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2006年05月27日に三重県の汽水域で採集したカニさんです。
全く同定が出来なかった私は、マゴコロガイさんにメールで教えて頂きました。
シワオウギガニかマキトラノオガニだろうが「シワオウギガニ」ではないかと。

それから2年余り経って、一般書で干潟のベントスたちを詳しく紹介する
「干潟の生きもの図鑑 三浦知之 南方新社 2008.8.10」が発行されました。
発売当初は書店やネットで売ってなく、私は直接出版社に電話注文して買いました。
現在は三浦先生のサイトにて著者割引でも買えるようです。
届いた図鑑をパラパラと捲ってこれはすごいと感動しました。

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図鑑を読むとマゴコロガイさんにシワオウギガニと教えてもらったカニさんは、
マキトラノオガニではないかと思うようになりました。
そこで失礼ながら2008年11月26日にマゴコロガイさんに再同定をお願いしました。
マゴコロガイさんもこの図鑑を参考に、体に毛が多く甲羅やハサミの形などから、
マキトラノオガニだろうとのことでした。やはりシワオウギガニではなかった。
しかし、写真の矢印の場所(甲の前側縁の歯の先端)に、
トゲ状の突起が見られたら、トラノオガニダマシの可能性もあるようです。
何枚か撮影していましたが、そういうトゲ状の突起はありませんでしたので、
これはマキトラノオガニということで同定が終わりました。

2009年3月1日に干潟の生きもの図鑑の内容修正などを見たら、
トラノオガニ → トラノオガニダマシ Pilumnus trispinosus (Sakai, 1965)
マキトラノオガニ → バルストラノオガニ Pilumnopeus granulatus Balass, 1933 
トラノオガニダマシ → マキトラノオガニ Pilumnus makianus (Rthbun, 1929)
と図鑑そのものが訂正されている…。図鑑でマキトラノオガニと同定したカニさんは、
この訂正によってバルストラノオガニということが判明しました。
なお、図鑑のトラノオカニダマシの和名は、トラノオガニダマシと訂正されています。
訂正箇所が判明しても放置する図鑑は多く、誤った情報が広がる恐れもありますが、
こうした情報を公開して下さることは、とても有り難いと思っています。

三浦先生に確認でメールしたところ、私が採集したカニさんは、
バルストラノオガニかシワオウギガニのようで、超音波洗浄器か歯ブラシで
甲を磨いてみないと、はっきりとしないそうですが、標本は取っていませんでした…。
ちなみに、訂正時に最初はBalassとありましたが、何かaが余分だなと思ったので、
僭越ながら指摘したところ、Balssの誤りだったそうで、更に訂正されています。
これも指摘しなかったら、誤った学名(命名者)が広まる恐れがありました。
私の中ではシワオウギガニはありえないと思っていたため、
これはようやくバルストラノオガニで落ち着くかと思っていました。

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バルストラノオガニのもっと綺麗な写真を撮ろうと思って、
2009年03月15日に同じ場所へ採集に行きました。sさんとoさんの協力に感謝です。
同じ種類が何とか捕れました。同所に類似種がいるとは思えませんでしたので、
2006年に捕った個体と同じ種類だと思います。天空の蟹アピタになぞらえて、
バルス!と連呼していたsさん。でも、まだ同定の扉は閉じられなかった…。

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三浦先生に教えて頂いた歯ブラシで磨いてみることにしました。
写真は人に触られると丸くなるので、足が千切れているのではありません。
カニさんを歯ブラシで磨くなんて発想は全くなかったので何か緊張しました。

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2個体を磨いた結果。矢印の場所(甲の前側縁の歯の先端)にトゲ状の突起がありました。
これは図鑑で言うところの、マキトラノオガニ改めバルストラノオガニではなく、
トラノオカニダマシ改めトラノオガニダマシ改めマキトラノオガニという結論になります。
3年弱も掛かってようやく同定が終わりました。この同定も後に訂正とかで、
変更になる可能性もあるわけですが、今はあまり考えたくないです…。

この紆余曲折をまとめると、採集時の西村は未同定↓
マゴコロガイさんの同定によりシワオウギガニ↓
「干潟の生きもの図鑑」による西村の再同定でマキトラノオガニ↓
それを受けたマゴコロガイさんの再同定でマキトラノオガニ↓
干潟の生きもの図鑑の訂正によりマキトラノオガニ改めバルストラノオガニ↓
三浦先生の同定によりバルストラノオガニかシワオウギガニ↓
新たな採集で甲に突起が見つかり、西村の再々同定でトラノオカニダマシ改め
トラノオガニダマシ改め「マキトラノオガニ」という結論になりました。
でも、これはあくまで簡易同定です。

