2002年6月22日に三重県の高塩分の汽水域で採集したゴマハゼです。
塩分が高過ぎてまた日淡会に載せられない魚を撮ってしまったと思っていましたが、
家に帰って写真を見ると、尾部腹面(肛門から尾鰭基底下部)にある黒色斑(以下:星)が、
3つであることに気付きました。どの図鑑を見てもゴマハゼは4つとされていました。
ただし、ミツボシゴマハゼは星3つとされ、ミツボシの名前はここから付いています。
それほど特徴のある同定ポイントなのですが、私にはミツボシゴマハゼには見えず、
分布から考えても三重県はありえない。何なんだとこれはと思いました。
そこでmさんの掲示板でご教授頂き、星3つのゴマハゼだろうとのことでした。
こうした例の報告はこれまでなく、私が掲示板で初報告となりました。
その後に同じ水域でゴマハゼをたくさん捕って観察しました。
写真は2002年よりも少し離れた場所で、2006年10月09日に捕りました。
この水域では星3つと星4つの両方がいて、中間のような個体もいることが判りました。
私は和歌山県では8箇所ほどでゴマハゼを採集した中で、
たいていの場所で星の数を確認しましたが、全て星4つだけでした。
どうやら星3つは、三重県の一部地域だけに、生息しているようなのです。
この件で、論文化のお話も頂きましたが、生息地公開が嫌だったのでお断りしました。
生息地を明かさず、遺伝的な精査をお願いしましたが、まだ回答は頂いておりません。
中間的な個体もいることから、ゴマハゼの変異の範疇だろうと私は思っています。
右が星4つの普通なゴマハゼで、左が星3つのミツボシなゴマハゼです。
「日本産魚類検索 第二版 2000」では、ゴマハゼとミツボシゴマハゼを、
この星の数だけで分けています。この図鑑に従うと誤同定するということです。
「日本のハゼ 2004」では星の数と、ゴマハゼの第一背鰭に黄色斑はないとしていますが、
三重県の星3つの場所の低塩分地域で捕ったこれは黄色斑があります。
厳密に言うと橙色斑なのですが、それに関する記述もありません。
「日本生物地理学会会報 60 69-74 2005」には橙色斑は発達しないとありますが、
ここまではっきりあれば発達していると判断できる範囲だと思います。
「日本のハゼ 2004」435頁のゴマハゼの1種(マングローブゴマハゼ)下の写真は、
ミツボシゴマハゼの誤同定ですが、これはマングローブゴマハゼの新称を提唱した
「日本生物地理学会会報 60 69-74 2005」でも同筆者が誤同定と認めています。
それとミツボシゴマハゼにも星4つがいるようです。
これらにより、星の数による同定は、全く使えないということです。
これは先日の「図鑑と同定」記事の続きでもありますが、
図鑑だけでは同定できないことが、ゴマハゼの例からもわかると思います。
ちょっと主張の強い記事が続いていて、取っ付き難くてすみません…。
ryu-oumi - 2009/07/03 (金) 00:35 edit
前回の続編、若しくは魚類応用編ですね。
私もビワヨシノボリ、
以前から疑わしいのを採取していましたが
西村さんに教えて頂くまで
「流入河川には遡上しない」を信じていました。