2020年7月19日は琵琶湖でさわだ君と彼女さんと西村の3人でカワニナ採集しました。
この時期は夜明けから湖岸に、バサーとコイサー(鯉釣り人)が多くいて、
昼になれば湖上は、ウインドサーフィンや水上バイク(一部は水上暴走族)がいるので、
静かな夜に潜りたいのだけど、さわだ君の宗教上の都合で、夜明けからになりました。
04時30分に待ち合わせ。すでに駐車場所が密。湖岸にはバサーがいて潜れませんでした。
1箇所目。別の場所。早朝で水温24℃くらい。私はウエットスーツ。さわだ君はドライスーツ。
彼女さんは岸で見守ります。あのカワニナを狙いました。水深3mくらいでごろごろいたので、
私が捕らなくても、さわだ君がたくさん捕れるだろうと思って、カワニナ捕りよりも、
ニセマツカサガイ琵琶湖型を狙うも、ぜんぜんいない。何とか1個体を捕りました。
2箇所目。過去に琵琶湖流入河川で、変なハベカワニナを捕った場所へ案内するも、
コイサーがいて近付けず。やっばり。その近くでヤマトカワニナなどを拾って終了。
3箇所目。水上暴走族が我が物顔で、乱暴な運転をしています。沖にはウインドサーフィン。
潜るのをためらいましたが、どこに潜るって相談すると、私とさわだ君は優柔不断で、
決まらないので、腹を決めました。私は今年初の海パンマン、さわだ君はドライスーツ。
海パンマンは潜りやすいけど、湖底は冷たくてキツイ。沖へ250mほど泳いだら、
水上暴走族が近づいて来て、お互いの目が合い、私の周りを円を描くように走行して、
絶対にわざとだと思いますが、波を起こして、泳ぎ難くして去って行きました。
おそらく俺の走行の邪魔だから、ここで泳ぐな轢くぞ、という警告なのだと思います。
湖底もホソマキカワニナばかりで、セタシジミが捕れたくらいだったので終了。
4箇所目。さわだ君が行きたがっていた場所。私はバサーが多くて無理だと言ったけど…。
現地へ着くとバサーが多くて泳げる隙間がない。遠くの方にも立ち込んでいる。やっぱり。
7月中旬~8月下旬は深夜でも、バスボートがいるので、昼間なんてとても無理なのです。
駐車場から少し離れた、崖を下ったところならば、入れるというので2人で潜ることに。
崖を下ったらバサーがいました。それも4人も。均等に並んでルアーを投げています。
私はルアーが届かない位置まで沖へ泳ぎ、横へ移動してバサーのいない場所へ。
水深4~5mへ潜るまでに、水温躍層が3つあって、上層約24℃、中層約22℃、下層約20℃。
上層でも冷たさを感じているので、下層では凍えて長くいられない、辛い場所でした。
ここは海パンマンにはまだ早かった感じです。潜りやすくても長く潜っていられない。
ニセマツカサガイ琵琶湖型と思ったのですが、何か細長いのでタテボシガイかと思い直し、
同定を試みているうちに、じっとしていて寒くなってきたので、捨ててしまった個体です。
後にヒラガマノセガイかもと思って、Y氏に伺いましたが、ニセ琵琶だろうと(同定感謝)。
今年こそはヒラガマノセガイ(オトコタテボシガイ)を捕りたいです。
動画です https://youtu.be/gR8YfVOVPbU
ここでさわだ君らとは解散。お疲れ様でした。彼女さんが岸で見守ってくれるだけで、
何だか安心感があって良かったです。さわだ君の採集力の高さは毎度驚かされます。
話は変わって↓カワニナ亜属のミトコンと核を調べた論文が、先週出版されていました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ece3.6523
数年前から風聞で、大まかなことは知っていましたが、面白い内容です。
チリメンカワニナ(キタノカワニナ型)でも触れていますので、よかったら読んで下さい。
カワニナ亜属は定説ではカワニナ、チリメンカワニナ、クロダカワニナの3種。
クロダカワニナはヤマトカワニナ亜属だと思われるので省きます。
つるつるのカワニナ、ひだひだのチリメナカワニナ。縦肋の有無で識別されていました。
しかし、縦肋の有無は系統とは必ずしも合致せず、形態的にも中間型がいることから、
この識別方法は使えない可能性が高くなりました。そして今回の論文を参考にすると、
L1~4は地理的分布によって分かれています。これを新種記載済みの種に合わせると、
L1はキタノカワニナ、L2はカワニナ、L3は?、L4はチリメンカワニナかハコネカワニナ。
こんな感じになりますが、キタノカワニナは模式産地の函館周辺が調べられていないため、
何とも言えないところはありますが、この傾向から見てL1はキタノカワニナでしょう。
カワニナは模式産地の奄美大島が調べられているため、L2はカワニナで間違いないかな。
L3は韓国産で私はよくわからないです。たぶん記載されていそうな想像はしています。
L4は横浜のチリメンカワニナ1876年、芦ノ湖のハコネカワニナ1883年で、難しいところです。
チリメンカワニナA型とB型は、おそらくA型はキタノカワニナ、B型はカワニナかなと。
但し、これらは模式標本のDNAが調べられたわけではありません。
これまで日本産カワニナ属の既知種で、模式標本のDNAが調べられたのは皆無です。
貝殻しか残っていないので、調べることができません。この先も無理でしょう。
分類学的には模式標本が唯一無二の基準で、整理には形態的な精査が必要になってきます。
敵の支城を全て制圧し(遺伝的なアプローチなどで外堀を埋める)、本城を味方の兵で、
取り囲んでも(99%確実)、敵将(模式標本)を討たないと完了(分類学的な整理)しません。
逆に言えば支城制圧などせずとも、敵将さえ討てば良いとも言えます。変な比喩ですが…。
今はカワニナ亜属の分類学的な整理は、支城制圧がある程度は済んだ感じでしょうね。
最終的に敵将を討つのは、センスのある形態屋さんです。その出現を待ちましょう。
さわだ - 2020/07/23 (木) 15:09 edit
今回もカワニナ採集でお世話になり、彼女とも楽しくお話ししていただいて、ありがとうございました。
河川のカワニナの面白い論文が出たことで、河川の方の分類も整理したいなという思いが強くなりましたが、まずは例のカワニナ数種を含め、琵琶湖の固有種からですね…。
今後ともよろしくお願いします。