2021年6月27日に琵琶湖で採集したヒラガマノセガイ(オトコタテボシガイ)です。
暗岩へ行く途中で捕り、まふゆのうじ君に譲って、出水管を画像を送ってくれて、
これはアレかもということで、Y君に同定をお願いすると、自信はないがタテボシガイだと。
それからずっと気になっていました。11月6日にZoomで淡水貝類研究会があり、
フリーディスカッションの際に、参加者全員に画像を見て頂き、再び同定をお願いしました。
マツカサガイではないかという意見も頂きましたが、W君から瀬尾論文のアレで合っていると。
他に異論を下さる方はいなかったので、コアな淡水貝屋さんからのお墨付きを頂いた気分です。
アレというのは(瀬尾, 2019)で、TypeⅡとされているものです。学名や和名は色々なので、
論文を読んで判断して頂きたいですが、ここでは Lamprotula leaii と見なし、
ヒラガマノセガイ(オトコタテボシガイ)としました。ヒラガマノセガイという和名は、
さわだ君から教えて頂きましたが、(真の)オトコタテボシガイでも良いかもしれません。
従来のオトコタテボシガイは Tribe Nodulariini, Genus gen. sp. 1 と見なし、
ニセマツカサガイ琵琶湖型(=セタイシガイ=オトコタテボシガイⅠ型)としました。
生体は(瀬尾, 2019)で2個体、今回の採集で3個体目です。他に死殻は見つかっているようです。
暗岩(最近の渇水で洗岩かも)へはたも網を持って泳いで、某生物を狙っていましたが、
貝は素手(手袋)で捕っています。分厚く苔むしていました。手で擦ると簡単に落ちました。
完全に砂へ何度か潜れば、落ちる可能性も高く、常に砂から出ている生態なのでしょう。
左下(左)と右下(右)はタテボシガイですが、糸状の苔(アオミドロ)が確り付いています。
砂へ時々潜ってこの程度なのだと思います。ヒラガマの方は苔が何層にも重なって、
殻に近いところは死滅して、その上に新しい苔が出来ている感じです。
タテボシやニセ琵琶はたくさん捕りましたが、こうした苔状態なのは極希です。
水管です。まふゆのうじ君が撮影した画像です。掲載許可を頂きました(感謝)。
初めに見たときはニセマツ類よりも、マツカサガイに近いなと思いました。
この個体は現在もまふゆのうじ君が飼育中で(凄い)、W君のところへ譲渡予定です。
分子系統なども調べてくれるそうです。その結果がどうであれ面白い個体に出逢いました。
7月3日に2(4)個体目を探すも捕れませんでした。やはり少ないようです。
上段の左4つはタテボシガイ、右2つはニセマツカサガイ琵琶湖型です。
なるべく形に特徴のある、タテボシガイを拾って来たので、同種に見えないですよね。
水管形態はほぼ同じです。ニセ琵琶は少し見辛いですね。典型的な水管画像です。
ホロタイプ画像はこちらにあります。(瀬尾友樹, 2019)まで Unio reinianus が、
オトコタテボシガイとされてきました。こんなの捕ったことある人はいるでしょうか。
生体であるとしたら4個体目ですね。Nodularia hirasei はセタイシガイです。
これがニセマツカサガイ琵琶湖型かと思いきや、何か私が捕った個体に似ている気がする。
スケッチの下側はニセ琵琶の若い個体のような。よくわかんなくなって来たぞぉ。
もしかしてニセ琵琶は未記載種なのか。砕けた解説にするつもりが、難解になってるかも…。
ヒラガマノセガイは外来(史前帰化)の疑いもあるのですが、1番目の画像を見ると、
ガマノセガイ属の一種と、オトコタテボシガイの上は、ヒラガマノセガイにも見えます。
絶滅して移入されたと考えるよりは、在来のまま別種と混同されて来たのかもなぁと。
5番目の画像は未だにヒラガマじゃないかと疑っています。すみませんY氏。
出水管確認したい。なぜ私は捨ててしまったんだぁ。今回の個体とはだいぶ離れた場所です。
ニセ琵琶やタテボシとした中に、ヒラガマは混じっているのだろうなぁと思うと、
これからもカワニナ捕りついでに、頑張って潜って狙ってみたいと思いました。
瀬尾友樹, 2019; Lopes-Lime et al., 2020; 近藤高貴, 2020; 川瀬基弘ほか, 2021
などを参考に日本産イシガイ科2亜科6族14属29種(31種類)を一覧にしてみました。
ヒラガマとマツカサガイ属の線が切れていますが、これは単なる長さ調整の失敗です。
滋賀県は17種類です。このうち滋賀県の固有種は、ニセマツカサガイ琵琶湖型だけです。
琵琶湖淀川水系(滋賀県・京都府・大阪府)に広げると、オグラヌマガイ、イケチョウガイ。
外来は改良母貝、その疑いはドブガイモドキ、ヤハズヌマガイ、ヒラガマノセガイです。
右下の画像はヤハズヌマガイだと思われる個体です。フネドブガイ属の一種として、
昨年に同定しましたが、4月にこちらの紀要を拝読した際に、同種かもと思いました。
その後にTさんから最近教えて頂いたのですが、和名提唱があったようです。
私がブログで指摘した、豊橋市のフネドブガイ、一部で有名な外来魚がいる水系が、
この種ということで、琵琶湖の個体もヤハズヌマガイだと思います。誤同定ですみません。
外来の疑いが強いので喜べませんが、琵琶湖の情報はないため、初記録なのでしょうね。
滋賀県のニセマツカサガイ西日本型ですが、マツカサガイとされてきた中に混じっていそうで、
No.385の右はそうじゃないかと思っています。これもW君らの発表だと別物かもと。
イシガイ科の分類は今後も不安定そうですね。もう頭痛くなってきたので終わり笑。
多くの方々のお蔭で、色々なことを知ることが出来ました。ありがとうございます。