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Aさんの淡水魚水槽 |
No. | 名称 | 備考 |
1 | 水槽 | 60cm(60×29.5×36) |
2 | ライト | 2灯(夜に数時間点灯) |
3 | 上部フィルター | 濾材はウールマットと活性炭 |
4 | 水槽の蓋 | |
5 | 水温計 | |
6 | 観賞魚用ネット | |
7 | 砂 | 細かいものを高さ3cm程度 |
8 | 飾り | 石、陶器、沈木、水草 |
9 | 餌 | 1種類の配合飼料を1日1回 |
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●治療より予防
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淡水魚飼育にヒーターなんていらない。餌なんて食えばいい。ほんとですか?
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淡水魚飼育と言っても目的や価値観が人それぞれ異なるため、
こう飼うべきというのは飼育が趣味である限り存在しません。
しかし病気による障害や死魚だけは誰しも回避したいのではないでしょうか。
それをここでは取り上げました。病気が起きてから対処では手遅れの場合も多く、
予防こそ全てだと思いますが、
完全には防げないため基本的な対処方法も記しました。私の経験に基づいたより良い方法を記したつもりですが、
科学的な検証のない思い込みも含みます。
私はAさん(上表)の状況を見ると年間数度の病気は避けられず、それを治療する道具もないため死魚が出ると思います。
設備面の品質は別としてNo.1〜8は問題ないですが、気になるのはNo.9と病気予防に必要なNo.10がないことです。
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●病気は薬で必ず治るわけではない
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エロモナス病になりました!どうしたら治りますか?まず治りません。
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病気になったら観賞魚用治療薬を買って来て、水槽へ入れておけば治るという認識は捨てて下さい。
薬浴しても簡単に治りませんし、病気によっては治療方法が確立されていないものもあります。
薬に書かれた効能通りに治らないのは虚偽ではなく、
病気は魚の体調が良くないときに起きやすく、追い討ちをかけるように病気が状態を悪化させます。
魚の状態によっては薬で病原体を駆除しても、回復する前に死ぬことがあるのです。
薬に弱い魚もいるため治療薬も使い方次第では劇薬になります。
病気が目に見えて確認できる時は既に手遅れの場合も多く、
病気の治療方法よりも予防方法を知っておくことが肝心です。
病気は専門家が顕微鏡で病原体を見て判断するものですが、
普通は病原体からではなく、症状からこの病気だろうと決め付けて治療へ入ります。
素人判断では誤診する可能性も高いことを認識する必要があります。
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●長生きだけでいい
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寿命なんてありません。飼育者がコントロールできます。
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未成魚以上であれば死なない程度の僅かな餌を与え、
酸素を少なめにして水温は5〜15℃と低く保ち、水流などは作らず運動させないようにします。
そうすると代謝が著しく低下して冬眠のような状態になり、普通に飼育するよりは長生きします(盆栽飼育とも言われる)。
弊害として活発に泳がなくなり、餌を常に要求してきます。
これらと逆にすれば元気で生き生きとしますが短命になります。
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病原体による病気が発生 | YES→ | 全て水換えと掃除 |
↓NO | | |
糞や残餌などの浮遊や沈殿が目立つ 水温20℃以上で3ヶ月以上掃除していない 水温20℃未満で5ヶ月以上掃除していない | YES→ | 7〜8割の水換えと掃除 |
↓NO | | |
魚の警戒心が高い 魚の調子が悪い 突然死した魚が出た 水が白濁している 泡切れが悪い 水温20℃以上で1ヶ月以上水換えしていない 水温20℃未満で3ヶ月以上水換えしていない | YES→ | 4〜6割の水換え |
↓NO | | |
水換えから5日以上で暇がある | YES→ | 2〜3割の水換え |
↓NO | | |
水換え不要 | | |
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●まず水換え
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何でもまずは水換えです。頭で考える前に水換えです。水換えです!
