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2021年1月にサザナミカワニナの記事を書きましたが、正確には新種記載されたではなく、
2021年1月1日にAccepted(受理済)でした。Published(出版済)は2021年3月17日です。
原記載プレスリリースです。AcceptedからPublishedまで、長い時間が掛かったので、
著者らはやきもきしたことでしょう。これでイボとサザナミの関係がよくやく定まりました。

そろそろカワニナ図鑑を改変してもいい頃かと思い、まず脳内整理することにしました。
日本産カワニナ属の簡単な一覧表を作りました。参考文献や細かい内容は割愛しています。
あくまでも私見です。カワニナ属A~Fは6種の未同定及び未記載種がいるということではなく、
カワニナ図鑑やブログで過去に紹介した、よくわからないものを適当に6つ集めただけです。
もっともっとあります。それとカワニナ種群はシノニムがたくさんいるため、
サブクレード以下にも注目したら、当てはめられるものが、他にもいるかもしれません。
こんな一覧表のようにスッキリするわけがなく、まだまださわだ君には頑張って欲しいです。

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サザナミカワニナ Semisulcospira davisi Sawada and Nakano, 2021
新種記載されました。さわだ君が筆頭著者です。とてもおめでたいです。
第二著者の中野さんは存じ上げませんが、お二方とも大変にお疲れ様でした。
浦部先生がブログでわかりやすく解説されています。原記載のリンクもあります。

写真は模式産地の月出で採集したサザナミカワニナです。解説を書き進めてみましたが、
シンタイプからレクトタイプを指定し、それは不明種でイボは未記載種でと難解なので、
ようするに、イボカワニナと呼ばれていたものは、サザナミカワニナになったんです。
日本産カワニナ属の現生種では、26年ぶり(1995年以来)の新種発見ということですね(凄)。

さわだ君にはビワメラニアの分類やるなら、全種の模式標本を必ず確認しなさいと、
くどいくらい言い続け、2019年にイボのシンタイプ画像を見せてもらったときに、
あぁやっぱりなと思いました。これハベやん。琵琶湖ならばヤマグチかぁ。
それから1年余りで、こんなに素晴らしい論文を、2人で書き上げるとは驚きました。
ベタな調べなあかんところ、みんなやったんで、これなら論文通すしかないやろ感が、
伝わって来ました笑。その分だけ S. multigranosa を不明のままにするしかないよね。

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イボカワニナと呼ばれてきたものは、種群(種複合体)だろうと思っています。
そのうち深場にいて、胎殻の大きいものが、サザナミカワニナとして新種記載されました。
それ以外も複数に未記載種の疑いが残っています。写真の9個体は広義のイボです。
左上なんかは逆くの字イボと、さわだ君と呼んでいるもので、サザナミとは全然違います。
カワニナ図鑑のイボのページを、サザナミに書き換えるだけでは、事が済まないのです。
そのためカワニナ図鑑は、このブログ記事のリンクだけ張って、放置を続けます。

コセイの方が早く新種記載されると思っていましたが、次々にハードルを作られるので、
発見から10年半も経ちました。それでも諦めずに挑んでくれるさわだ君には感謝しています。
今後も全解明・川蜷の呼吸で、病まない程度に頑張って下さい。引き続き応援しています。

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屋外のメダカ水槽(タッグボックス)が、劣化で崩壊の心配から交換しました。
30年くらい使っていました。このメダカ水槽はカワニナ水槽の役割もありました。
カワニナが勝手に世代交代していましたが、2010年くらいにヤマトカワニナを入れた際、
駆逐されたのか、カワニナ亜属が全滅。その後にヤマトカワニナも全滅。

それからカワニナ属を適当に放り込み、今生きているのがどこ由来なのかはわかりません。
カワニナ亜属は8割ほどいて、弱く縦肋があるため、チリメンカワニナかもと思っていました。
ヤマトカワニナ亜属は2割ほどいて、タテヒダカワニナかなと思います。ここで問題なのが、
先日の記事にも書きましたが、縦肋の有無で種類はわからないということです。

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私が飼育している種類がわからないのです。そこで分布と模式産地のみから学名を特定し、
並べたのが画像の4つです。キタノカワニナはホロタイプ画像とも似ているので大丈夫かな。
カワニナもまあ大丈夫かな。L4はチリメンカワニナとハコネカワニナを含んでいますが、
横浜と芦ノ湖は調べられておらず、何とも言えないところはあります。
ハコネカワニナはキタノカワニナの縦肋と殻底肋が顕著な集団かもしれないです。
チリメンカワニナ1876年よりも前に、複数のシノニムがいて、産地不明なのもありますが、
優先権の逆転(6章23条9項)によって、1899年問題が発生するため、無視していいかな。

それでは飼育中のカワニナ亜属は何だとなりますが、キタノカワニナ、カワニナ、
チリメンカワニナのどれも可能性があります。分布を拠り所にした同定は無理です。
複数産地が放り込まれているため、もしかすると交雑している疑いすらあります。
旧来の同定方法で、縦肋がないからカワニナ、あるからチリメンカワニナというのも、
弱く縦肋のある個体が多いですが、全くない個体もいます。やはり縦肋は使えない。

