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2020年10月11日に琵琶湖で採集したフネドブガイ属の一種です。
私が捕った2個体は、死蔵になるのはもったいないので、K先生のところへ送りました。

2020年3月に刊行された琵琶湖におけるフネドブガイの再発見によると、
2018年12月16日にフネドブガイの死殻1個体を採集したとあります。
80年ぶり(1938年以降)の記録だそうです。この報文を見たとき、貝の世界は殻拾って、
再発見になるんだぁと驚きました。魚の世界だと骨拾っても、再発見とはならないでしょうね。

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2020年2月に Lopes-Lima et al. 2020 によって、それまでのフネドブガイ属が、
AneminaBuldowskia の2属に分割され、B. kamiyai が新種記載されました。
2020年7月イシガイ科貝類の新たな分類体系によって、和名が提唱されました。
フネドブガイ属(フネドブガイ)、タブネドブガイ属(カタドブガイ、ヒガシタブネドブガイ)。
日本における分布は、フネは九州北部、カタは北海道~島根県までの本州日本海側、
ヒガシは岩手・宮城・福島・茨城・山形県。そうなると琵琶湖は含まれていません。
K先生によると Sano et al. 2020 に北海道石狩(=カタドブガイ)と香川県が、
同じクレードに入るので、四国はカタドブガイで、琵琶湖のもカタドブガイでしょうと。
しかし、東海地方のフネドブガイは、未記載種の可能性があるそうです。

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カタドブガヒの新種記載論文を見ると、私が琵琶湖で捕った個体と比べると、
殻幅が短い、殻頂の膨らみが弱い、後縁が長い、後背縁が斜めに張り出しが強いなど、
同じ種とは思えませんでした。豊橋市のフネドブガイを見ると、似ている気がします。
2020年8月淀川初記録のフネドブガイ類とも同種に見えました。
淡水貝類研究会23回(2017)の日本産フネドブガイ属の分類学的再検討という発表で、
静岡県のは Anemina euscaphys で移入の疑いがあると。タイプのスケッチを見ると似ている。

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推論します。琵琶湖で2018年に死殻が80年ぶりに見つかり、2020年に私達が生体を捕った。
淀川で2018年に生体が初記録された。これらは他種との混同から未発見だったのではなく、
近年に移入されて見つかるようになった。私は2010年から琵琶湖淀川水系のカワニナ属を、
361(潜水168)箇所で採集。二枚貝も捕りましたが初確認です。これは移入の疑いが強いです。
また、豊橋市も人工的なため池で、外来生物の割合がとても高いと思います。

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ようするに、近年に中国から Anemina euscaphys が琵琶湖淀川水系~東海地方に移入し、
それをフネドブガイとして報告しているのではないでしょうか。他の地域にも、
同種ではないかと思われる情報を頂き、そこは一部で有名な外来魚がいる水系です。
日本にいるドブガイ Sianodonta cf. woodiana 1 も外来種とされていますし、
フネドブガイ属に外来種がいても不思議ではありません。和名は無いようですから、
フネドブガイ属の一種 Anemina euscaphys (Heude, 1879) としておきます。


追記 2021年11月18日
ヤハズヌマガイの疑いが強いために変更しました。

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琵琶湖でヤマノカミ君が採集したイケチョウガイです。
形態的に交雑を思わせるところが無い、純系イケチョウガイだと思われます。
過去に記事にしたイケチョウガイ×ヒレイケチョウガイ(改良母貝)ではありません。
イケチョウガイで画像検索すると、ヒットする多くは改良母貝で純系ではありません。
バケツ蓋2900mm÷バケツ蓋1217pixel×殻長798pixel=1901.56...殻長約19cmです。

2020年5月30日13:38~14:15に、琵琶湖北湖でヤマノカミ君と私が一緒に潜りました。
ヤマノカミ君は魚、私はカワニナを狙い、一定の距離を取って、採集をしました。
私が先に岸へ上がって待っていると、ヤマノカミ君が網袋に何かを入れて戻って来ました。
20mほど離れたところから話しかけると、大きな貝を拾ったのだと言います。
あぁドブガイ類とかかな。その網袋がだんだん近づいてくると、眼を見開きました。
もしかして、もしかして、いやそんなことはない。なんか薄っぺらいぞ。ヤバイヤバイ。

網袋から出されたその貝は、イケチョウガイでした!! マジカヨまじかよ。凄い!!!
ヤマノカミ君は素潜りの経験が浅く、あまり深くには潜れず、二枚貝は種類もわからない。
どうしてこの貝を拾ったのと聞くと、大きな貝だったからという単純な理由でした。
ビギナーズラックの無自覚は最強でーす。私は2010年から琵琶湖の貝を全て見たいなと思い、
琵琶湖淀川水系は350(潜水158)箇所でカワニナを採集し、プロットだけで琵琶湖が描けるほど。
しかも、イケチョウガイを狙って、何度か採集に行ったが、1個体も捕れなかった。

