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タテジワカワニナの真模式産地の記事では、詳しい場所を記しませんでした。
カワニナ図鑑の改定と同時に、日本産カワニナ属全種の模式産地を更新し、
タテジワ真模式産地も明かしたので、ここで改めて触れておきたいと思います。

初めてのタテジワ採集は2010年5月29日です。当時の手掛かりは2つの文献でした。
「びわ湖の底生動物」には2箇所の分布地点があり、そこが鵜川と北船木(E)でした。
「日本産淡水貝類図鑑1」には「縦肋が次体層より上にみられる」とありました。
鵜川ではタテジワとしても良い個体は捕れましたが、北船木(E)はハベ(現イボ)によく似て、
中間型じゃないかと思う微妙な個体ばかり。その後に北船木(E)で何度も採集しましたが、
鵜川のような個体は捕れず。2011年1月23日に Watanabe & Nishino (1995) を初読。

模式産地が北船木(E)だと知りました。もう10回は採集したでしょうか。見つかりません。
中途半端な納得できない個体はたくさんいます。模式産地は鵜川と間違えているかもとさえ、
思い始めてきました。さわだ君がタテジワなどのサンプリングをするようになると、
これは模式産地で本物のトポタイプを探さないと、中途半端な個体をタテジワとして使い、
誤同定であれば他との比較で、使えないデータになるかもと、危惧し始めました。


模式産地は北船木で間違いないとして、正確な場所はどこなのかです。
Watanabe & Nishino (1995) の地図はオオウラカワニナとクロカワニナでも触れましたが、
不正確な手書きです。「びわ湖の底生動物Ⅰ」や「びわ湖の底生動物Ⅲ」と照らし合わせ、
北船木(E)より僅かに北西かもと思いました。採集された1986年8月13日の地図や航空写真は、
見つかりませんでしたが、約10年前の1974~1978年の航空写真はありました。
現在とは車が走れそうな道、駐車場所は異なっていました。大まかに北船木(C・D・E)です。
Eでは散々やっていないことは分かっています。その他にA・B・F・Gも見つかっていません。

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そうなると可能性としてはCかDです。Cを2023年3月と6月にやって微妙な個体ばかり。
最後に残るのはDだけです。2023年8月に探したらホロタイプに似た個体がいたのです。
しかもEへ近付くほどに形態が変化して、中途半端な個体ばかりになりました。
とても狭い範囲だけど多く見られ、昔の道からも入りやすく、駐車しやすそうな場所でした。
琵琶湖のカワニナ類は、100m違えば別の場所の認識でしたが、今回もその状況でした。
タテジワの真模式産地は、Dの黄色く囲った浅場で、間違いないと判断しました。

翌年にUeno et al. (2024)が出版され、S. rugosa (タテジワ)を見た時、嫌な予感がしました。
サンプルの採集場所を調べると、北船木(E)だったのです。正確にはその水域の岸(青ピン)。
そしてサンプルの写真を見て、あーっやっぱりと思いました。私ならイボとする個体だ。
しかしイボとは系統が異なるようです。ホロタイプに近い真タテジワは調べられていないが、
私ならイボとする個体とは同一種なのだろうか。その場合に形態差は変異幅と見なせる。
それとも北船木にはイボ、イホ?、イボ×イボ?、タテジワ(未解析)の4ついるのだろうか。

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ホロタイプ画像は、さわだ君から頂いたもので、快く使わせてくれました(感謝)。
左2つがホロタイプと似たタテジワ、右2つが先の論文のイボ?疑惑と似た個体です。
イボ?は膨らみがやや強く、螺層角がやや広く、殻底肋がやや多く、左2つとは異なる。
次体層より上の縦肋も顆粒状で数も多くて違う。Watanabe & Nishino (1995) の、
パラタイプ2個体の画像とも全然違う。形態の記述や検索表も当てはまらない箇所が多い。

北船木(D)ではタテジワとイボ?が見られ、別種関係だとするならばやはり4ついるのかも。
さわだ君は2013年8月に一緒に捕った個体を持ち帰り、タテジワを研究中のようですが、
もう1年半くらい経ったのと、Ueno et al. (2024) の出版から、この問題に言及してみました。
他にもタテジワはクロカワニナやトキタマカワニナそっくりな個体がいる地域があります。
琵琶湖のカワニナ類は、近年にさわだ君を中心に、優秀な研究者・協力者のご尽力によって、
ほぼ解明されてきましたが、タテジワは最後に残った課題なのかもしれません。

タテジワの真模式産地を見つけるまで、13年も掛かりましたが、こうしてブログに公開して、
また引用もされずに、たくさん捕られて利用だけされるの、何かもったいない気もします。
タテジワのホロタイプは、貝殻しか残っていないため、遺伝子解析は出来ません。
これがタテジワの遺伝子ですと基準を作るならば、酷似個体を解析するべきだとは思います。
その一助にこの記事がなるのであれば、カワニナ好きとしては良かったと思いましょう。