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琵琶湖で採集されたヒロクチヒラマキです。
某漁港で混獲された個体を撮影させてもらいました。同定はさわだ君です。感謝。
これまで2回記事にしているのですが、それらは丸っこいカドヒラマキとして訂正しました。

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2024年7月21日は琵琶湖でmaikyさん、さわだ君、西村で採集しました。
今回の目的は某貝です。10~15年前は普通にいたのだけど、近年は全く捕れない。
文献も2015年度を最後に報告がなさそう。ネットでも捕っている人がいないようだ。
私やささき君の下調べで、過去に捕れた場所を探すも、捕れないので絶滅寸前なのかも。

当日にささき君は残念なことに体調不良で不参加。1箇所目、maikyさんと西村が採集。
過去に某貝がいた場所だが、環境が変わってしまって、今後も回復が見込めない。
2箇所目、海津漁港でさわだ君とおはよう。極めて貴重な貝などを拝見(感謝)。
3箇所目、イボとトキタマなどの交雑が多そうな場所(写真)。4~5箇所目も同様。

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6箇所目、ドブシジミやヒラタビルなど。

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7箇所目、過去に某貝を捕っている場所。捜索範囲を広げて調査。
海パン、13:06~13:57(51分間)、310m遊泳。やっぱり海パンはとても潜りやすい。
写真はさわだ君の成果。これでも採集数は抑えているようです。研究に必要だからね。

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8箇所目、こんなところにクロダカワニナがいて驚きました。
写真はイボカワニナ、タテヒダカワニナ、カワニナ種群です。
ここでさわだ君とはお別れ。遠路はるばる大変にお疲れ様でした。
9箇所目、海パン、17:49~18:35(46分間)、491m遊泳。maikyさんと本気潜りで、
某貝を狙うも捕れず。海パンの楽々潜りで、水深10mに達していたかも。

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7箇所目で私はカワニナ類を2個体(左写真)だけ採集していました。
左がカゴメカワニナ、右がアザイカワニナだと思って、さわだ君にも見せて同意。
縦肋数などもアザイの方に入ると思うが、胎殻を確認したら紛うことなきカゴメでした。
アザイの記載者と献名者の両方ともが誤同定。普通の人がこんなの同定できるわけがない。
生体同定は難しく、茹でて胎殻を確認する人は限られるので、カワニナ離れは進む一方です。

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2024年7月13日未明は琵琶湖で採集しました。
1箇所目で着替えて道路へ出ると、ロードキルされたシロマダラがいました。
死んで間がない感じだけど、私が轢いてないよね…。暗色帯が太く明瞭です。

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1箇所目、00:40~02:00(1時間20分間)、1090m遊泳。動画 https://youtu.be/HVYM3nnbiM8
左からトキタマカワニナ、シノビカワニナ、オオウラカワニナ、アザイカワニナだと思う。

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2-3箇所目は潜らず胴長で採集。左はイボ?イボ×トキタマ?よくわかりません。
右はもっとよくわかりませーん。一番楽な片付け方はオオウラとイボ。

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3箇所目の胎殻。ヤマト系(ヤマト、トキタマ、チクブ、コンペイトウ、クロ、タテジワ)は、
暗色帯が太く明瞭です。他のカワニナ類はそれが無かったり細かったり不明瞭です。
トキタマ(トポタイプ) https://tansuigyo.net/a_biwae/c/18-301-20170815.jpg です。

左上から右下まで、暗色帯が太く明瞭な順に並べてみました。
【左上】親殻はイボ、胎殻は暗色帯が太く明瞭、ヤマト系なのかぁ。不一致すぎる。
【中上】親殻はトキタマ、胎殻は暗色帯が細く明瞭、中途半端な感じ。
【右上】親殻はイボとトキタマの中間的、胎殻は暗色帯が細く不明瞭、交雑かも。
【左下】親殻はヤマトで少し縦肋は多め、胎殻は暗色帯がほぼ無い、なんやこれ。
【中下】親殻はイボ、胎殻は暗色帯がほぼ無い、これはイボで良いでしょう。
【右下】親殻はイボ、胎殻は暗色帯がほぼ無い、右上と色違いみたいな感じで似ている。

さて、これらをどう同定しましょうか。親殻か胎殻かどちらに重きを置くかですね。
これらの個体は約2×4m、水深約0.3m、礫底のほぼ同所で、無作為に徒手採捕しました。
通常そうしたハビタットは1(~3)種類が多数います。この場所はおそらく複数の種類が、
ぐちゃぐちゃに交雑して、色々な特徴を現わしているのではないかと思っています。
要素として強いのはイボとトキタマですが、ヤマトやアザイ?もいるっぽいです。
この集団をどう片付けると正解に近いのか。諦めてエイヤー同定するしかないです…。

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2024年7月6-7日は琵琶湖でささき君と一緒に採集しました。
4箇所目まで1人で貝採集。1箇所目、ストビューと見たよりも、水草だらけで駄目。
2箇所目、狙いの貝が捕れない。3箇所目、泥底だと思ったら礫底でとりあえずカワニナ採集。
分布と殻形態だけでざっくり同定すると、上からイボカワニナ、下がオオウラカワニナです。

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4箇所目でささき君が合流。うな潜りした後で、貝採集するも、結果は出なかった。
とりあえず深場でカワニナ4個体だけ拾う。白背景で撮影するとピンボケが酷いんですよね。
5箇所目はうな潜りで帰路。あのマイナーな貝は人知れず絶滅へ向かっているのだろうか。

