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2016年11月25日は用事で大阪へ。その後にさわだ君とカワニナ採集しました。
1箇所目はハベとチリメンの模式産地(宇治川)。2種は少ないけどナカセコは山ほどいました。
2箇所目は塔川。割と普通なナカセコばかり。ナカセコ、ナンゴウ、タテヒダは遺伝的には、
同種の疑いがかけられていますが、形態は著しく異なります。その理由として考えられるのが、
生態型や表現型可塑性です。ようするに、流れの速い宇治川と、静水の琵琶湖の環境変異です。

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塔川(塔の川)は宇治川の派川で、本流の宇治川よりも流れが緩いです。
少し下流と少し上流は、流れが速くて、丸っこい典型的な、ナカセコが生息しています。
それではタテヒダに近いナカセコがいるのでしょうか。気になってきました。
結果は写真(ハベとチリメンも混じる)の通りです。やや縦肋が確りしているかもしれませんが、
普通のナカセコでした。胎殻も確認しましたが、タテヒダに近いものはありませんでした。
たぶん流れが緩い水槽でナカセコを3世代飼育しても、ナカセコの形態ではないかと想像します。

3箇所目は塔川よりも上流の宇治川。ナカセコが僅かにいましたが、数年前よりも減っていました。
4箇所目は天ヶ瀬ダムのバックウォーターの崖下り。さわだ君だけ行って、チリメンだけでした。
5箇所目は瀬田川洗堰下流の瀬田川。浚渫で急深になり、胴長での採集は出来ませんでした。
6箇所目は瀬田川洗堰上流の瀬田川。捕り尽くせないほどヤマトまみれでした。

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7箇所目は瀬田川洗堰下流の瀬田川。ここは割と時間を掛けて、2人で採集しました。
その一部を選んで並べて撮影しました。カワニナ属の同定がどれだけ難しいかわかると思います。
たった1箇所でこんな多様な形態のが出てきます。既知種の枠に収まらなかったり、
中間型は山ほど出てきますので、そもそもカワニナ属は全て未同定でも良いくらいです。

ナカセコ、ナンゴウ、タテヒダが同種で、環境変異による形態多様性であるならば、
同所で採集した場合、同様な形態をしていないと、環境変異説は成り立たないのですが、
これらを見てもわかるように統一感はありません。ナカセコぽいのとタテヒダぽいのには、
大きな形態差異があると言えます。むしろナカセコはナンゴウを挟んでハベに近い気もします。

交雑による形態多様性であるならば、最終的には統一的な形態に成るはずですが、
そういう感じでもありません。交雑は始まったばかりで、それまでの移行期間なのでしょうか。
そもそもこの状況で、どれをナカセコやナンゴウやタテヒダとし、遺伝子を調べたのでしょうか。
そこには誤同定や交雑などの、結果を揺るがしかねない、問題はないのでしょうか。
遺伝子を調べて結果でた。はい。終わり。これでカワニナ属は解決するものではない気がします。

コメント一覧

さわだ - 2016/11/26 (土) 22:49 edit

今回もお世話になり、ありがとうございました。西村さんの圧倒的採集センスに殴られた回となりました…笑
いずれは訪れねばと思っていたハベチリ模式産地に連れて行っていただけてありがたかったです。
湖内のビワメラニアも相当ですが、瀬田宇治のカワニナも難問ですね。タテヒダとナカセコが近縁というのは太古に琵琶湖に進出した背景を考えれば分からなくもないですが、やはり形態が変わりすぎな気がします。
遺伝子屋が形態を誤同定した結果がそのまま広まるというのが一番厄介だと思うので、なんとか分子系統と形態を繋ぎたいです。

西村 メール - 2016/11/26 (土) 23:55 edit

さわだ君さん。コメントありがとうございます。
大阪と塔川だけの予定でしたが、お蔭で楽しかったです。今後も活躍を期待しています。