本来であれば、マキトラノオガニの記載論文と、後に再検討された論文を漁り、
無理でしょうが、模式標本を見せてもらって、ようやくマキトラノオガニと
同一かどうか判明するわけです。これが本当の同定だと思います。
ここまで同定は大変なのに、今回のように標本もなく、特徴が抑えられていない
写真があるくらいで、まともな同定なんて出来るわけがないのです。

名著な図鑑を買っても、その図鑑が間違っていることも多々あるわけで、
論文や発表は次々と出され、数年で図鑑は古い情報になってしまいます。
例えば「干潟の生きもの図鑑」のイソテッポウエビは誤同定だと思い、
テッポウエビ属の一種(コテジロテッポウエビ型)だと私が指摘しましたが、
これも2009年3月3日に出た吉郷さんの論文で、テッポウエビ属の一種Eとされました。
まだ世に出て1年も経っていない図鑑でも、既に古い情報になっているのです。

そもそも図鑑というものは、記載論文やその後に出された論文や発表を基に、
一般の人でも使いやすいよう、極めて簡略化してまとめたものですから、
それを基に同定だとすることは間違いで、原典の確認が必要なのです。
同定が比較的楽な場合は別にして、簡単に同定できない類の場合でも、
図鑑形式になると、あたかも簡単に同定できるように、書かれることがあります。
実際にはそんな甘いものではないと同時に、図鑑形式という限られた場所では、
多くの情報が載せられないため、どうしても同定の精度が落ちます。
臀鰭が白いからシロヒレタビラ、赤いからアカヒレタビラなんていうのは典型です。
ポケット図鑑などは、たいてい原典を確認せず、孫引きしていて、
それらを更に簡略化するため、もう滅茶苦茶です。突っ込みどころだらけ。
同定方法も1枚の写真から、ほぼ絵合わせ同定になってしまいます。
それでも簡易同定にポケット図鑑ほど有効なものはありません。

図鑑に誤記はよくあります。これを鵜呑みにすると誤同定になるわけです。
それと研究者によって様々な主張があることも知っておかないといけません。
図鑑は1つの見解に過ぎないと思っておいた方が良いです。
非科学的な思い入れや勘違いが混在しているものが実際にあります。
もっと言うと、記載論文の方も、執筆者に確認や裏話を伺うと、
論文内容の真意がわかったり、その論文をレフェリーされた方に伺うと、
最後までその論文の主張を反対したが、結局は掲載されたということもありました。

こうしたことを知れば、安直に図鑑で同定なんてそもそも出来ないのです。
一部には名著な図鑑に偏り、何でもかんでもそのバイブルに従って同定する
調査や文献を見かけますが、私には思考の停止としか思えません。
そんな同定なら将来的にはプログラムされた機械でも出来るようになるでしょう。
そこまで言う私の同定はちゃんとしているかというといい加減です。
ただ、上述したような事情の認識があるため、その差はあるかもしれません。

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三重県の汽水域で採集したケフサイソガニです。
先日に記事にしたよく似たタカノケフサイソガニは2005年に記載されました。
それよりも数年前に、写真のカニさんを捕った汽水域で、ケフサイソガニ類を捕り、
これらが全て同じ種類には思えないと直感的に感じ、詳しい方に伺ったのですが、
全てケフサイソガニだということで片付けられてしまいました…。
それでも私は違うと強く思いましたが、どこがどう違うのかを説明する能力がなく、
そのままになっていました。そして2005年にタカノの記載論文が発表されて、
あっ!と思いました。同定方法が判った私は、同じ汽水域へ行き、
ケフサイソガニ類を採集し、引っくり返して、いくつもの個体を見てみました。
そこにはケフサイソガニとタカノケフサイソガニの両方が生息していたのです。
やっぱり!っと思ったと同時に、カニさんのことよく知らない私のような人でも、
無根拠ながら直感的な判別も、軽く見たらいけないなと思いました。
日淡で言えば漁師さんの目なんかもその1つだろうと思います。

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鋏脚の大きさが不揃いです。鋏を片方だけ失って、また生えて来たのでしょうね。
タカノと比べると泥が少なめで、水の綺麗な感じのところに多い印象があります。
塩分もタカノよりもやや高めのところに多いです。

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この大きさで卵持ってます。捕ったときは驚きました。

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和歌山県産ですが、最初に捕ったときは、ケフサだとは思えなかったです。
また別の種類か。なんて言い出すと、何でも違うように見えるので、それも良くないです。

某汽水域には紐で編んだ網が、たくさん入れてあるところがあります。
その紐は基本的に違反漁具なのですが、それを勝手に触ると怒鳴られます。
「なにあみあげとんるんだー」と。そこからその網を、ナニアミと呼んでいます。
このナニアミには、ケフサイソガニやタカノケフサイソガニなどが多く付いていて、
それを釣り餌として売っているそうです。釣りで余ったカニさんたちはおそらく、
あちこち放流されちゃっているでしょうね…。困ったものです。
ちなみに、釣餌屋さんで売っているカニさんは、ヒライソガニ類の方が多いです。

