琵琶湖で採集したケショウカワニナです。
模式産地で同定は合っていると思いますが、この類は自信が全く無いです。
タテヒダカワニナ、ケショウカワニナ、シノビカワニナの識別は難解を極めます。
ケショウカワニナの模式産地の北船木です。
タテジワカワニナと同じ模式産地だと思っていましたが、どうも違うかもしれません…。
メインサイトに出せない雑記
最近のカワニナの分類はどうなってんの? ややこしてくよくわからん!
という人のために、変遷表を作ってみました。日本産カワニナ科図鑑に載せたものですが、
それを画像にしました。これでもだいぶ割愛して、単純化しましたが、難しいですよねぇ。
さわだ君に細部を確認してもらいました。ありがとうございました。
https://tansuigyo.net/a_biwae/00.html
注目すべきところを記すと、チリメンカワニナはおそらく将来はシノニムで消えます。
タテヒダカワニナの模式標本(元ホソマキ)は、つるつるで縦の襞はありません。
淀川にいるよくわからなかったものは、全てナカセコカワニナのようです。
旧来の日本産カワニナ科の分類は、カワニナ属とヤマトカワニナ属や、
カワニナ属(カワニナ亜属とヤマトカワニナ亜属)というものがありましたが、
これはカワニナ属でまとまっています。その上で3つにグループ分けされています。
ちなみに、Biwamelaniaはビワカワニナ属(亜属)ではなく、ヤマトカワニナ属(亜属)です。
日本産カワニナ属全種の模式産地も変更しました。そろそろ本体のカワニナ図鑑も、
変更したいところですが、コセイカワニナが新種記載されるまでは、そのままにしておきます。
それと再同定すべき写真が7000枚以上あるので、先送りすることで一時的に逃げときます。
2022年8月23日にさわだくんととりふぁさんの論文が公開されました。
おめでとうございます。内容はヤマトカワニナ種群の分類改定です。
非常に難しいですが、さわだくんがツイートで分かりやすく解説してくれています。
私も脳内整理のために少し書いておこうと思います。
ヤマトカワニナ Semisulcospira niponica (Smith, 1876)
この種は変更が無いように思えますが、新種記載のときに3つの標本(シンタイプ)を基にされ、
それが今で言うところのヤマトカワニナ、タテヒダカワニナ、ハベカワニナだったのです。
3種をまとめてヤマトだったので、1つだけを指定(レクトタイプ)したのです。
これでヤマトとはなんぞやというのが、1つの標本に定まったということになります。
トキタマカワニナ Semisulcospira watanabei Sawada in Sawada & Fuke, 2022
ヤマトカワニナ肋型とされていたものが、新種記載されたということです。
ただ、トキタマ=肋型ではなく、トキタマ≒肋型なので、少し難しい話になるので割愛。
チクブカワニナ Semisulcospira nakanoi Sawada in Sawada & Fuke, 2022
竹生島のごっついヤマトはチクブカワニナ Semisulcospira biwae (Kobelt, 1879)として、
長らく呼ばれてきましたが、ホロタイプを確認したら、ごっつく無くて普通のヤマトで、
竹生島のものは未記載種だったということです。それが新種記載されました。
和名はそのままチクブカワニナなため、少し混乱するかもしれませんが、
旧チクブと新チクブという感じですね。ちなみに、尾上港にも移入しています。
それはカワニナ図鑑でも記していて、さわだくんを案内して採集しています。
コンペイトウカワニナ Semisulcospira salebrosa Sawada in Sawada & Fuke, 2022
沖の白石と多景島にいる、チクブよりもごっついヤマトです。
これを見るとカワニナ丸やシライシ号を思い出します。
日本産カワニナ属貝類の分類最新知見です。日本産カワニナ属全種の模式産地も変更済み。
これもわかっていながら、古い情報に従っていて、間違っているところがあります。
カワニナ図鑑も改定するべきなのですが、第二弾やその後の研究も教えてもらっているので、
どうせならばコセイカワニナが、新種記載されたときに、大改訂をしたいなと思っています。
少しでも早く叶うよう、さわだくんととりふぁさん、引き続きよろしくお願いいたします。
模式産地とは新種記載の際に、模式標本(担名タイプ)が採集された場所です。
カワニナ属の場合は、沖の白石のシライシカワニナ、南郷のナンゴウカワニナなど、
狭い地域にだけ棲む種があるとされているため、同一産地から得られた標本(トポタイプ)は、
他の種類と比較する際にとても大事です。しかし、模式産地はあやふやな場合も多いです。
例えばヤマトカワニナは「Lake Biwa, near Kiyoto.(京都の近くの琵琶湖)」です。どこだぁ。
外国人が1875年に採集して1876年に記載であれば、そんな書き方も致し方ないかもしれません。
Watanabe and Nishino 1995 ではオオウラカワニナ、クロカワニナ、フトマキカワニナ、
タテジワカワニナ、タケシマカワニナ、シライシカワニナ、ナンゴウカワニナ、
ホソマキカワニナの8種が新種記載されました。オオウラカワニナとクロカワニナは、
西浅井町大浦が模式産地とされています。大浦も広いです。記載論文の採集地の地図に、
75番のプロットがあり、そこは三位の浜(地先)あたりです。種ごとの地図でオオウラを見ると、
河原の浜(地先)あたりにプロットがあります。両地点は400mくらい離れています。
どちらもオオウラとクロが生息する水深2~4mではなく、5~10mある場所で異なります。
採集地と種ごとの地図は、それぞれ不正確な手書きで、粗雑なものなのです。
記載論文は「びわ湖の底生動物Ⅰ」の調査を基に記され、そちらの地図の方が正確です。
「びわ湖の底生動物Ⅲ」は調査場所が全てプロットされ、そこから75番の位置を推定し、
採集された水深2~4mを囲うと黄色の場所(黒崎)です。記載論文とは1.19kmも離れています。
カワニナ図鑑の生息地写真で、オオウラカワニナの模式産地とした撮影場所は、
八幡神社御旅所付近です。そこと黒崎は1.46kmも離れています。いつかは訂正します…。
日本産カワニナ属20+3種類の模式産地を地図に記しました。広域分布のカワニナ種群は、
大まかな範囲でも問題ないでしょうが、ヤマトカワニナ種群やタテヒダカワニナ種群は、
クロダカワニナを除いて、琵琶湖水系だけに分布するため、正確な模式産地は重要です。
そうした中でイボカワニナの模式産地が、琵琶湖に近い水田(流入小河川)としか分からず、
広範囲になってしまったのは残念です。基本的に記載論文から模式産地を特定しましたが、
他にも多くの文献を参考にしました。それを列挙すると大変長文になるのと、
個人ブログで簡単にまとめただけなため、すみませんがここでは割愛させて下さい。
先人の熱い記述に感謝しています。さわだ君にも助言を頂き感謝しています。
カワニナ属というマイナーな種類なので良いですが、いくら模式産地とは言っても、
淡水魚でこれをやると、乱獲などが懸念されるため、難しいだろうなと思いました。
ただ、クロダカワニナの模式産地の記事を出してから、まあまあ捕りに行った人がいるようで、
琵琶湖などの広大な場所は良いとして、狭い水路は気を付けないといけないなと思いました。