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病気予防は「まず水換え」が基本です。
「濾過装置は水換えをサボるための道具に過ぎない」と仰る方もいるほどで、
魚の状態が悪くなったら頭で色々と考える前にまず水換えして下さい。
例えると部屋の空気が悪くなり高価な空気清浄機(フィルター)を設置し、
同じ空気を長期に渡って巡回させるより、窓を空けて新鮮な空気と入れ替え(水換え)した方が早いのです。
活性炭を使い水質調整剤を買い揃えて調整するよりも、適切に水換えすれば終わりです。
2週間に1回など定期的な水換えに拘る必要はありません。
水温が高いと生物が活性化されて短期間に行わないといけませんが、
水温が低いと水換えを長期間しなくても問題が起き難いです。
水温や状態に応じて水換えすることが望ましく、
水換えの翌日に白濁していたり、魚の状態が悪いのであれば、昨日水換えしたばかりでも再び行う方が無難です。
フィルターはゴミを引っ掛けて水を綺麗にする道具ではなく、
濾過バクテリアに棲みかを提供して、糞や残餌などを分解してもらう場所ですので、
フィルターが目詰まりするほどでなければ、掃除をし過ぎてはいけません。
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●適切な水換えとは
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カルキ抜きも大事ですが雑菌に注意しないと逆効果になることも。
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水換えの水は淡水魚にミネラルウォーターを使ったり、pH調整剤を入れたりする必要はなく、
水温急変による病気を起こさないよう気をつけるだけで通常は問題ありません。
水道水のカルキが気になる方はカルキ抜きを使うと良いでしょう。水道水は地域や季節によってカルキの濃度が異なります。
多少の入れ過ぎでも害が少ない還元剤のハイポ(チオ硫酸ナトリウム)が良いと思います。
私は水槽立上げ時以外はカルキ抜きを入れませんが、特に問題は起きていないため過度に気にする必要はありません。
水道水をバケツに入れて1日屋外に置けばカルキが抜けると言われています。
私もかつては行っていましたが、直ちに水換えしたいときは不便でした。
知人から水換えしても状態が良くならないと聞いて見に行きました。
知人はバケツに水道水を入れて、室内の日陰に何日も置いたものを使い、
水面にはホコリが浮いて、バケツの内側は雑菌と思われるぬめりがありました。
カルキを気にする余りそれ以上に問題な水を作っていたのです。
私は直ちに60cm水槽の水を半分に減らし、蛇口にホースを繋ぎ、
それを水槽へ入れて、水道水を15分ほどかけて少しずつ入れました。
その後に知人は水道水の直入方法を続けたようですが、問題は起きていないそうです。
カルキ抜きも入れていない水道水ですが、こちらの方がよほど適切な水換えになるのです。
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●薄い塩水で飼育する
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近年は上の水槽で病原体による病気はないですね。濾過は水作だけですよ。
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塩分0.1〜0.3%の薄い塩水で飼育すると病気が随分と減ります。
塩類による殺菌効果とミネラルを魚が鰓から吸収し、免疫力が高まり体調もよくなるためです。
「塩分」とは水に溶けた塩類の濃度のことで「塩分濃度」は頭痛が痛いと同じ誤用です。
淡水(真水)に棲む魚を薄い塩水にするなんて、とんでもないと思ってしまいますが、今のところ死んだ魚はいません。
イワナが棲むような上流域の水にも塩分は含まれています。
汽水域には多くの純淡水魚が見られ、塩分2〜2.5%(海水3.4%)の2箇所で、コイの群れを見たことがあるほどです。
ホトケドジョウは湧水や冷水のイメージの強い魚ですが、夏に冷却をせず塩分0.1〜0.3%程度で2年以上も飼育できました。
死因はおそらく老衰で病気らしい病気は1度もかかりませんでした。
薄い塩水にすると水換え頻度を減らしても問題が起き難くなります。
塩水は上部フィルターのモーターやコンセントなどに飛び散ると、
徐々に塩がこびり付いて最悪は火事の恐れもあるため、日頃から注意して塩を拭き取って下さい。
薄い塩水でスジエビ、カワニナ、マツカサガイ、オオカナダモなどは問題ありませんでした。
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●ヒーターが必要な理由
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ヒーターは冬の加温よりも春と秋の保温に使うんです。
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淡水魚は氷が張らない程度であれば生きて行けるため、
