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琵琶湖流入河川で採集したイボカワニナです。
もう捕ってました(爆)。本物のイボカワニナ!! 話せば長いのですが、話そうかな(笑)。
2010年4月24日(オオウラカワニナを捕った同じ日)に、魚を目的に採集していました。
魚は不発。巻貝はチリメンカワニナと、同定できない2種類のカワニナ類が捕れました。

4月28日にS先生に写真同定をお願いし、翌日にご教示頂く事が出来ました(感謝)。
勝手に要約すると、タテヒダかイボだろう。胎殻を要確認。沿岸ならまあタテヒダ。
イボはどこでも捕れて普通種のようだが、そのほとんどはハベの誤同定で、
深場の泥場にいる本物のイボを、自分で採集した人は少ないと思う。とのこと。

私が採集したのは、琵琶湖流入河川の河口域(沿岸)で、水深は1.5~2mの場所。
しかも簡単に捕れない種。同定をお願いする前に、タテヒダとは全く思いませんでしたが、
タテヒダってこんなのもいるんやぁと、私は思い込んでしまいました。これが失敗だった。

イボの写真が見たくなり、いくつか漁ったのですが、「びわ湖の底生動物」にある
たった1枚以外は、図鑑やネットで出てくるイボは、ことごとくハベとカゴメばかり。
最近出版された「日本の動○分布図集」までイボはハベ。オオウラはクロという有様。
ここまでとは…。イボ探しで同行者に説明するにも、写真がないと難しいものがあり、
S先生に良い写真資料があればご教授頂けないでしょうか。とお願いしたところ、
熱心で哀れな私に、先生が撮られたイボの写真を、送って下さいました(感謝)。
それを昨日見て…。あーーーーっ。これかよーっ。タテヒダやん。もう捕ってる撮ってる。

琵琶湖北岸から宇治川まで、頑張って採集しても、イボが捕れないわけです。
これまでタテヒダは散々捕りました。その中にこのタイプ(イボ)の個体は、
何度か捕っていましたが、これはタテヒダだと決め付け、捨てていました(悔しい)。
イボを2ヶ月近く前に、自分で採集した少ない人の中に、私は入っていたのです(苦笑)。

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左からオオウラカワニナ、タテヒダカワニナ、ハベカワニナ、イボカワニナです。
右の個体がタテヒダという基準にすると、左から2番目の個体はハベとかになるわけで、
4月はオオウラ、ハベ、ハベ(これがイボだと思っていた)、タテヒダと同定しました。
S先生に言われたとおりに、胎殻を確認しておくべきだったと思います。
そうすればボタンの掛け違いみたいなことは、たぶん起こらなかったんだろうなぁ。

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4月24日に捕ったイボは持ち帰ったことを思い出し、すぐに魚小屋へ走りました。
もう死んでるかな。不安が過ぎります。水槽の前へ立つ。イボイター!!
取り出す。タオルの上に置いて撮影する。よしっ次体層の縦肋を数えよう。
タテヒダの次体層は「びわ湖の底生動物」によると14~20(平均16.9)とあり、
イボより少ないとある。2回数えたが次体層の縦肋数は21あった。よしっ。
というか、見れば見るほど、タテヒダになんか見えない。これはカゴメ系だ。

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もちろん即試食です。2ヶ月近く飼っていただけに、採集直後に食べた個体とは、
味が変わっているかもしれませんが、また捕りに行くのも面倒なので食べることに。
塩茹で2分。今度は胎殻が出て来ることを期待。これがカゴメ型だったら駄目押し。
しかし、こういうときに限って雄。別の意味でハズレだよぉ。胎殻運が無さ過ぎる。
口に入れると、これまで食べたカワニナ類と比べて、歯応えが軟らかくて良くない、
何かわからなかったが、雄なのに1つだけジャリっと。青臭さが強くて全体的に不味い。
結局はあまりにひどくて、飲み込むことが出来なかった。タテヒダとはまるで違う。
食べる同定方法で、ナカセコの次に不味いことで、同定できるかもしれない(笑)。

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4月から私や同行者が採集し、食べた(カゴメ粒著を除く)カワニナ類です。
適当なタッパーに入れているので、貝同士が当たって傷付く、あまり良くない状態です。
貝殻の好きな方には、怒られそうな入れ物ですが、私は貝殻に興味は無いのです。
これは後で同定の確認が出来るのと、食べた記念として残しているものです(笑)。
左から、カワニナ、チリメンカワニナ、ハベカワニナ、タテジワカワニナ、
フトマキカワニナ、クロカワニナ、ナンゴウカワニナ、ナカセコカワニナ、
クロダカワニナ、タテヒダカワニナ、オオウラカワニナ、ホソマキカワニナ、
カゴメカワニナ種群(顆粒列が著しいタイプ)、イボカワニナ、ヤマトカワニナ、
ヤマトカワニナ肋型。16種類です。我ながらこの短期間でよく捕ったなぁ。

