマキカワニナ
 歯応えは良いが、やや苦い。胎殻あり。
ナンゴウカワニナ
 歯応えはやや硬く、やや苦くて、それ以外の味は薄い。胎殻あり。
ナカセコカワニナ
 歯応えは普通で、極めて苦くて、それ以外の味は薄い。胎殻あり。

えーっと、全部に胎殻が入っとるやんか。メス(ハズレ)ばかりよく選んだもんだ。
肝心のカワニナは、意外にもフトマキとほぼ同じ味で、違いは感じられなかったです。
これまで私が食べた12種と比較しても、カワニナの味は中間的な位置だと思います。
ナカセコは苦さで舌が痺れるくらいでした。これまで食べたカワニナ類の多くは、
苦味があったけど、極苦はナカセコだけなので、これは毒立種として認めます。
それでカワニナとフトマキは同種です。あぁ私は「日本産淡水貝類図鑑1」に踊らされたな。
でも、まだ食べてないのがあるんよねぇ。もう十分頑張ったよと誰か止めて(苦笑)。

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滋賀県の中流域で採集したナンゴウカワニナです。
これもオオウラカワニナと同じ生息地和名で困ってしまうのですが…。
典型的な個体は、他のカワニナ類と比べて、もこもことしています。
ナカセコカワニナと同様にナンゴウカワニナも、あまり興味がなかったのですが、
捕ってからとても興味が湧きました。これは色々な意味で面白いです。

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まだ若い個体です。

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軟体部です。どの種類も軟体部はよく似ていて、
カワニナ類の同定には、使えないかもというのは、わかった気がしました。

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全員集合です。写真2枚の中央付近の長い個体だけは、ハベカワニナです。
同所にはチリメンカワニナがたくさんいました。チリメンはどこでもいるなぁ。

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さて、面白いのはここからです。
これらが捕れたのは同じ狭い場所ですが、なんかバラバラのようにも見えますね。
左下と右下の個体を見て下さい。次体層に弱い縦肋(縦の筋)がやや斜めに走っています。
この2個体は見方によっては、細長くて特徴の弱いナカセコカワニナのようなのです。
中央下は次体層に弱い縦肋はなく、それとは違う螺肋(横の筋)が走っています。
記事最初の写真の個体は、不明瞭な細脈だけで、はっきりしたものはありません。

中央下と右下の個体は、体層の膨らみが全く異なります。
右下の個体はナカセコと言っても良いかもしれないものです。
それでは、この写真の12個体は、ナカセコとナンゴウが混じったものなのでしょうか。

「びわ湖の底生動物」でナカセコは、宇治川に生息するとだけあります。
これはナンゴウのいる瀬田川に、ナカセコの存在を認めていないことになります。
「日本産淡水貝類図鑑1」では瀬田川・宇治川・淀川・琵琶湖疏水に分布し、
かつては琵琶湖(南湖)にも分布していたという記述があります。
また、ナカセコのページにある琵琶湖疎水産は、ナンゴウにそっくりなのです。

結論を言うと、ナカセコ(1929年記載)とナンゴウ(1995年記載)は同種で、
ナカセコの細長いのを、ナンゴウとしたのではないかということです。
典型的なナカセコと比べると、確かに典型的なナンゴウは違って見えます。
それでも1箇所でとても多様な形状があり、両者の中間的という感じのもいることから、
この不明確で些細な違いが、分化途上なのか、生態型なのか、わかりませんが、
差し詰め、ナカセコカワニナ(ナンゴウカワニナ型)とするのが良いかもしれません。

オオウラカワニナでも書きましたが、少なくともナンゴウはS先生が教えて下さった、
独立種としては怪しいシリーズの1つだと思います。色々とご教授頂いた内容から、
私が深く言及すれば、ハベカワニナによく似ているのは、ナカセコカワニナ、
タテジワカワニナ、ナンゴウカワニナ、クロカワニナ、フトマキカワニナ、
そしてクロダカワニナと6種います。ハベカワニナを含めて7種です。
ハベを細分化すれば7種になり、おもっきりまとめれば、ハベ1種になります。

