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和名タテヒダカワニナ
学名Semisulcospira (Biwamelania) decipiens (Westerlund, 1883)
分類カワニナ科 カワニナ属 ヤマトカワニナ亜属 タテヒダカワニナ種
写真
分布琵琶湖。瀬田川。
環境岩礁〜砂底に多い。砂底での生息密度は低く、 ホソマキカワニナに変わる傾向がある。
食感が良く、不味くはない。
形態 殻底肋2〜5本、次体層の縦肋数9〜20本。体層の膨らみが弱く、殻口がやや小さく、螺層角が狭い。 縦肋は著しい襞状で、体層か次体層より上方へ見られる。
備考 本種と大浦だけに分布するオオウラカワニナはよく似ている。 相違点を端的に示せば、次体層の縦肋数がオオウラカワニナ9〜13本で本種14〜20本。 写真Ob016001は琵琶湖北湖(北岸)産(大浦ではない)で、 次体層の縦肋数は左から11、14、13、13、10、15、13、10、12本。 写真Ob049001は大浦から大きく離れた、 琵琶湖北湖(近江八幡市)産で、次体層の縦肋数9本。 このような傾向は他の産地でも見られ、本種の分布域にオオウラカワニナが混在するというよりは、 本種の変異幅にオオウラカワニナが含まれると考えられる。

オオウラカワニナと同様に、 本種とホソマキカワニナはよく似ている。 相違点を端的に示せば、本種には縦肋があり、ホソマキカワニナには縦肋がなく平滑。 本種の縦肋は個体による変異幅が広く、強いものから弱いものまで見られる。 その延長上に縦肋が著しい本種をオオウラカワニナと記載し、 縦肋がほぼないものをホソマキカワニナと記載している疑いがある。 そのためオオウラカワニナホソマキカワニナには、 本種との漸移型が多く出現する。

縦肋が著しいオオウラカワニナ型は岩礁から礫湖岸に多く、 縦肋がほぼないホソマキカワニナ型は砂底に多いため、 本種との違いは環境変異や生態型と推定できる。 但し、形態的変異が極めて多様なため、タテヒダ系3種の他に隠蔽種が含まれている可能性はあるだろう。

文献1文献9は 本種・オオウラカワニナホソマキカワニナのタテヒダ系3種とも、 竹生島周辺での分布を記録していないが、本種の生息密度は低くない。 文献1発行(1991年)以後に移植等で定着したことも考えられる。 本種とオオウラカワニナの漸移型が多い。

近江八幡市・沖島・伊崎磯周辺の岩礁では、モリカワニナとの区別が難しい個体が多い。 これはタテヒダカワニナ×ヤマトカワニナ(結節型)や、 未記載種の疑いもある。こうした個体の同定は不可能だが、本図鑑では暫定的に本種とした。

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