●カワニナ Semisulcospira libertina
●チリメンカワニナ Semisulcospira reiniana
●ハベカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) habei
●タテジワカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) rugosa
●フトマキカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) dilatata
●クロカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) fuscata
●ナンゴウカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) fluvialis
●ナカセコカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) nakasekoae
●クロダカワニナ Semisulcospira kurodai
●タテヒダカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) decipiens
●オオウラカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) ourense
●ホソマキカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) arenicola
○タケシマカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) takeshimensis
○シライシカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) shiraishiensis
●カゴメカワニナ種群(粒著) Semisulcospira (Biwamelania) reticulata
○カゴメカワニナ種群(粒無) Semisulcospira (Biwamelania) reticulata
●イボカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) multigranosa
●ヤマトカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) niponica
●ヤマトカワニナ肋型 Semisulcospira (Biwamelania) niponica
○ヤマトカワニナ(チクブカワニナ) Semisulcospira (Biwamelania) niponica
○モリカワニナ Semisulcospira (Biwamelania) morii

日本産カワニナ属貝類全21種類(ヤマトカワニナ肋型とチクブカワニナを含む)。
残るは、深湖シリーズのカゴメカワニナ種群(顆粒列が著しく無いタイプ)、
離島シリーズのタケシマカワニナ、モリカワニナ、ヤマトカワニナ(チクブカワニナ)、
シライシカワニナという5種類だけ。これもS先生や採集に同行して下さった方々の
お陰だと思って感謝しています。今後も世話になると思います。特にuさんよろしくね。
真夏にはコンプリートするぞぉ。島に行くお金が残っていればいいけど(汗)。


追記 2023年4月21日
ケショウカワニナやサザナミカワニナに似ていて、
非常に難しい個体だが、タテヒダカワニナとしておきます。

コメント一覧

つっちぃ - 2010/06/19 (土) 00:06 edit

はじめまして。突然の書き込みで失礼します。
ビワカワニナ類の連続性は、以前より気になっていまして、私も調べつつ現在に至っております。胎児殻を見ないで確実に分けられるかどうか、または成殻で迷った時に、胎児殻で判別できるのかどうか、そのあたりを検討しているところです。

やはり淡水図鑑の図版がかなりの誤解を招いているようでして、
次体層に縦肋がないタテジワが図示されていたり、体層が平滑に見えるオオウラだったりと、
紙面の都合もあるのだと思いますが、一般向けにしては少々強引な感じを受けています。
典型的な個体を中心に、その周辺にどれだけの変異幅があるのか、そして各々の種の変異幅が重なる部分についてなど、もう少し詳しく見ていく必要がありそうですね。

ネットが普及した現在では、書物より先にWeb検索から入る場合が多いと思いますので、
ここでご紹介されている内容は、多くの方にとって有益な情報になっていることと思います。特に胎児バリバリのカワニナを食されたのには脱帽でした。

西村 メール - 2010/06/20 (日) 02:46 edit

つっちぃさん。コメントありがとうございます。
一連のカワニナ記事について、とうとうわかって下さる方が、現れたという気持ちです。
カワニナの種類を集めて、胎殻を食べて自虐しているだけじゃないんですよ、皆さん(笑)。
つっちぃさんの意見はとても共感できます。私は一過性のカワニナ屋なため、
貝の知識はありませんが「日本産淡水貝類図鑑1」はあまりにも…。と思います。

先日も同じようなことをある方のメールに書いたのですが、
まず「琵琶湖・淀川淡水貝類」ですが、当時としてはすごい図鑑だと思います。
私は何度も読み返しました。その焼き直しカラー版というか、そこへ1995年に出た
「琵琶湖産カワニナ属 Semisulcospira の分類と分布に関する研究」を、
僅か2頁に8種類を加えて、出来たのが「日本産淡水貝類図鑑1」だと思っています。
お世話になっている方もおられるため、あまり批判を書くのは気が引けるのですが、
間違いが広まることの方が怖いと感じ、これまでズバズバと書いてきました。
「日本産淡水貝類図鑑1改訂版」も買いましたが、ホソマキカワニナの文章に脱字…。

