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簡易同定
古いカワニナ科の担名タイプは(親)殻だけだった。この場合は表面の殻比較だけなため、生体でも識別することが出来た。 後に胎殻が識別形質として重要視され、現在は歯舌なども含まれるように変わった。 胎殻は成熟した雌を茹でて保有していた場合に限られ、歯舌は軟体部から取り出して顕微鏡を使う必要がある。 この2つの識別形質は生きた状態では確認できない。しかし、生体で種類を知りたい人は多い。 そこで当ページでは分布・水深・親殻だけで簡易同定を試みている。 但し、胎殻や歯舌を確認しないために正判別率は下がる。
全国に分布して殻底肋が通常8本以上で弱い
カワニナ種群3種の形態差異は不明。
分布図
のL1(青)は
キタノカワニナ
、 L2(赤)は
カワニナ
、L4(紫)は
カワニナ種群L4
と推定。 関東で捕れたら
キタノカワニナ
、静岡県で捕れたら
カワニナ種群L4
、 九州で捕れたら
カワニナ
。採集水域が不明な場合は「カワニナ種群」が適当。
静岡県〜岡山県に分布して殻底肋が通常5〜7本で弱い
親殻のみでの同定は極めて難しい。 静岡県で捕れたら
サキガケカワニナ
、 三重県で捕れたら
クロダカワニナ
、 鳥取県で捕れたら
タジマカワニナ
。 これら3種で採集水域が不明な場合は「クロダカワニナ種群」が適当。 岡山県は
ユメカワニナ
と
クロダカワニナ
が同所的に生息するため、胎殻などの確認が必要。
琵琶湖北湖の島(多景島・沖の白石・磯沖暗岩)の固有種
多景島と沖の白石の周辺で、黒色の大顆粒は
コンペイトウカワニナ
。 多景島で螺層角が狭く(細長い〜普通)螺静脈のあるのは
タケシマカワニナ
。 沖の白石で螺層角が狭く(細長い〜普通)小顆粒のは
シライシカワニナ
。 磯沖暗岩で螺層角が広く(太短い)彫刻の弱いのは
アンガンカワニナ
。
瀬田川・宇治川・淀川の固有種
宇治川で螺層角が極端に広い(極太短い)のは
ナカセコカワニナ
、 螺層角が普通は
ハベカワニナ
。 瀬田川の
ナカセコカワニナ
は宇治川の
ハベカワニナ
に似る。 淀川は識別困難なほど似るため、胎殻などの確認が必要。
琵琶湖北湖北岸と竹生島の固有種
琵琶湖北湖北岸や竹生島で、黒色の大顆粒は
チクブカワニナ
、 縦肋が顕著で螺層角が普通は
モリカワニナ
。 典型的な
シノビカワニナ
は螺層角が普通で体層が弱く膨らんで大型、
オオウラカワニナ
は螺層角が狭く(細長い)て体層は細くて中型。 非典型的な個体は親殻形態だけでの識別は不可能に近く、胎殻なども典型的ではない場合は同定困難。 また、
シノビカワニナ
は北岸と竹生島で形態が異なる。
琵琶湖の深場(水深3〜20m)に生息
琵琶湖の水深3〜6mで次体層の小顆粒がやや縦肋化して20本程度は
アザイカワニナ
、 水深4〜20mで次体層の小顆粒が縦肋化せず26本程度は
カゴメカワニナ
。
琵琶湖の浅場(水深0〜3m)に生息
琵琶湖の岸沿いの岩石に、黒色の中顆粒は
ヤマトカワニナ
、縦肋化していたら
トキタマカワニナ
、 北湖北岸で平滑(痕跡程度の顆粒)は
クロカワニナ
。 但し、余呉湖の
クロカワニナ
は
ヤマトカワニナ
や
イボカワニナ
に似る。 北湖西岸で砂と石が混ざる場所に、次体層より上方に縦肋があれば
タテジワカワニナ
。
琵琶湖の広域に生息
琵琶湖に広く見られて、生息環境に傾向があまり無く、形態のみで識別するのは非常に難しい。
イボカワニナ
は他の3種よりも螺層角が広く(通常は普通)、体層の膨らみが強い。 典型的な個体では、次体層に小顆粒が5〜7個程度並び、弱く縦肋化している。非典型的な個体は平滑から強い縦肋まである。
タテヒダカワニナ
、
ケショウカワニナ
、
サザナミカワニナ
は螺層角が狭く(細長い)、体層の膨らみが弱い。 親殻と胎殻のどちらも多様で、非典型的な割合が多いため、そうした個体は同定困難。 この3種に
オオウラカワニナ
と
シノビカワニナ
を加えたタテヒダ近似種群は、 正確(9割以上の精度)に識別できる人はいないと思われる。
その他
ヒダカワニナ種群
は利根川水系の一部にしか見られず、 同所的に
キタノカワニナ
と
カワニナ
は見られるが、殻底肋が3〜6本程度と少ないことで識別可能。 琵琶湖の
カワニナ属の一種A
と
カワニナ属の一種B
は未発表種なために言及しないが、 湖底山という局所的な分布のために、通常の同定で考慮する必要はない。
全30種一覧
都道府県の分布
北海道
青森県
岩手県
秋田県
宮城県
山形県
福島県
栃木県
群馬県
茨城県
埼玉県
東京都
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神奈川県
山梨県
長野県
新潟県
富山県
石川県
福井県
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愛知県
岐阜県
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滋賀県
京都府
大阪府
兵庫県
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岡山県
広島県
山口県
徳島県
香川県
愛媛県
高知県
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
沖縄県
琵琶湖疏水は人為的に琵琶湖から京都市へ引かれた水路で在来はいない。ホタルの餌としてカワニナ種群は放流が盛んで、全国に移入定着していると思われる。 また、未定着ながら琵琶湖産(岐阜市の
カゴメカワニナ
など)が放流されて、一時的に生息していた場所は複数あると思われる。
●変異幅が広い
ヤマトカワニナ
、
チクブカワニナ
、
コンペイトウカワニナ
の識別形質を単純化すると、殻口のうねりの程度(小・中・大)にある。 典型は同定可だが中間型も少なくなく、種の変異幅が広いために、重複形質は避けられない。希に非典型や奇形も見られる。 そのために分布を重視することになる。例えば中うねりが多景島で見つかれば、それは
チクブカワニナ
ではない。 多景島・沖の白石に分布する
コンペイトウカワニナ
とするしかない。カワニナ科の同定は分布が形態を凌駕する。
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