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昔から気になっていることがあります。魚をとるだけの行為をどう発言・表記するかです。
基本的に以下はデジタル大辞泉を引用して考察します。


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一般に魚を「とる」は、「捕る」と「採る」を使う人が多いです。

「捕る(とる)」
・動物などをつかまえる。「セミを―・る」「銛 (もり) で魚を―・る」

「採る(とる)」
・多くの中から選んで、決める。採用したり、選択したりする。「気に入った品を―・る」「新卒者を―・る」
・選んで、どちらかのほうに決める。「可否を―・る」「南に針路を―・る」
・みちびき入れる。「明かりを―・る窓」

魚を「とる」は「採る」よりは「捕る」の方が適切で、
「さかなとり」は「魚採り」よりは「魚捕り」の方が適切だと思われます。


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一般に魚を捕る行為の二字熟語は、「採集」と「採取」を使う人が多いです。

「採集(さいしゅう)」
・標本・資料などにするために、取って集めること。「民俗語彙を―する」「植物―」

「採取(さいしゅ)」
・研究・調査などのために、とること。「指紋を―する」
・鉱物や植物、また、貝などを選び取ること。「砂利を―する」

標本集めは「採集」で、あまり動かないものを取るのは「採取」が適切なようです。
どちらも魚を捕るだけの行為では、適切な言葉ではないようです。
例えば写真のカスミサンショウウオは、魚を狙ってたまたま捕れ、写真を撮ってから、
その後に逃がしました。この場合にカスミサンショウウオを採集や採取したは不適です。


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魚を捕るだけの行為を表記する場合は、格好つけずに「魚捕り」で良いと思うのですが、
大人になると体裁を気にします。それでは何が適切なのか。2つ提案します。

「捕獲(ほかく)」
・動物などを捕らえること。いけどること。「鹿を―する」

「採捕(さいほ)」
・自然界の動植物をとること。「ウナギの稚魚を―して養殖する」

どちらも捕るだけの行為による熟語です。但し、捕獲は生け捕る意味を含むため、
やすで刺して死んでしまった個体は、捕獲とは言えないかもしれません。
捕獲は死んでいないという条件が付くため、採捕の方が使い勝手が良いかもしれません。
そう思ったら「突具」は、魚介を突き刺して採捕する道具。やす・もりなど。とあり、
死んでしまう恐れが極めて高い捕り方でも、採捕という熟語は使われるようです。

大辞林第三版によると「採捕」は「動物などを,採取したり生け捕り」とあり、
採捕は生け捕りの意味も含むのと、前述で不適とした採取を使っています。
これはどの辞典に従うかだけではなく、同じ辞典自体もぶれがあるように思えます。

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結論的に魚を「とる」は「捕る」が適切だと思います。
「捕るだけの行為」の熟語は、はっきり適切や不適と言えるものは見つかりませんが、
「採捕」が最も無難かもしれません。採集・採取・捕獲も誤用ではないと思います。
それでも「とる」が「捕る」であれば、採集=採る+集めるであって、捕集ではないです。
採取=採る+取るは随分と意味が離れます。捕獲=捕る+獲るは近い意味だと思えます。
あえて言えば、採捕>捕獲>採集>採取の順に、適切から遠ざかっている感じもします。

こうした混乱は昆虫採集や鉱物採取からではないかと想像しています。
昆虫採集は標本用に採り集め、鉱物採取は選び取り、持ち帰るという行為が発生します。
魚を捕ることを趣味で行う人たちは、捕った魚を必ずしも持ち帰りません。
採集や採取に含まれる持ち帰るという意味が、魚を捕るだけの行為には不適なのでしょう。
「漁獲(ぎょかく)」は水産物(魚介・海藻)に限定されますが、両生類などは含まれませんし、
漁は生業的な意味合いが強く、持ち帰って売りますし、趣味者には適合しないと思います。

採集や採取という熟語は止めて、採捕や捕獲の方がより良いように思えますが、
「採集に行きたいな」や「採取に行きたいな」は口を衝いて出ても、
「採捕に行きたいな」や「捕獲に行きたいな」は一般的に使われていません。
さいしゅうやさいしゅという言い易さと耳心地の良さ、程よい小難しい言葉感が、
利用率を高めているのかもしれません。体裁用の熟語なんてそんなものなのでしょう。
さいしゅうは最終と同じ発音で、最終回、最終手段、最終兵器と何か格好いいのもあるかも。

私はこれらを踏まえた上で、カスミサンショウウオを採捕しました。とは書かず、
これからもカスミサンショウウオを採集したと書くことでしょう。でも採取は使わないかな。