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2018年3月に新種記載された化石5種を実見することが、2018年5月12日の主目的です。
さわだ君が記載された松岡館長にアポを取ってくれて、11時にお会いすることが出来ました。

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記載論文の写真と実物は、殻口の位置などの違いによって、ナカムライが僅かに細く、
シュードムルチグラノーサのモコモコ感が弱いなど、若干違うようにも見えましたが、
基本的には想像範囲内でした。現生種も展示されていましたが、イボはカゴメでした。
松岡館長の解説を拝聴し、いくつか形態差異などについて質問をさせて頂いて、
このページも見て頂き、私見もぶつけましたが、やはり全て現生種に酷似すると思います。

仮に5種を新種と認めて従う場合は、現生の酷似個体をどう扱うか問題が残ります。
現生にはいないと主張しても、酷似個体とどう違うかを、説明する必要があるでしょう。
化石種と思われていた種が、現生していたとする場合は、現生種が5種増えることになります。
現在でも混乱しているのに、中間型もいますから、ますます混乱することでしょう。

カワニナ類の世界では「若干違う=同種」で、その違いは変異幅と呼びます。
記載論文にある変異幅だけではなく、産地や個体数を増やすと、実際はもっと広いと分かります。
それが実際の変異幅で、化石の専門家である松岡館長に、現生種をもっと知って調べるべき、
というのは違うと思います。限られた時間と予算で、異分野の奥底まで知ることは不可能です。

化石種と同形態のものが、本当に現生種に存在しないか、照合する作業において、
形態のプロやスペシャリストに巡り合えなかったことは、とても残念だと思いました。
そこで私は、まだアマでありながら、スペシャリストのさわだ君を、プッシュしておきました。
これで化石種と現生種という異分野の接点において、慎重さと正確性が向上した、
新展開が期待できると、今から楽しみです。私もサンプリング等で、協力出来たら幸いです。

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松岡館長にお願いして、貴重なパラタイプも、拝見させて頂きました。厳重な管理でした。
ホロタイプとパラタイプの一部を拝見した感想は、5種全てシノニムだろうと思いました。
但し、現生種の祖先かどうかは判然としません。例えば形態的にナカムライは、
ホソマキと同種と見なせることは出来ても、ナカムライは絶滅していて、別系統から新たに、
ナカムライに酷似した形態が誕生し、それをホソマキとして認識する可能性もあるためです。

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この場合に類縁関係はないが、平行進化や収斂進化などと呼ばれる現象によって、
ホソマキ祖先種が、たまたま絶滅したナカムライに、そっくりに進化して現生する場合、
分子系統学的には異種でしょうが、形態重視の分類学的には同種ということになります。
そのため形態差異が変異幅に収まる場合は、祖先は無視してシノニムと言えます。
希にホロタイプ(及びパラタイプ)が全てで、それと違えば別種だという意見もありますが、
カワニナ類の場合は、実際の変異幅が広くて、実態とかけ離れていると思います。

気が付けば2時間20分も話していました。長くなってすみません。勉強になりました。
松岡館長は人望が厚く、相反する意見にも耳を傾ける、とても良い方だと思いました。
更に貴重な標本を、快く拝見させて頂き、長時間にわたって、意見交換させて頂きまして、
本当に感謝しています。豊橋市自然史博物館では5月27日まで展示され、
その後は金庫で厳重保管されるそうですので、ご興味のある方はぜひ行ってみて下さい。
松岡館長とさわだ君に感謝です。今後ともよろしくお願いいたします。