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カジカ種群とは、カジカ、カジカ属の一種(カジカ中卵型)、ウツセミカジカの3種を指します。
分類には定説がなく、混迷していますが、遺伝的には3種という説が、有力視されています。
3種は形態的に酷似する上に、生活史で形態が変化し、同定は非常に難しいです。
そこで現状では、分布や傾向的な特徴から、総合的に判断するしかありません。
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日本産カジカ属6種2個体群(7種類)
カジカ科 Cottidae
└ カジカ属 Cottus
├ カンキョウカジカ Cottus hangiongensis Mori, 1930
├ エゾハナカジカ Cottus amblystomopsis Schmidt, 1904
├ ハナカジカ Cottus nozawae Snyder, 1911
├ カジカ(カジカ大卵型) Cottus pollux Günther, 1873
├ 標準和名なし(カジカ中卵型) Cottus sp.
└ ウツセミカジカ Cottus reinii Hilgendort, 1879
├ ウツセミカジカ(カジカ湖沼型) Cottus reinii LB Hilgendort, 1879
└ ウツセミカジカ(カジカ小卵型) Cottus reinii SE Hilgendort, 1879
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科名 属名 種小名 個体群名 命名者名 命名年
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生活史 | 両側回遊性 (川→海→川) | 河川陸封性 (川) | 湖沼陸封性 (琵琶湖) |
カジカ | | | |
カジカ中卵型 | | | |
ウツセミカジカ | | | |
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生息水域 | 上流 | 中流 | 下流 | 海 | 湖沼 |
カジカ | | | | | |
カジカ中卵型 | | | | | |
ウツセミカジカ | | | | | |
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胸鰭条数 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
カジカ | | | | | | | |
カジカ中卵型 | | | | | | | |
ウツセミカジカ | | | | | | | |
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2007年にカマキリ(アユカケ)は、カジカ属からRheopresbe属へ変更され、それを支持しました。
カジカ中卵型には標準和名がないため、従来通りの型名を使用しました。
カジカ湖沼型とカジカ小卵型は、個体群名として残しましたが、亜種程度も分化していない、同種だと判断しています。
胸鰭条数は重複幅が広いですが、最頻値の黒塗りを参考にすると、ある程度は使える計数形質だと思います(カジカ中卵型は、河川陸封性14本、両側回遊性15本)。
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カジカ種群の分布
カジカ
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カジカ中卵型
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ウツセミカジカ
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青森県〜兵庫県の本州山間部。
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北海道南部〜九州北部の日本海側流入河川、兵庫県以西の本州、四国(愛媛県)、九州北部。
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青森県〜和歌山県の太平洋側流入河川、四国(徳島県)、琵琶湖。移入:秋田県、新潟県、石川県、栃木県(中禅寺湖)、神奈川県(芦ノ湖)。
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カジカ種群の大まかな分布を示しました。
ウツセミカジカの琵琶湖水域と中禅寺湖(移入)はカジカ湖沼型で、それ以外はカジカ小卵型の分布(移入含む)です。分布は同定に重要な情報になります。
しかし、ウツセミカジカの移入が複数水域で見つかっており、地図に示した地域以外でも、生息している可能性はあります。
各地でカジカ種群の放流が行われており、地域独自の個体群が失われつつあるのは、非常に問題だと思います。
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傾向的な特徴を合わせ技で一本 |
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胸鰭軟条の数え方はこちらの画像を参考にして下さい。カジカ湖沼型とカジカ小卵型の違いは、ヤマメとサクラマスの関係に近いです。
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分布、生息水域、胸鰭条数から、総合的に同定します。
それ以外の特徴として、尾柄高と頭長の比、頭部と第一背鰭下に暗色帯の有無など、いくつか知られていますが、そうした報告の多くは、
カジカ中卵型をカジカとしたり、カジカ中卵型とウツセミカジカを同種としたり、既報の形態的な情報は、取扱いに注意するべきものが多いです。
尾鰭基底部の横帯は分かり易く、参考になる形質だと思われます。
カジカ(細く薄い)、カジカ中卵型(中間的)、ウツセミカジカ(太く濃い)。
但し、例外も多く、分布、生息水域、胸鰭条数を調べ、それでも判断できない場合に参考として下さい。
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参考・引用文献 ※不備がある場合は改めますのでお手数ですがご連絡ください。
□ 日本産魚類検索 全種の同定 第三版 中坊徹次編 東海大学出版会 2013.2.26
□ 広島県におけるカジカ種群(硬骨魚類網スズキ目カジカ科)の形態と分布 吉郷英範 比和科学博物館研究報告 第51号 2010.2
□ 2011年度日本魚類学会講演要旨 日本魚類学会 2011.9.29
□ 糸井史朗 多摩川で回復したカジカ個体群の系統分類に関する研究 財団法人 とうきゅう環境浄化財団 2008
□ Shedko, S.V. and I.L. Miroshnichenko, (2007) Phylogenetic relationships of sculpin Cottus volki Taranetz, 1933 (Scorpaeniformes, Cottidae) according to the results of analysis of control region in mitochondrial DNA. J. Ichthyol. 47(1):21-25.
□ Tsukagoshi H., Sakai K., Yamamoto K. and Goto A. (2013) Non-indigenous amphidromous sculpin Cottus pollux small-egg type (Teleostei: Cottidae) detected in rivers entering the Sea of Japan off Honshu Island, Japan. Ichthyol. Res., 60:93-97.
□ Yokoyama R. and Yamamoto S. (2012) Freshwater sculpin dwelling in Lake Chuzenji, Nikko, Kanto District, Japan, is identified as Utsusemikajika, Cottus reinii, unintentionally introduced from Lake Biwa. Ichthyol Res., 59:389-393.
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