温帯地域にお住まいの方ならば加温は不要ですが、病気の予防のために保温は必要です。
春や秋になると毎年のように病気が発生することはないでしょうか。
その原因は水温の変動にあります。自然界は水温が緩やかに変化するのに対して、
体積が小さな水槽ほど保温力が弱いため、気温で敏感に反応して上下します。
「気象庁」で名古屋の平均気温を例に見ると、
12〜3月(冬)と5〜9月(夏)はその差が5℃未満ですが、3〜4月(春)には6.1℃上昇し9〜10月(秋)には5.8℃下降します。
また最高と最低の気温差は3〜5月(春)と11月(秋)に差が大きく、
2003年4月7日は最高(21.1)最低(4.7)でその差は16.4℃もあります。
夏と冬にこれほど開きがあることは希です。病気はこの春と秋に発生しやすいのです。
この時期は昼夜で10〜15℃程度の気温差が生じることもあり、
水温が朝5℃で昼に20℃まで上がり、夜に10℃近く下がることも考えられます。
こうした水温差が数日も続けば体調を崩して病気に掛かりやすくなります。
白点病などは典型的な水温変動から生じる病気だと思います。
それを予防し病気を治療するためにも観賞魚用ヒーターは必要なのです。
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●水温調節型
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ヒーターは大きく分けて25℃前後の固定型(1000〜2500円)と調節型(2500〜5000円)があります。
固定型は安価ですが淡水魚に25℃も上げる必要はなく電気代も余計に掛かり、
病気の治療には28〜30℃に加温しますがそれもできません。
そのためヒーターを買う場合は調節型にしないと不便です。
固定型しかない場合は年中水槽に入れておいたほうが、水温変動が抑えられるため病気の予防になりますが、
真冬でも婚姻色が見られるなど季節感は失われます。
調節型の主流は電子サーモスタットで、その中でも15℃など低めに設定できるタイプがおすすめです。
春産卵のタナゴ類は22〜23℃が最も産卵しやすいと記憶していますが、
こうした条件もヒーターがあれば可能ですし、
繁殖目的で飼育されている方は日照時間とヒーターで調節して年中産卵させられるそうです。
大型魚や遊泳力の低い魚はヒーター火傷から守るためヒーターカバーが必要です。
ヒーターカバーの隙間に魚が入り込まないよう斜めに設置します。
遊泳力の高い小魚はヒーターカバーがなくてもまず火傷することはありません。
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●設定水温
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水温の変動を抑えるためには気温に応じたヒーターの設定水温が求められます。
気温は北海道から沖縄まで異なるため一概に言えませんが、
温帯地域であれば冬10〜15℃、春秋15〜20℃、夏20〜25℃くらいを下限とします。
夏は水温が高くなりヒーターがオンになることはほとんどなくなりますが、
9月に入ると冷雨によって急激に気温が下がって病気が発生しやすくなります。
不要な期間は1年のうち1〜2ヶ月だけですので、年間を通して入れたままにしておいた方が無難です。
水槽が室内の場合は冬に人が暖房器具で室温を23℃くらいまで上げ、
スイッチを切って外出すれば10℃くらいまで下がります。
つられて水槽の水温も変動するため、それらも配慮して設定する必要があります。
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●どうしてもヒーターが使えない
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餌はヒーター無しなら朝から昼。ヒーター有りなら夕方から夜も可。
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ヒーターが使えない場合は、出来るだけ水量が多い水槽(例えば90cm水槽)にして、水温の変動を抑えると良いです。
室内よりも屋外は水温変動が小さく、写真のような薄氷と積雪でも、ミナミメダカなどは元気です。
魚は変温動物なため、水温に応じた量の餌を食べます。例えば20℃→3g、23℃→5g、26℃→7gです。
朝20℃で3gの餌を食べ、昼へ向かって水温上昇すると、問題なく消化ができます。
それとは逆に、夕方23℃で5gの餌を食べ、夜へ向かって水温低下すると、消化することができません。
この差が大きいと消化不良で体調を崩し、最悪は転覆病などで死にます。
ヒーターがあれば水温を上げ、生理機能を活性化させ、助けることが出来ます。
しかし、ヒーターが使えない環境では、餌は水温上昇前(朝から昼)に与え、水温低下前(夕方から夜)は与えない方が良いです。
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