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3箇所目の胎殻。何時もの如く超難解。左はイボで良いでしょう。
中央と右はヤマト種群の胎殻だけど、親殻は中央の縦肋がイボの要素が強めで、
右はトキタマぽく見せかけて、殻底肋が多くないか。これは変異幅の漸移か交雑か。

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4箇所目の胎殻。左はカワニナ種群(カワニナ or キタノカワニナ)で合っていると思う。
中央と右は現場ではアザイかと思っていたが、胎殻は全然違うので誤同定だな。
中央は胎殻がかなり大きいが、サザナミぽくないぞ。最大胎殻を持ったケショウか。
右は中央と同種かと思ったがシノビか。いや何だこれ。えーっと暫定でも同定できない。
カワニナ類の同定はこんなのばかり。そりゃみんなカワニナ類から離れて行くよね。

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先日にアザイカワニナが新種記載されたので、日本産カワニナ科(カワニナ属のみ)の、
献名について詳しく知りたくなって、少し調べましたので記事にしてみました。
現生種は有効名23種+未記載7種=30種で、そのうち献名は8種(敬称略)です。

●ナカセコカワニナ (中瀬古川蜷)
Semisulcospira (nakasekoae) nakasekoae Kuroda, 1929
Semisulcospira nakasekoae Kuroda, 1929 ※略記
原記載論文黒田徳米から中瀬古(種小名・和名)へ献名。
「宇治川(中瀨古, 黑田, 福岡)」とあるが由緒は不明。

●クロダカワニナ (黒田川蜷)
Semisulcospira (niponica) kurodai Kajiyama & Habe, 1961
Semisulcospira kurodai Kajiyama & Habe, 1961 ※略記
Semisulcospira kurodai K1-4 sensu Morita et al. (2023) ※種群
原記載論文梶山彦太郎波部忠重から黒田徳米(種小名・和名)へ献名。
「この研究について終始御激励と御助言を賜った黒田徳米先生に新種を献名して
感謝の意を表することが出来るのを,深く喜びとしている.」と明記。

●ハベカワニナ (波部川蜷)
Semisulcospira (niponica) habei Davis, 1969
Semisulcospira habei Davis, 1969 ※略記
原記載論文Davis, George Morganから波部忠重(種小名・和名)へ献名。
「A special note of gratitude is due Dr. Tadashige Habe」とあるが由緒は不明。

●モリカワニナ (森川蜷)
Semisulcospira (nakasekoae) morii Watanabe, 1984
Semisulcospira morii Watanabe, 1984 ※略記
原記載論文渡辺直から森主一(種小名・和名)へ献名。
「This species is named after Dr. Syuiti MORI, the President of Shiga
University, who made the pioneering ecological works on Semisulcospira,
and advised me to study this genus in Lake Biwa.」と明記。

●サザナミカワニナ (細波川蜷)
Semisulcospira (nakasekoae) davisi Sawada & Nakano, 2021
Semisulcospira davisi Sawada & Nakano, 2021 ※略記
原記載論文澤田直人中野隆文からDavis, George Morgan(種小名)へ献名。
「The specific name is dedicated to Dr. George M. Davis, who greatly
contributed to the systematics of Japanese Semisulcospira.」と明記。

●チクブカワニナ (竹生川蜷)
Semisulcospira (niponica) nakanoi Sawada in Sawada & Fuke, 2022 ["2023"]
Semisulcospira nakanoi Sawada, 2023 ※略記
原記載論文】澤田直人から中野隆文(種小名)へ献名。
「The specific name is dedicated to Dr Takafumi Nakano, who greatly
supported the first author’s study of Japanese Semisulcospira.」と明記。

●トキタマカワニナ (時偶川蜷)
Semisulcospira (niponica) watanabei Sawada in Sawada & Fuke, 2022 ["2023"]
Semisulcospira watanabei Sawada, 2023 ※略記
原記載論文】澤田直人から渡辺直(種小名)へ献名。
「The specific name is dedicated to Dr Naoshi Watanabe, who significantly
contributed to the systematics of Semisulcospira in Lake Biwa.」と明記。

●アザイカワニナ (浅井川蜷)
Semisulcospira (niponica) nishimurai Sawada in Sawada et al., 2024
Semisulcospira nishimurai Sawada, 2024 ※略記
原記載論文】澤田直人から西村俊明(種小名)へ献名。
「The specific name is dedicated to Toshiaki Nishimura, who first
discovered the new species through his exhaustive survey of the
distribution of Semisulcospira in Lake Biwa (Nishimura 2024).」と明記。
澤田直人から浅井氏(和名)へ献名。浅井氏は分布域と領地から浅井長政
「The new Japanese name refers to the Azai clan, a Japanese daimyo
(feudal lord) of the Sengoku period, whose largest territory roughly
corresponds to the distribution of the new species (Ota 2011).」と明記。

献名された種小名(学名)の語尾は、男性がiで女性がaeを示します。
種小名は1758年(266年間)から基本的に不変で世界共通の名前です。
23種の最古はカワニナのGould, 1859で、165年間も使われ続けています。

和名は日本語なためにルールがなく、改称を提唱されることもしばしばです。
今年もトゲナガタカサゴイシモチが、ヒメタカサゴイシモチに改称されました。
日本産カワニナ科で、和名が改称されたものはないですが、シノニムは多数あります。

中瀬古(中瀨古)氏は苗字だけで名前が不詳。どこかに書かれていないだろうか。
献名を拝受した中野氏と西村以外は鬼籍(Davis氏は2024年6月19日)に入られています。
中瀬古氏は不明だが渡辺氏と浅井氏は没後に献名。西村を除いて偉人揃いで恐縮です。