淡水魚で言えばヒガイが良い例です。
現在はカワヒガイ、ビワヒガイ、アブラヒガイの3種いるとされていますが、
「日本のコイ科魚類」でヒガイは細分化されていて、短頭型(トウマル)、
正常型(普通ヒガイ)の内湖型と外湖型、長頭型(ツラナガ)、
黄褐色のもの(アブラヒガイ)、淡紫褐色のもの(カマドヒガイ)の5型2亜型がありました。
後に短~長はカワヒガイ(琵琶湖以外)とビワヒガイ(琵琶湖)の2亜種(後に2種)にされ、
アブラヒガイは独立種とされました。カマドヒガイはしばらく謎だったのですが、
ビワヒガイとアブラヒガイの交雑が、カマドヒガイではないかとされています。
しかし、遺伝的にはビワヒガイとアブラヒガイはほとんど違いがなく、
単純に黒ぽいのをアブラヒガイと呼んでいるだけかもしれないのです。

このヒガイの件と同じように、ハベも独立種までは達していないが、
典型的なのを見比べた場合に、何か違うのでフトマキと呼んでみたり、
色々な呼び方になっているだけかもしれないのです。
今はまだ独立種に成り切れていない、とでも表現すれば良いでしょうか。

こんなのどこでもいるハベだ。ハベの中にある型だ。と分類学的に扱われるより、
15種ものビワカワニナ亜属という独立種が、琵琶湖淀川水系の局所的にいるとすれば、
ここにしかないフトマキだとする方が、琵琶湖淀川水系の環境を守るためには、
極めて大きな役割があると思います。そうした意味では成功だと思いますし、
少なくとも他と変わったのが、局所的にいることだけは、はっきりしているため、
こうしたものを、環境をひっくるめて、大切に守って行くべきだと思います。

あぁ長々と真面目に書いてしまった。気付けば1時間超もこの記事を書いてる。
なんかビワカワニナ亜属のまとめみたいですが、まだ全種を捕っていないので、
その後にまた何か書きたいなぁ(そもそも捕れるのか?)。潜水採集するの怖いよぉ~(笑)。


追記 2023年4月21日
当時はナンゴウカワニナで良かったのですが、現在はナカセコカワニナだと思います。

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京都府の中流域で採集したナカセコカワニナです。
琵琶湖にはもういないビワカワニナ亜属に、最初はあまり興味なかったのですが、
S先生のプッシュもあって、スジ淀川でも捕るかという適当な気持ちで行きました。
タイプロカリティーで捕るのは、面白くないし、気が引けたので、別の場所を探し、
土砂降りの中、適当に川へ入って、5分も掛からず、あっさり捕れました。

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ナカセコを捕って見て、なんだハベカワニナの丸っこくなったやつやん、と思いました。
S先生によると同水域にハベもいるそうですから、種としては成立するのでしょうね。
でも、後でわかりました。ナカセコは間違いなく独立種だと(謎)。

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小さな個体です。体層の縦肋が確りしていますね。

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中瀬古くん全員集合。だいたい典型的な個体ばかりですね。
この場所ではチリメンカワニナ7割、ナカセコ3割くらいでした。

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軟体部です。川の流心部は濁流で、危険な状態にあったため、
結局はスジ淀川どころか、魚を捕ることさえ出来ませんでした…。

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昨日は10円硬貨と1万円紙幣で有名な平等院へ行ってました。

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天気予報は大雨。その通りで土砂降り。風も強かったです。
濁度も高いというか藻濁りで、ウナギは釣れないだろうなぁと思いました。

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右の方に修学旅行ぽい中学生集団。こんな土砂降りでも決行されて大変そう。
それにしても私はなぜ宇治へ行ったのか。勘の鋭い方ならわかりますよね…。

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帰りは滋賀県草津市の某博物館へも行きました。1996年のオープンした年から、
何度か拝館していますが、巻貝の標本展示をまじまじと見たのは初めてでした。
たくさんの標本があって、2つが気になりました。フトマキカワニナはヤマトカワニナ、
オオウラカワニナはタテジワカワニナ(他の可能性もあるけどオオウラではない)です。

大丈夫か!琵○博!っと思いました。たいていの水族館では、魚の誤同定を見つけても、
指摘しないで黙っているのですが、1996年からこの展示は変わっていないと思われ、
14年間もこの状態だと考えたら、何か嫌な気持ちになり、一応学芸員に伝えておきました。
貝類担当のMさんが確認に向かわれたそうで、フトマキカワニナはヤマトカワニナで、
オオウラカワニナはよく調べないとわからない、との留守電を頂きました。
他の展示も皆さんで見直した方が良いかも、という気持ちを込めてこの記事を書きました。