捕れた場所は水深1.6mほどで、水管も見られたので、確実に生きているそうです。
撮影後はヤマノカミ君の手で、元の場所へ戻されました。採捕許可があれば…。
ここに記していますが、滋賀県でイケチョウガイは、事実上採集禁止なのです。
写真を撮って逃がすくらいはOKだそうです。ヤマノカミ君はイケチョウガイという認識はなく、
漁業調整規則も知らず、逃がしているため、法令や倫理的な問題は無いと思っています。

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イケチョウガイは琵琶湖淀川水系固有種(レリック)で、日本産淡水貝類図鑑(1)によると、
淀川最後は1986年と推定され、大阪府RDB2014では絶滅(EX)とされています。
京都府RDB2015では「過去20年以上、発見記録がない」とされています。
滋賀県RDB2015では「近年...生息に関する情報は極めて少ない」とされています。
大阪府と京都府と違って、滋賀県は含みを持たせていますが、具体的な記述はありません。
「近藤高貴コレクション 日本産イシガイ目標本目録 (2015)」によると、滋賀県は
2000年9月7日(琵琶湖)の2個体を最後に集録が無く、その後は2007年に移入の姉沼です。
移入を除く確実な記録としては、2000年が最後だと思われます。20年未確認に等しいです。

2000年以降の記録もあります。凄い方はいるものです。2007年1月にkochibi氏が採集。
この石積みの場所は、すぐに特定できたので、何度か潜りましたが、捕れませんでした。
そして同氏が2019年10月10日に採集。2007年以来の発見だったようです。

まとめます。私が知り得た情報だけですが、在来純系イケチョウガイは、
大阪府は絶滅(1986年)、京都府は絶滅寸前(1995年以上前にしか記録が無い)、
滋賀県は2000年2個体、2007年1個体、2019年1個体、そして今回2020年1個体です。
20年間で5個体目を拝むことが出来ました。これらは全て殻長18cm以上ある成貝です。

成貝の殻は湖岸や漁港で見られるため、細々と生き続けているのだろうとは思いますが、
殻長15cm以下のものはほぼ見られません。改良母貝が琵琶湖に侵入しているため、
それらとの交雑によって、今後に生まれて育つものは、純系が少なくなることでしょう。
最悪は今いる成貝が居なくなった後は、琵琶湖でも絶滅するかもしれません。
実態把握と保護が急がれます。採捕許可があれば貴重な生体を残すことも出来たのに…。

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淡水貝類研究会24回やちりぼたん49(1-2)により、滋賀県の二枚貝について、
新知見が増えたため、備忘録的に整理します。未同定シリーズはこの次にします。
2018年夏に琵琶湖でひたすら二枚貝を捕っていたのは、事前に情報を頂いて探していたのです。

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イシガイとタテボシガイは、系統的に識別不可能で、亜種を分かつものではなく、
同じとして見なす場合に、イシガイ(琵琶湖型)という考え方もあったのですが、
タテボシガイの移入個体を、イシガイとして解析している疑いもあるため、
今後もタテボシガイで良さそうです。ただ、琵琶湖にタテボシガイ、淀川にイシガイで、
それが亜種関係というのは納得がいかないので、もしかすると別種関係なのかなぁ。

これまで私がオトコタテボシガイとしたものは、全てニセマツカサガイ琵琶湖型でした。
分類学的な問題があり、研究段階なため、あまり詳しく書くのは控えますが、
もしかするとセタイシガイが、シノニムの沼から、サルベージされるかもしれません。

タガイ、ヌマガイ、マルドブガイ、オグラヌマガイは、形態と遺伝の両面で、
非常に難しい状況で、ドブガイ種群と呼んだ方が良いかもしれません。

ドブガイモドキは1966年に採集された標本が、見つかったことが報告されました。
夏に探していたのですが、1つも捕れませんでした。現在は絶滅か絶滅寸前かもしれません。

メンカラスガイはカラスガイの1型として、整理する説もあったのですが、
どうやら系統的には別種レベルで、メンカラスガイとして生き残りそうです。

来年こそは琵琶湖でオトコタテボシガイとドブガイモドキを捕りたいなぁ…。

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2016年12月11日はmaikyさんとやしを君と3人で琵琶湖でした。
maikyさんと西村は素潜り、やしを君は胴長で、イケチョウガイ×ヒレイケチョウガイ(外来)、
ヒレイケチョウガイ(外来)、メンカラスガイ、オグラヌマガイなどを狙いました。

水温約12℃、気温約8℃、47分間、濁る、風速2~3m、寒さ度0(余裕だね)でした。
冬場はいつもウエットスーツ5mmの下に、長袖Tシャツを着ていましたが、
ヒートテックインナーとフリースを試してみました。もこもこに着ぶくれして、
腕がなかなか通らず、maikyさんに手伝ってもらわないと、1人では着られませんでした。
腕が固定された感じで、無理かもと思いましたが、水へ入ると動かせるようになりました。
寒いとか冷たいとかは、全く思いませんでした。まだ30分は余裕で入っていられました。
水から上がって、フリースを脱いだ途端に、いつもの寒いぃっとなりました。
フリースの防寒効果は高かったです。しかし、1人で着る自信はありません。
また、ウエットスーツが伸びて、早く痛みそうな感じで、多用は控えようと思いました。

