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2016年2月7日は兵庫県へ淡水魚採集のついでに、Yさん、なかたりさん、オイカワムツさんに、
無理を言って前から行きたかった、クロダカワニナの模式産地で採集させてもらいました(感謝)。
採集日は1月21日に決まりましたが、2月2日にこの系統論文を知り、別所でも採集しました。

まず、クロダカワニナの模式産地はどこなのか? 記載論文1961には、
「Type locality: Yakamishin, JōTō-chō, Takigun, Hyōgo Pref.」
「模式産地:兵庫県多紀郡城東町八上新. 八上新部落の北側の裏を流れる小川では...」
また、Davis1969によると、共記載者の波部先生に1965年に捕らせてもらったようで、
その場所は「Yakamishin」ではなく「Hioki」という地名が登場します。

これはどういうことなのか。その答えが篠山市のサイトにあります。
「旧八上新の大字名を「日置」と名称変更」です。すなわち、
1961年の兵庫県多紀郡城東町八上新は、2016年では兵庫県篠山市日置に地名が変更。

Davis1969は採集場所を、詳細に記しています。
篠山線(現在は国道372号)から近く、主要道から約100ヤード(約91m)。
この道路は1964年の航空写真を見ると一目瞭然で、八上新部落もわかります。

整理します。
篠山市日置の集落の北側で、国道372号に近く、主要道から約91m離れた場所にある小川。
そんな場所はここしか考えられないので、ここで採集しました。ここまでの積雪は想定外(笑)。

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カワニナが多く、クロダが混じる程度でした。Davis1969もカワニナが一緒にいたとあります。
水は綺麗ですが、コンクリート護岸で、カワニナ相手にニッチ争いも、頑張っている感じです。

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先にリンクした系統論文では、クロダを「35°4′N, 135°15′E」で採集しています。
この場所は篠山市八上内の畑です。これは北緯と東経の秒が記されていないため、
やや粗い精度です。水路と372号(173は不明)の交差するところのようですから、
論文2016の推定水路で採集しました。大きく外していることはないと思っています。
日置は「35°4′10.58N, 135°16′44.68E」で、東経が15と16で異なります。

勝手な想像ですが、採集者はクロダの模式産地へ行こうとしたが、
「城東町八上新」が見つからない。しかし、西八上、八上下、八上内、八上上があるため、
八上新もこのあたりだろうと推定し、中間的位置である八上内で採集したのかな。
八上新は城東村(町)ですが、西八上、八上下、八上内、八上上は八上村なため、
市町村単位で異なります。前述した模式産地からは直線距離で約3kmほど離れています。

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短時間で狭い範囲の採集ですが、チリメン(おそらくB型)以外は見つかりませんでした。
また、Davis1969に記されているカワニナが一緒に捕れませんでした。
系統論文のFigure 4.のAC、AD、AE、AFが、クロダとして写真が掲載されています。
しかし、私の同定では、ACチリメン、ADクロダ、AEチリメン、AFカワニナです。
胎殻と一緒に写る個体とACはそっくりです。これはどう見てもクロダではありません。
AD以外がクロダではない根拠は、殻底肋が弱く、肋間が狭く、本数も多過ぎます。

この系統論文は他にもいくつか誤同定と思われる写真があります。
F-Kイボは、FとHはイボだと思われるが、怪しい個体が多く、Kはホソマキぽい。
Nカゴメは、イボぽい。
N-Pヤマグチは、ヤマトですね。これはヤマグチはヤマトのシノニムと見なしたのかな。
R-Wカワニナは、S-Vは縦肋があって、チリメンぽさもあります。特にUはチリメン。
X-ABチリメンは、YとAAはカワニナぽさもあります。
AG-AIナカセコは、AGとAHはカワニナかチリメン(肋の目立たない型)。

写真未掲載の個体も、こうした高い割合で、きっと誤同定していることでしょう。
最初の正しい同定という段階で、大きく間違えているので、素晴らしい研究でも、
この系統論文の信憑性は低く、残念なことに、使えないデータということになります。
ただ、カワニナ属の場合は、誤同定である根拠は、親殻と胎殻もセットで確認しないと、
はっきりしたことは言えず、論文には胎殻が載っておらず、何ともすっきりしません。
そのため誤ったデータも生き続けるかも。カワニナ属はこういう誤同定ものが多い…。

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難しい話を続けたので、ここで軽い話(笑)。日置と八上内で採集した合間の道です。
雪の重みで竹が一部折れています。奥の方は道幅の2/3ほどを覆ってしまっています。
これを見たとき、西村家の家紋だ。と思いました。それが左上です。
故人の祖父が教えてくれたのは、竹が雪の重みで折れたところを飛ぶスズメだそうです。
スズメはこの先で飛んでいました。検索するとこんなものがヒットして驚きました。
ネットって何でもありなんだなと改めて思いました。316-西村-雪持ち切竹に雀ですね。

その隣に316-後藤とあります。ここは後藤宮子さんのお住まいです。
後藤宮子さんは「山溪カラー名鑑日本の淡水魚」でアジメドジョウもご執筆されています。
30年間も毎日2回も登り落ち漁で魚を採集し、ほとんどを標本にしていた有名な方です。
私は数回お話させて頂きました。その隣に同じ採集が好きな、西村家があるいう不思議さ。
魚にとっては魚雷でも撃ち込んで、破壊したい集落でしょうね。あぁクロダの話が埋もれる(笑)。

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