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三重県の海で撮影したサラサエビ科の一種(未同定)です。
サラサエビかと思ったら模様が違う気がして未同定に。模様同定も不確実な形質だけど。

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三重県の汽水域で要芽さんが採集したテッポウエビ属の一種Bです。
この記事ハシボソテッポウエビと誤同定していました。初めて見た種類でした。
何となくハシボソよりも模様がはっきりしないなと思って、吉郷英範(2009)で確かめたところ、
テッポウエビ属の一種Bだと思います。インターネットだとこちらにも写真がありました。
分布は琉球列島(沖縄県名護市以外での記録は無い)とされています。
えーっと要芽さんが捕ったのは三重県です。これは大幅に北限更新したようです!
もっときちんと写真を撮ろうと、水槽を覗き込みましたが、どっかに穴掘って隠れている模様。
これだから汽水域は面白い。最近は琵琶湖が遠くに感じる。どっちもそろそろシーズンオフ…。

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長野県上伊那地域で採集したヌマエビ北部-中部グループの一型(未同定)です。
ヌマエビ北部-中部グループは9型です。卵無し、頭胸甲上棘数0、額角上縁棘数16前後。
これだけの情報では同定が出来ません。長野県上伊那地域は遺伝的報告がありません。
但し、採集場所は天竜川水系上流域で、下流域の集団は東海型とされています。
同一水系なため同じかというと、天竜川は上流域と下流域で魚類相が大きく異なります。
ヌマエビ属は魚類と同じ水生生物でもあり、同一水系からだけで東海型とは判断できません。

2014年5月に「日本の淡水性エビ・カニ」が発行されました。
写真は生態と標本の両方を載せ、特徴を捉え、珍しい離島の固有種も多数。素晴らしい。
内容はやや専門的で、普通の人(私も)が読むと、頭に疑問符が浮かぶかもしれません。
それでも、サワガニ科の充実、カワリヌマエビ属の一種(外来生物)にも触れていて、
この一冊でエビカニのことを、全て知った気にさせてくれる、良い図鑑です。

残念なのは、ヌマエビとヌカエビのことは、ちょっとすっきりさせすぎな気がしました。
また、ミゾレヌマエビの写真4枚のうち、1枚はこの本で言うヌマエビだと思います。
それ以外に脱字など細かなところはありますが、お前が言うなと言われそうなので(笑)。

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この本では、タイワンオオヒライソガニの分布として、三重県と記されています。
あれっ?と思いました。三重県での分布は、このブログの記事でしか報告が無いはず。
参考文献も確認しましたが、載っていないぞ。この分布情報の出典が知りたくなりました。
ちなみに、タイワンオオヒライソガニは、三重県で2006年7月23日に採集した個体です。

某先生に著者T氏のメールを教えて頂き、確認したら、私の記事を参考にしたと認めました。
参考文献は膨大になり、本のページ数の関係から、分布の文献までは掲載できなかったと。
事後だけど理解と了解して欲しいと。唖然としました。これ私は了解するべきですか?
ポケット図鑑は参考文献が膨大になる場合、主要文献のみ載せるという慣例があることも、
理解していますし、参考文献を載せないものが、一部にあることも知っています。

仮に三重県初記録として、私が報文準備中だった場合、この本に記されていると、
レフェリーから指摘された場合に、新知見として載せることが、出来ない恐れもあります。
(三重県はこのブログで既報ですが、それも加えて未報告の別の県でも確認しています)
これまで日淡ネタでは、紙媒体にいくつも出典を載せず、パクられています。
あまりに多いので、「著作権 Webサイトと書籍」という見解を載せているほどです。

私がネットで発信した新知見が、紙媒体に出典を載せずにパクられ、
その後に私の方が、紙媒体からパクったように誤解され、迷惑することもあります。
こちらは無償でパクられ損です。本は有償です。原典の私にたまたまバレたので、
事後了解して欲しいと言う前に、このブログはメールを載せ、コメント欄もあるため、
参考文献には載せないわけですから、連絡する必要が、あったように思います。
これは分布情報の確さを調べ、本の信頼度を高めることにも、繋がると思います。
また、第二著者S氏は私と面識があり、その繋がりで連絡することも、可能だったはずです。
ちなみに、3月発行で同出版社の淡水魚識別図鑑には、参考ウエブサイトとして、
日淡会が載せてありました。それだけで済むのに、なぜその一行が出来ないのだろう。

裏を返せば、私のブログのような小さな情報も収集され、検討されていることからも、
熱くて濃いものを感じます。この本は写真だけでも買う価値は、十分にあると思います。
今後に淡水性エビカニの同定は、バイブルとして使わせて頂こうと思っているほどです。
それだけに、つまらないことで、愚痴らせないでほしいです(笑)。

