2017年10月28日は淡水貝類研究会(岐阜大学)へ行きました。
この研究会のことは、随分前から知っていましたが、拝聴したのは昨年が初めてでした。
14演題と多くて、参加者は60人弱でした。新知見も多くて、興味深い内容ばかりでした。
写真は「琵琶湖産カワニナの新型」を発表しているさわだ君です。
カワニナ図鑑で言うところのコセイカワニナです。とても良かったです。
何枚か撮影して、なぜこの写真にしたのかは、昔から気になっていた文言だからです。
「採集されたカワニナ」という表記をばらします。
採集=標本・資料などにするために、取って集めること。
された=されるの過去形。
カワニナ=Semisulcospira libertina もしくはカワニナ属やカワニナ類。
この中で「された」が気になりました。されるは「する」の尊敬や受身の意で、
その過去形のされたは、自分ではなく、他人や第三者がしたことを意味します。
すなわち、自分が採集したカワニナ類に、採集されたは適切ではないのです。
この場合は「採集したカワニナ属」の方が良いと思います。
重箱の隅をつつくようなことですが、目に余るほどだからです。
"採集された"で検索すると、たくさんヒットします。報文ではよく使われる文言です。
この中には執筆者ではなく、他人が採集された個体を、報文化した場合もあるでしょうが、
多くは執筆者が採集したものです。おそらく、採集したよりも、採集されたとする方が、
丁寧で品があると思われて、報文の世界では、誤用が常用化しているものと推測します。
言葉は通じれば良いですが、正しく伝わりません。例えば自分が金貨を見つけて、
誰かに報告するとき「金貨を発見されました!」って言わないですよね。
「金貨を発見しました!」ですよね。されたって誰に?って、言われちゃいますよ。
しました(した)は自分、されました(された)は他人です。自戒の念を込めて注意しましょう。
懇親会にも参加させて頂きました。ふなみそ、イサザ佃煮、モロコ佃煮もありました。
会を準備し、後片付けして下さった方々、ありがとうございました。とても楽しかったです。
その後はTMさんに車で自宅まで送ってくれました。そして蒲焼を作り採集もしました。
2010年にmaikyさんと私が、コセイカワニナを採集されてから、じゃなくて採集してから、
7年が経って、研究会での口頭発表という形で、 ようやく日の目を見ましたが、
このネタを優秀で恩義も大事にする、さわだ君に拾ってもらって、良かったと思っています。
新種記載は容易ではないでしょうが、その日が来ることを楽しみにされています。誰が?
追記 2017年11月01日
通りすがりさんに私の誤解を指摘されました(感謝)。詳細はコメント欄をご覧下さい。
通りすがり - 2017/11/01 (水) 06:14 edit
いつも興味深く拝読しております。
http://web.ydu.edu.tw/~uchiyama/1h93fy/ukemi.html
日本語の文法的には、上の頁2枚目のAがBによってCされた。
という形の「Bによって」の部分を省略した形と認識できると思います。
金貨の例ですが、「を」は目的語を表すので、この場合、(私が)金貨を発見した、の受動態は金貨が(私によって)発見された、となり、特に違和感はないかと思います。
わざわざ受動態を使うことについては賛否あるかと思いますが、報文においては、主役がカワニナなどの生物側であることや、英語の科学論文で受動態が多様される影響(こちらも先ほどの研究対象が主という考えに基づいているように思えますが)から、多用されるのではないでしょうか。
いずれにしろ、採集されたカワニナ、という表現は一般的な日本語文法上は誤用ではないと思います。