「次体層に縦肋がないタテジワ」と「体層が平滑に見えるオオウラ」そうですよね。
オオウラの次体層は11でOKだと思うのですが肋が弱すぎます。おこぼれ掲示板に
そのうち貼ろうと思いますが、同じような個体を大浦以外で捕っていまして、
螺層角もオオウラよりは細長い感じですね。オオウラとタテヒダの中間型かなと。
更に言うとタテヒダの写真は次体層10か11だと思います。143頁の検索に従えば、
これは間違いなくオオウラに落ちます。こんなタテヒダは捕ったことがありません。
これはオオウラか中間型だと思います。少なくとも典型的なタテヒダではないです。
イボの写真と図はハベですし、残念なことに「琵琶湖・淀川淡水貝類」にあった、
カゴメの2タイプの写真が「日本産淡水貝類図鑑1」には掲載されていません。

カワニナの種類と言えば「日本産淡水貝類図鑑1」くらいしか、一般書としては
出回っていないので、それに従うしかないのですよね。これが誤解と混乱の基。
私が言える立場ではないですが、1つの参考と思えば、良いものだと思います。
それと比べて「日本産淡水貝類図鑑2」はとてもよく出来た図鑑だと思います。
1の方が売れているでしょうね。汽水はマイナーなので(苦笑)。

オオウラカワニナの記事に環境省RDBをリンクしているのですが、
タテジワカワニナに比較的類似する。とあって、そんなものかと思いました。
タテジワはハベ系で、オオウラはタテヒダ系だと、私は思っているため、
遠縁な両種を比較しているのが、信じられませんでした。分布域についても、
先日も新たな場所を見つけたのですが、私はフトマキを広範囲で確認しています。
タテジワの分布域で、タテジワと一緒にホソマキを捕っていたり、
瀬田川でヤマトカワニナとヤマトカワニナ肋型を同所的に捕っていたりと、
何というか、こういうネタをわかる方のコメントを頂いて、
一気に爆発した感じです。長くなりましたので、この辺で止めておきます(笑)。

つっちぃ - 2010/06/21 (月) 07:42 edit

西村様
環境省RDBのオオウラカワニナの記事は拝見しました。甚だ疑問です。
タテジワに似るオオウラといえば、某博物館に樹脂封入で展示されていたオオウラ?を連想します。全く別物ですね。
記載論文では、どうも胎児殻とその数も大きな特徴だという事になっていたように記憶していますが、
成熟して5個内外という非常に少ない胎児殻しか持たないのは興味深いです。
また、管理人様のおっしゃるように、次体層の縦肋数だけでいくと、タテヒダがオオウラになってしまう個体が必ず出現します。
他には肋の様子、尖り具合、太さ、色々見ましたが決定打にはなりそうにありません。
ある個体を見た時に、全体的な雰囲気でこの種だろうというのはあるのですが、
そのような曖昧なもので線引きするのは困難ですしね。

そもそも、広く繋がった水域である琵琶湖において、ある地点の岩だとか、ある湾内の一部のみに生息
というのはなかなか理解しがたいです。繁殖様式から、ある程度は分散に関して制限がかかるのかもし
れませんが、それでもボートの往来があったり、人為的な移動に伴う胎児の移動(流れ藻、船舶に絡まって等)
が容易い事は十分考えられますから、どこかで環境が合っていれば、定着し始めてもおかしくないと思います。
私自身も、ここでこれが?という個体をいくつも見ましたから、書物に紹介されていない産地は多いと思います。

結局、ビワカワニナ亜属は、数グループでまとめられる可能性がありそうですが、
究極は、変異の多いものを全てハベカワニナとしてそのform、または逆に全てに名前がついて何十種に増えたりと。
しかしせっかく色々な和名が付いているので、仮にこの先、多くがハベカワニナに統一されたとしましても、
型の名前としては残って欲しいと個人的には思っています。

「琵琶湖淀川淡水貝類」は当時としては貴重な書籍でしたね。しかしこれまた絶版ですし、
一般では、琵琶湖研究所の記載論文まで参照されないと思いますので、ピーシーズ図鑑に頼らざるを得ないと思います。
あとは知名度が低いですが、「びわ湖の底生動物Ⅰ」くらいでしょうか。
しかしながら、「日本産淡水貝類図鑑」は価格も安く、この分野のカラー図鑑は存在自体が貴重で有り難いのは確かです。
私も特にこの図鑑を批判してどうのというつもりは全くありませんので。

ここ最近は、ホタル事業の関連で、カワニナについて調べられる人も多いと思います。
異産地カワニナの放流に伴う遺伝子汚染、外来種混入と拡散を防ぐ観点からも、よりたくさんの情報とともに、
正確な情報が周知されていくと良いですね。
長々と失礼しました。これからも宜しくお願い致します。

maiky - 2010/06/21 (月) 13:03 edit

イボちゃんゲットおめでとうございます!
もうすでにゲット済みとは…爆
離島シリーズ頑張っちゃいましょう!!