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和歌山県の海で撮影したオトヒメエビです。
発見はo君。ケガキが多いのは紀伊半島感がある。夜に潜りたかったなぁ…。

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これの続きです。凄く頭痛くなります(笑)。
以前の考察とは異なる見解も書きました。でも要は何に従うかだけなため、
前の考察が全くの間違いで、この考察2が正しいというわけではありません。

研究者が並々ならぬ努力と知恵を絞って、ヌマエビ属に取り組まれているのが、
よくわかりました。主要な↓3つの論文は、私には特に重要で凄いと思いました。
「IKEDA et all. (1996) Tohoku Journal of Agricultural Research 47:37-45.」
「池田実 (1999) 遺伝学的にみたヌマエビの「種」. 海洋と生物. 123:(21)4. 299-307.」
「林健一 (2007) 日本産エビ類の分類と生態 II. コエビ下目(1) 生物研究社.」

林(2007)はuさんに探してもらいましたが見つからず、pさんに拝読させて頂きました。
お二方にお礼を申し上げます。3つの論文を基に更なる考察と、検索表も作りました。
ヌマエビ種群の意味は、ヌマエビ北部-中部グループ9型と、ヌマエビ南部グループの、
10種類からなる、ヌマエビ Paratya compressa species complex を示しています。

Wikipediaヌマエビ(分類の混乱)によると、『池田実らの研究(1999)によって、
ヌマエビ大卵型とヌカエビは同一種「ヌカエビ P. improvisa」にまとめられ、
ヌマエビ小卵型が「ヌマエビ P. compressa」として扱われることになった』とあります。
この文章や他の記述は、林(2007)からの引用や参考が多いと思います。
「池田実らの研究(1999)」に参考文献が記されていないのも、孫引きだと思います。

林(2007)を読むと、池田(1999)が如何にも、混乱していたヌマエビ種群を、
ヌマエビ P. compressa とヌカエビ P. improvisa に整理したように書いてあります。
しかし、池田(1999)は「分類学的に1種とされてきたヌマエビは,遺伝学的には異なる
二つの種の複合であること,頭胸甲上の棘の有無のような分類学的に重要視されている
形質で分けられている形態上のまとまりが,これらの二つの種とは必ずしも一致していない
ことが明らかにされた」とあるだけで、ヌマエビとヌカエビという種類の関係については、
言及していません。むしろ、遺伝と形態が一致しないので、分類できないとも取れます。

林(2007)はヌマエビの模式標本の産地は不明で、模式標本の写真から小卵と見做し、
ヌマエビとしていますが、日本産かすら分からず、模式標本を精査する必要があるのと、
ヌカエビの模式産地は榛名湖としているだけで、両模式標本の比較が記されていません。
分類上の不確定な問題を残しながら、ヌマエビ種群を2種に分けているとも言えます。

林(2007)以後の2009年に、池田氏は↓のような講演要旨を掲載しています。
両側回遊型ヌマエビにおける日本列島集団と琉球列島集団間の遺伝的分化
まずタイトルを「両側回遊型ヌマエビ」としています。両側回遊型ではないヌマエビが
いることを連想させます。更に「ヌマエビ Paratya compressa の南部グループは」とあり、
ヌマエビ Paratya compressa には南部グループ以外もあることを暗に示しています。
これは陸封性のヌマエビ北部-中部グループの存在を示していると私は思いました。

この書き方からだと、旧来の分類でヌマエビとヌカエビは、同種で亜種関係にあるため、
ヌマエビ P. compressa と書けば、これにはヌカエビ P. c. improvisa が含まれます。
林(2007)以後も池田氏は、ヌマエビ P. compressa とヌカエビ P. improvisa とせず、
ヌマエビ P. c. compressa とヌマエビ P. c. improvisa ともせず、
池田(1999)のヌマエビ P. compressa を使用し、未だ分類が未確定で混沌としていると、
読み取ることが出来ると思います。それなのに林(2007)は池田(1999)を主な基として、
ヌマエビ種群を2種にしているため、林(2007)には取り違えがあると考えられます。

ようするに、ヌマエビ種群は、まだ整理されておらず、カオスが続いているのです。
結果として、今なお生き続ける旧来の1種2亜種に従ったり、林(2007)の2種に従ったり、
遺伝的なグループ分けに従ったり、未整理としたり、これらを色々混合したり、
もうごちゃごちゃですが、どれも的に矢は刺さっていると思います。
的の中心に一番近いのは、未整理だと思います。整理完了までは大変そうです。