結果は写真の通りです。左から4つ西村、3つmaikyさん、3つやしを君です。
私が捕った4つは、イケチョウガイ×ヒレイケチョウガイか、ヒレイケチョウガイです。
こちらによると、イケチョウガイ成貝は、翼状突起が無くなることで区別が出来るそうで、
4つとも成貝サイズで翼状突起が確りあります。そのためイケチョウガイではありません。
K先生に送って同定して頂きましたが、イケチョウガイ×ヒレイケチョウガイだそうです。
ここでも記していますが、真珠養殖場の雑種が逸出し、琵琶湖に定着しているのです。

滋賀県漁業調整規則滋賀県によると、いけちよう貝・いけちようがい・イケチョウガイは、
徒手採捕(手に何も持たず捕る行為)は禁止されています。事実上この貝は採集禁止です。
そこで交雑やヒレイケは良いか、2014年に確認を取りました。その結果がこちらです。
「イケチョウガイの同属として、ヒレイケチョウガイがあるため、同じ扱いになる。」
この時は納得しましたが、今になって再考すると、疑問が沸々とわいてきました。

まず、指定はイケチョウガイであって、イケチョウガイ属ではない。
第36条に全長等の制限があり、そこには「いけちよう貝」が含まれていますが、
同項には「びわます」と「あまご」もあります。ビワマスとアマゴは両方ともサケ属です。
同属だから同じ扱いという理屈であれば、「びわます」とだけ書いておけば事足ります。
更に「あまご」はヤマメの亜種です。属や種どころか、亜種まで絞って指定しています。
すなわち、イケチョウガイとあれば、イケチョウガイ種を指定しているに過ぎず、
イケチョウガイ属とは社会通念上からも、読み取ることが出来ない、拡大解釈だと言えます。

「しじみ」の場合は、シジミという標準和名の種はおらず、セタシジミとマシジミを、
指すことは理解できます。しかし、イケチョウガイ属は数年前まで、イケチョウガイ種しか、
日本では知られておらず、2014年時点で琵琶湖にヒレイケや交雑個体の存在の報告は無いです。
生息確認が無いものを指定しています。同属なのでという解釈は無茶苦茶です。

交雑個体はイケチョウガイの遺伝子が含まるので、それで違反だと拡大解釈すれば、
罰則は半分で済むのでしょうか。それもおかしな話で、指定しているのは種なのです。
この記事を見て下さい。オオサンショウウオ×チュウゴクオオサンショウウオは、
国の特別天然記念物という扱いはされません。指定はオオサンショウウオ種だからです。

第50条に水産動物の移植の禁止項があり、17種類が記されています。これは逆説的に、
指定した17種類以外は、移植しちゃダメですよということです(移植はそもそも問題ですが)。
この中にイケチョウガイはなく、もちろんヒレイケや交雑個体も指定されていません。
現状では移植してはいけないものが、霞ヶ浦経由で琵琶湖へ移植されちゃっています。
移植した人には罰則があります。まずここから何とかするのが、当局の役割でしょう。
このままでは、琵琶湖のイケチョウガイの全てが、交雑個体へ置き換わる可能性も高いです。
滋賀県としては外来生物を容認し、詭弁で拡大解釈して、捕るなというのでしょうか。
誰かが法令違反した外来生物を、私達は自然から取り除き、駆除しているとも言えます。

これらの理由によって、琵琶湖へ素潜りし、徒手によってヒレイケ及び交雑個体は、
採捕が可能だと解釈しています。私的見解なため、採捕される際は、自己責任でお願いします。
イケチョウガイ属で逮捕されたら、判例は無いと思われ、裁判所で争う案件かもしれません。
その場合は第51条(イケ属を徒手採捕した)だけではなく、他の条項にも注意が必要です。
第35条の5~7月、第36条の殻長10cm以下は採捕禁止です。私達は12月の10cm以上です。
委員会指示によって、西の湖(近江八幡市・安土町地先、西の湖および同湖から
琵琶湖に通ずる水路ならびに同湖周辺の水路)は、貝類の採捕が禁止されています。
この貝類という括りには、社会通念上もヒレイケや交雑個体が含まれると思います。
この指示で西の湖水系はカワニナ採集が出来ません。いつか解除される日を待ち望んでいます。

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琵琶湖で採集(後に逃がした)したイケチョウガイ×ヒレイケチョウガイです。
文献1を参考に、成貝なのに翼状突起があるため、雑種(改良母貝)だろうと判断しました。
文献2文献3によると、雑種は養殖場でしか、確認されていないようですが、
写真の個体は養殖場ではなく琵琶湖なため、自然界への逸出が始まってるのでしょう。

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潜って目の前にあった、見慣れない形の貝。掴むと重さと硬さで、すぐにわかりました。
浮上してから、翼状突起がヒレ状に確りあるのを見て、あーあと思いました。

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非常に薄っぺらいです。タガイを押し潰した感じ。

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下2つは要芽さん採集。左下はイケチョウガイに近い感じですが雑種でしょうね。
いつか本物のイケチョウガイを琵琶湖で捕りたいです。もう諦めた方がいいのかな…。