ヌマムツ |
臀鰭分岐軟条数9 |
カワムツ |
臀鰭分岐軟条数10 |
ヌマムツ Candidia sieboldii (Temminck and Schlegel, 1846) と、
カワムツ Candidia temminckii (Temminck and Schlegel, 1846) は、1846年に新種記載されました。
それから数十年来は両種をカワムツとして、一緒くたに扱われて来ましたが、
1969年に「日本のコイ科魚類」で、A(琵琶湖産)とB(宮崎県産)の写真を示し、両者の顕著な差異を指摘されました。
1989年にカワムツのA型(湖沼型)とB型(河川型)が発表され、2003年にA型をnumamutsu、B型をkawamutsuとして新和名が提唱されました。
2008年には従来のオイカワ属Zaccoから新属(和属名なし)Nipponocyprisへ変更されました。
2013年にNipponocyprisはカワムツ属Candidiaとされました。
その両種を臀鰭分岐軟条数と側線上方横列鱗数から同定します。
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臀鰭分岐軟条数 |
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臀鰭分岐軟条数9本ヌマムツ、10本カワムツ。通常はここだけ見れば幼魚も同定できます。
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臀鰭不分岐軟条数は枝分かれしていない軟条を根元で数えます。
ヌマムツとカワムツの両種とも3本です。
臀鰭分岐軟条数は枝分かれした軟条を根元で数えます。
最後の軟条が接している場合は2本ではなく1本と数えます。
臀鰭を指でつまんで開くと、簡単に数えられます。
他の特徴と違って重ならず、両者を判別する場合は決定的な特徴です。
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側線上方横列鱗数 |
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側線上方横列鱗数13枚以上ヌマムツ、12枚以下カワムツ。写真の角度によっては鱗が見え辛くて難しい。
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両種は臀鰭分岐軟条数を数えると判別できますが、
横から撮影した写真の場合は、往々に臀鰭がたたんで数えられません。
その場合は側線上方横列鱗数を使います。
背鰭起部(背鰭の前)から後下方へ、側線鱗(側線のある鱗)の手前までの鱗を数えます。
他の鱗数による特徴として、側線鱗数カワムツ45〜55枚、ヌマムツ53〜65枚があります。
但し、53〜55枚は判別できず、文献によって数え方が二通りあり、
鱗を50枚も数えることは骨が折れるため、鱗数からの同定は側線上方横列鱗数の方が良いでしょう。
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傾向的な特徴から簡易同定 |
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「背鰭前縁 vs. 胸鰭前縁か腹鰭前縁」の赤色の濃さは、採集地で即座に簡易同定するのに役立ちます。
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決定的な特徴として、臀鰭分岐軟条数と側線上方横列鱗数を、確認して同定とするべきですが、1個体ずつ数えるのは面倒です。
傾向的な特徴として、「背鰭前縁 vs. 胸鰭前縁か腹鰭前縁」の赤色の濃さ(面積ではない)が、正判別率が高いです。
特に背鰭前縁の赤色は、非常に濃い場合はカワムツ、非常に薄い場合はヌマムツ、と判断しても良いと思います。
但し、こうした色での識別は、あくまでも簡易同定です。
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色だけで同定は出来ない |
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臀鰭分岐軟条数 | 9 | 10 |
オイカワ | | |
カワムツ | | |
ヌマムツ | | |
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側線上方横列鱗数 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 |
オイカワ | | | | | | | | |
カワムツ | | | | | | | | |
ヌマムツ | | | | | | | | |
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側線鱗数 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60 | 61 | 62 | 63 | 64 | 65 |
オイカワ | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
カワムツ | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
ヌマムツ | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | |
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図鑑やインターネットで、胸鰭前縁と腹鰭前縁が赤色のヌマムツ、
黄色のカワムツとする記述をよく目にしますが、無色なヌマムツや薄赤色のカワムツも存在します。色同定は限界があります。
良く似たオイカワは臀鰭分岐軟条数9本、側線上方横列鱗数8〜10枚で、ヌマムツとカワムツとは識別できます。
しかし、希ながらヌマムツ×オイカワ、カワムツ×オイカワも見つかるため、交雑個体の存在も鑑みる必要はあります。
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本来は分布しない東日本で、ヌマムツとカワムツが確認されています。
これは外来魚であるため、釣れても無邪気に「カワムツ君ゲット!!」などと、浮かれてはいられません。
自然分布域であっても、在来かどうか疑わしいですし、
既に在来集団と移入集団が交配し、遺伝子汚染が進んでいるかもしれません。
こうした悪因の全ては言わずもがな放流です。
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