それはヌマエビ北部-中部グループ9型は、1つの種ではなく、隠蔽種群の可能性もあり、
ヌマエビ南部グループをヌマエビ P. compressa とし、ヌマエビ北部-中部グループ9型を、
ヌカエビ P. improvisa とする2種では済まない恐れもあり、完全な整理を目指すと、
未記載種・亜種の可能性も、一緒に検討する必要があります。例えば琵琶湖型は中卵で、
差異が明確なため、新種(亜種)記載も可能かもしれませんし、遺伝的に大きく離れた、
北部グループと中部グループも、後に形態形質の差異が、見つかるかもしれません。

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実用的・暫定的・便宜上という感じで言えば、卵サイズは遺伝的にも符合します。
ヌカエビ P. c. improvisa の模式産地である群馬県の榛名湖は、
ヌマエビ北部-中部グループ関東型で、卵サイズは大卵に当たります。
榛名湖へヌマエビ南部グループ(小卵)の進入は、普通に考えると無いため、
関東型の上位階層であるヌマエビ北部-中部グループを、ヌカエビ P. compressa とし、
ヌマエビ南部グループをヌマエビ P. compressa とすることは、細かいことに目を瞑ったら、
まあ問題は少ないのではないかと思われます。それを踏まえて検索表は作りました。
ただし、実用的・暫定的・便宜上で無い場合は、ヌマエビ北部-中部グループ9型と、
ヌマエビ南部グループという池田(1999)の見解に私は従います。

それでは実際に当てはめて見ましょう。写真左は和歌山県産です。
第1歩脚の腕節が、写真からは難しい。更に窪むかどうかは顕微鏡の世界か。
小笠原産じゃないから、もう次へ進みます。この時点でオガサワラヌマエビではない。
ということは言い切れなくなります。卵サイズは抱卵していないから次へ。
頭胸甲上棘数は、運悪く手前の水滴で、数えられないが、1本以上はある。
それでは同定できないので、ここで終了です。分類上は未同定ということです。

写真右は琵琶湖産です。これも第1歩脚の腕節が、写真からは難しく、抱卵していない。
頭胸甲上棘数は、たぶん2本ではないだろうか。これも正確ではないため、
標本化して顕微鏡で要確認しないと。仮に2本として、額角上縁棘数は全部確認できず。
10本以上はありそうだけど、28本はないだろうから、分類上は未同定で終了です。
分類上に重要な形態形質から同定を試みると、2産地とも未同定となりました。

未同定は嫌だ。という場合に、分布同定という、反則技があります。
和歌山県にはヌマエビしか分布しないため、沿岸河川で捕ったしヌマエビで良いだろう。
琵琶湖にはヌカエビしか分布しない。天ヶ瀬ダムが出来る前の1964年以前であれば、
ヌマエビが分布する可能性もあるが、この個体は2011年に採集したので、
47年も生き続ける個体はいないと仮定すれば、ヌカエビで良いかなとなります。
しかし、分布同定は形態比較をしないため、移入の同属他種の存在を無視しています。
外来エビは生息しない勝手な前提のため、反則技では同定という勝利は挙げられません。
それでも分類屋さん以外が、これはヌマエビだヌカエビだ。とするのは問題ないでしょう。
これはノンガターレーンでボウリングするようなものです。どれかピンには当たります。

ネット検索すると、ヌカエビ P. compressa とヌカエビ P. improvisa は、
「模様を見れば見分けは簡単」と、豪語されているページを見つけました。
これはヌマエビやヌカエビと、決め付けた個体を集めて、模様の比較を行っているため、
分類的や遺伝的な裏付けが全くないのです。分類的には第1歩脚の腕節から確認し、
確実に同定できた種だけを選び、その上で模様の比較をする必要があるのです。

理想を言えば、ヌマエビ北部-中部グループ9型とヌマエビ南部グループの10種類から、
まとまった数(仮に30個体)をサンプリングし、全てごちゃ混ぜにし(300個体)、
模様だけで2種に分けます。それを分類的や遺伝的に調べて、全て正解であるならば、
模様という形質は、決定的な特徴として使える、裏付けが取れたと言えると思います。

裏付けがない場合は「模様を見れば見分けは簡単」や「模様から典型的なヌカエビ」は、
根拠に欠けるため、言い過ぎでしょう。私はこちらのツイートと同じ考え方です。
日淡とカワニナ科は、それなりに知識を得たつもりですが、ここを見れば同定できる、
確実にこの種類だと思っても、慎重に記事1記事2のように答えることが多いです。
これは何々という種類です。と答えるときは、その個体を確り見て同定したときで、
他は何々だと思います。がほとんどです。過去にここでも少し書いています。

ヌマエビ属は無知なため、中途半端な知識もなく、気軽にテキトーなことを書きました。
おそらく本当に深く知ると、この記事が恥ずかしくなって、消したくなると思います…。