西村 メール - 2010/06/21 (月) 23:54 edit

コメントありがとうございます。

つっちぃさん。オオウラの胎殻数の少なさは気になりますが、雌しか同定に使えないのと、
タテヒダの小型の個体で、サンプル数を増やせば、同じような個体はでるかもなぁと。
オオウラあたりで捕れたらオオウラ。それ以外はタテヒダという同定をするしかない
のが現状かなと思います。オオウラカワニナの記事でも書きましたが、ボートの往来や
河口域の浚渫土砂の移動などで、分布拡大は記載論文前から起こっていると思いますね。
「びわ湖の底生動物」でタテヒダは離島にはいないことになっていますが、
S先生によると離島にもタテヒダがいるそうです。離島シリーズの種は近縁のタテヒダ系
と思われるため、もしかすると人為的な影響で、離島にタテヒダが入ったかもしれません。
それとも調査方法に問題があっていないことになっているのかもしれません。

ハベ系の諸シノニムはチクブカワニナ方式で名前が残ると良いかなと思っています。
「日本産淡水貝類図鑑1」は悪い本では全く無く、これまで貝に興味がなかった方が、
関心を持ったのは間違いないと思いますし、とても大きな功績だと思います。
だからこそ、より良いものにしたく、突っ込みたくなるわけで、つまらない図鑑は、
突っ込むことすらなく、あぁそんな図鑑もあるよね。で終ってしまいます。

放流問題はその通りだと思います。私に放流問題を話させると長いので割愛します(笑)。
ホタル関係で堅○で捕れた、カゴメやタテヒダが、川に投棄されているようですが、
小川では長く生きられないし、いつになったら、止めるんだろうと思っています。
先日テレビで、そのカゴメを外来種として扱っていて、素晴らしいと思いました。
私は真夏までは、琵琶湖へ行く機会が多いため、よかったらフィールドでも、
お会いしたらお話にお付き合い下さいませ。今後とも宜しくお願いします。

maikyさん。お陰さまで採集していました(汗)。色々とお世話になりました。
離島シリーズはお金が厳しいので、泳いで行くしかないかも(無理)。
カゴメ(粒無)はまだ探しているため、またよかったらお付き合いくださいませ。

つっちぃ - 2010/06/24 (木) 03:17 edit

こんばんは。
オオウラで採れたらオオウラ、確かにそうかもしれませんね。
これはやってはいけない事でしょうけれども、
ミジンニナ系統、ゴマガイ系統の産地による同定を連想してしまいました。

カワニナの放流は、環境活動や環境学習のテーマとして扱いやすく、観光とも関係してくるので、
メディアにもアピールしやすいのでしょうかね。
そうですか、カゴメまで放流されていましたか。何でもありですね。
同じ種、近い種なら良いという安易な考えや、外来種と知らずに放流されたり、
自然環境をとりもどす活動という表題に隠されて、
気付かないうちに逆の事をしてしまうケースは、今後もたくさん出てきそうですね。

こちらこそ、宜しくお願いいたします。
それでは、失礼します。

西村 メール - 2010/06/25 (金) 23:30 edit

つっちぃさん。コメントありがとうございます。
日本産カワニナ類全種捕れたら、まとめに放流問題も書こうかなと思っていました。
魚の放流者には何度か会って話をしてきましたが、放流の諸問題を説明しても、
それ以前の問題として「放流したい」という気持ちが強いため、
考え直してくれる方はほとんどいません。もっと多くの方が放流問題を知ってもらい、
放流に注意する方が増え、法令が出来たり、じわじわと減ることを期待しています。

この本物のイボカワニナですが、ネットで検索しまくっていたら、
「タテヒダカワニナ」と「Semisulcospira decipiens」で2枚だけ写真が出ました。
両方ともタテヒダと誤同定していて、その気持ちわかるよと思いました(笑)。
明日はこのイボを捕ったところへ行く予定です。捕れるかなぁ。

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