結論的にカワニナ亜属の一種(未同定)を飼ってまーす。と言うしかないようです。
例えば長野県でホタルの餌にカワニナを放流しました。なんてニュースがあったら、
長野県はキタノカワニナの分布域で、外来生物ということで放流抑止に使えないですかね。

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ツイッターがきっかけで2016年7月24日にさわだ君と初めて会いました。
ビワメラニアの研究はやめておけ。難解過ぎて何の成果も出ない。人生を棒に振る。
それでも本気でやるというので、浅学菲才ながら私が知っていることを伝えました。

それから4年足らずで国際誌に筆頭著者で論文掲載。おめでとう! 内容は移入です。
ビワメラニアの分類学的な整理という意味では、まだ第一歩かもしれないですが、
この業績によって、カワニナの研究しているさわだ君という認知が広まり、
より多くの情報と人脈に恵まれて、研究も加速することでしょう。これからも応援します。

写真は初めて会った日に撮影。深い場所に慣れておらず、深くなる前に横へ移動する様子。
今はもっと沖の方で潜っています。その後にこの場所は何度行ったのだろうか…。

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移入ということで、芦ノ湖で2011年に捕ったハベカワニナです。

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さわだ君に2016年に案内してもらった室池産です。何種類もいるようです。

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こちらも2016年に採集した岐阜市の論田川産。イボで良いかと。
カワニナ亜属(カワニナ・チリメンA・チリメンB・キタノなど)は、もっとあちこちに、
移入しているでしょうが、在来や移入の証明が難しいね。私が生きている間にあの記載を…。

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2018年3月に新種記載された化石5種を実見することが、2018年5月12日の主目的です。
さわだ君が記載された松岡館長にアポを取ってくれて、11時にお会いすることが出来ました。

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記載論文の写真と実物は、殻口の位置などの違いによって、ナカムライが僅かに細く、
シュードムルチグラノーサのモコモコ感が弱いなど、若干違うようにも見えましたが、
基本的には想像範囲内でした。現生種も展示されていましたが、イボはカゴメでした。
松岡館長の解説を拝聴し、いくつか形態差異などについて質問をさせて頂いて、
このページも見て頂き、私見もぶつけましたが、やはり全て現生種に酷似すると思います。

仮に5種を新種と認めて従う場合は、現生の酷似個体をどう扱うか問題が残ります。
現生にはいないと主張しても、酷似個体とどう違うかを、説明する必要があるでしょう。
化石種と思われていた種が、現生していたとする場合は、現生種が5種増えることになります。
現在でも混乱しているのに、中間型もいますから、ますます混乱することでしょう。

カワニナ類の世界では「若干違う=同種」で、その違いは変異幅と呼びます。
記載論文にある変異幅だけではなく、産地や個体数を増やすと、実際はもっと広いと分かります。
それが実際の変異幅で、化石の専門家である松岡館長に、現生種をもっと知って調べるべき、
というのは違うと思います。限られた時間と予算で、異分野の奥底まで知ることは不可能です。

化石種と同形態のものが、本当に現生種に存在しないか、照合する作業において、
形態のプロやスペシャリストに巡り合えなかったことは、とても残念だと思いました。
そこで私は、まだアマでありながら、スペシャリストのさわだ君を、プッシュしておきました。
これで化石種と現生種という異分野の接点において、慎重さと正確性が向上した、
新展開が期待できると、今から楽しみです。私もサンプリング等で、協力出来たら幸いです。

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松岡館長にお願いして、貴重なパラタイプも、拝見させて頂きました。厳重な管理でした。
ホロタイプとパラタイプの一部を拝見した感想は、5種全てシノニムだろうと思いました。
但し、現生種の祖先かどうかは判然としません。例えば形態的にナカムライは、
ホソマキと同種と見なせることは出来ても、ナカムライは絶滅していて、別系統から新たに、
ナカムライに酷似した形態が誕生し、それをホソマキとして認識する可能性もあるためです。

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この場合に類縁関係はないが、平行進化や収斂進化などと呼ばれる現象によって、
ホソマキ祖先種が、たまたま絶滅したナカムライに、そっくりに進化して現生する場合、
分子系統学的には異種でしょうが、形態重視の分類学的には同種ということになります。
そのため形態差異が変異幅に収まる場合は、祖先は無視してシノニムと言えます。
希にホロタイプ(及びパラタイプ)が全てで、それと違えば別種だという意見もありますが、
カワニナ類の場合は、実際の変異幅が広くて、実態とかけ離れていると思います。

気が付けば2時間20分も話していました。長くなってすみません。勉強になりました。
松岡館長は人望が厚く、相反する意見にも耳を傾ける、とても良い方だと思いました。
更に貴重な標本を、快く拝見させて頂き、長時間にわたって、意見交換させて頂きまして、
本当に感謝しています。豊橋市自然史博物館では5月27日まで展示され、
その後は金庫で厳重保管されるそうですので、ご興味のある方はぜひ行ってみて下さい。
松岡館長とさわだ君に感謝です。今後ともよろしくお願いいたします。