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三重県の汽水域で採集したタカノケフサイソガニです。
タカノケフサイソガニは汽水域を代表するカニさんで、
「そんなもんどこでもおるて」という感じ。石を引っくり返すとうじゃうじゃと。
エピソードも多くて、どのネタを出そうか迷うほどです。

よく似たケフサイソガニとの違いがわかって、記載にされたのはまだ数年前のことで、
当時はタカノケフサイソガニとネット検索しても、某サイトと日淡会の2つだけでした。
今ではたくさん。というのも、和名発表される前にネットに出ていたからです。
記載者に伺ったところ、和名が発表される前に、学会で口頭発表していた名前が、
タカノケフサイソガニだったそうで、それを某サイトが勝手に使っていたのです。
結果として口頭発表と論文発表が同じになったのでよかったものの…。
ケフサとタカノの違いは上から見てもわからず、引っくり返して同定します。
細かい同定方法はここに書くと長いので止めておきます。両種は混生しています。

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おめぇなめてんのかとでも言っていそうな形相。
雑食性なので水槽の中では掃除屋さんとして大活躍する反面、
写真の個体のように大きな雄は、たまに魚を襲うことがあるので要注意です。
sさんの水槽にサンゴタツを入れたところ、すぐにこのカニさんがのしかかり、
ハサミでサンゴタツを摘んで食べ始めたのです。あの光景は未だに目に焼きついています。
そこからサンゴタツには「カニ。ゼッタイ。」という標語が誕生しました。
ようするに、泳ぎのうまくない魚は、カニさんに食われる。入れちゃダメってことです。

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雌です。紫色という不気味でセンスの悪い卵を抱えています。ゾエアだらけになります。
このカニさん飼育魚を食べることがあるので、入れないようにしてはいるのですが、
マガキの隙間に入っていることが多く、マガキを入れるとセットで付いてきます。
めっちゃ小さな個体も、飼育に強いため、まず成体になります。怖いことです。
寿命になって死ぬと、悪臭を放って水を汚します。すぐに取り除きましょう。
成体までならなかったのは、たいてい水槽の外でカリカリになって死んでいます。
他の汽水生物と比べて逃亡率が異様に高いです。結論として防ぎようがないです。
部屋でカニさんが採集できるようになります。屋内干潟と呼んでいます。
逆にこのカニさんが水槽に全くいないと、今度は掃除屋効果が低くなって、
底が徐々に汚い感じになってきます。このバランスが難しいんです。

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何でも食べます。それが売りであって怖いところ。脱皮した甲羅を食べています。
ヒトで言えば日焼けしてボロボロ落ちる皮膚を食べているようなものかな。
ちなみに、このカニさんは潮干狩りや磯で見たことあるぅと思った方、
それはきっとイソガニかヒライソガニ類だと思います。
このカニさんは汽水域や内湾奥部にいて、いわゆる海にはほとんどいません。

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小さな雄。イソギンチャク類はいつ記事にしようかと迷っているものです。
和名を早く付けるべきだと思って、キスイイソギンチャクと提案したら却下され、
捕った川の名前を冠にする提案は、生息地公開と地名はあかんと私が却下しました。
いつまで経っても進展しないので、そろそろ私がここで和名提唱してやるぅ。
話がそれましたが、汽水域でウナギ釣りするとたまにこのカニさんが釣れます。
せっかくの餌がハサミでボロボロにされたり、弱い当たりで根掛りするときは、
餌を障害物の隙間とかに運んで根掛りさせておられるようです。困ったカニさんです。
それでも何も考えていないようなところからくるたくましさが私は好きです。

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2003年8月30日に愛知県の海で採集したイッカククモガニです。
初めは見慣れないカニさんだなくらいでしたが、後で名前を教えてもらって、
愛知県の海も病んでるなぁと思いました。外来生物です。

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お背中に付いているのはアラムシロだと思います。
よく調べると、イッカククモガニヤドリアラムシロなんて、名前がついてたりして…。
命名者の皆様、お願いだからそういう長い和名は、勘弁して下さい。

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三重県の汽水域で2007年6月2日に採集した雄です。

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上の雄に抱き付かれていた雌です。
汽水域で見たのは初めてで、これから増えないでくれよと思いました。
それ以降に同じ場所へ何度も行っていますが、
1個体も見ておらず、汽水域へはたまたまやって来たようです。

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三重県の汽水域で採集したコメツキガニです。
砂干潟ならばどこにでもいる印象が強いのですが、
初めて撮影したのは3日前という、私の興味のなさがわかります…。

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眼柄を上げてくれませんでした。

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コメツキガニは釣餌屋さんでもたまに売られていますが、
この個体の採集場所でも、チヌ釣りの餌用に、捕る人と会ったことがあります。