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和名ハベカワニナ
学名Semisulcospira (Biwamelania) habei Davis, 1969
分類カワニナ科 カワニナ属 ヤマトカワニナ亜属 ハベカワニナ種
写真
分布琵琶湖淀川水系。 余呉湖にも見られるが、飯浦送水隧道からの分布拡大か、人為的な移入の疑いもある。
環境岩石〜泥底まで傾向がない。水草上にも見られる。 琵琶湖流入河川の河口付近や内湖など、有機物の堆積した場所で、チリメンカワニナと一緒に見られることも多い。 そうした場所で見られるヤマトカワニナ亜属は、本種とホソマキカワニナくらいである。
食感は軟らかく、青臭さがある。
形態 殻底肋2〜6本、次体層の縦肋数13〜17本(琵琶湖疏水・宇治川・淀川産はより多い)、体層の膨らみが強く、殻口が大きく、螺層角が広い。殻高は最大50mmを超える。 生態型によるものか、形態が極めて多様である。
備考 文献4では、 宇治川(宇治市)産を Semisulcospira habei として新種記載すると同時に、 胎殻の大きさと形状が異なるとして、琵琶湖南湖(草津市)産をその亜種 S. h. yamaguchi として記載した。 ハベカワニナ S. h. habei は宇治川に、 ヤマグチカワニナ S. h. yamaguchi は琵琶湖と瀬田川に分布するとしたが、 琵琶湖淀川水系という移動可能な同水系に、2亜種が存在することは考え難く、その後に亜種としては扱われなくなった。

ヤマグチカワニナの模式標本の写真はイボカワニナに酷似するため、 ヤマグチカワニナはイボカワニナのシノニムの疑いがある。 また、従基準標本の写真6はホソマキカワニナに似ている。 琵琶湖に多く見られる文献9が本種とするものは、 未記載種の可能性もあるが、本図鑑ではそれらも含めて扱っている。

ハベカワニナ類とも言える近縁種は、ナカセコカワニナナンゴウカワニナクロカワニナフトマキカワニナタテジワカワニナタケシマカワニナシライシカワニナそして本種の8種ある。 このうち、記載が最も早いのはナカセコカワニナであるが、 基礎形態は本種と思われるため、本図鑑ではこの8種をハベカワニナ類とする。 本種を除く7種は、本種との中間型、移行型、漸移型のような曖昧な形態を示す個体が見られ、 大きく捉えれば本種の変異幅に納まると思われる。

琵琶湖疏水・宇治川・淀川産はシライシカワニナに良く似る個体が多く、 淀川産の次体層の縦肋数は多いもので25本。琵琶湖産の本種やシライシカワニナよりも多い。 文献2で本種とされている写真は、 この集団であると思われるが、これまで殆どが本種やイボカワニナとして誤同定されている。

写真Hb162001が採集された小河川の脇には、 浚渫土砂と思われるものが積上げられ、そこに含まれる琵琶湖固有の死んだ貝類から、琵琶湖で掘削したと想像できた。 土砂の一部は小河川へ崩れ落ち、この個体は極端に肋が削られていることから、浚渫土砂からの生き延びた個体だと思われる。 こうした浚渫土砂による非意図的な移入は、同じ琵琶湖水系内であっても、様々な問題性が考えられるため、何らかの対策は必要であろう。

2011年5月22日に芦ノ湖(神奈川県)で多数の本種を確認した。 移入経路は不明だが、ゲンジボタルの餌として放流し、一時的に見られるとは考え難く、定着していると思われる。 次体層の縦肋数は多いもので25本。琵琶湖淀川水系産よりも形態的な多様性が低く、細長いものが多い。

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