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■ トウヨシノボリの混迷 ■
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日本産ヨシノボリ属
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日本産魚類検索 第三版 | 当サイト内での整理 |
ハゼ科
└ ヨシノボリ属 17+未掲載種類
├ ゴクラクハゼ種
├ オオヨシノボリ種
├ ヒラヨシノボリ種
├ オガサワラヨシノボリ種
├ ルリヨシノボリ種
├ アヤヨシノボリ種
├ カワヨシノボリ種
├ ビワヨシノボリ種
├ トウカイヨシノボリ種
├ シマヨシノボリ種
├ クロヨシノボリ種
├ キバラヨシノボリ種
├ アオバラヨシノボリ種
├ クロダハゼ種
├ カズサヨシノボリ種
├ オウミヨシノボリ種
├ シマヒレヨシノボリ種
└ 未掲載種類
※未掲載種類は1989(〜2013)年にトウヨシノボリと称された種のうち、
ビワヨシノボリ種、トウカイヨシノボリ種、クロダハゼ種、カズサヨシノボリ種、
オウミヨシノボリ種、シマヒレヨシノボリ種を除いた種類。存在の有無も含めて不明。
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ゴビオネルス科(ハゼ科) Gobionellinae(Gobiidae)
└ ヨシノボリ属 Rhinogobius 14種14亜種・集団・型(23種類)
├ ゴクラクハゼ種 Rhinogobius similis Gill, 1859
├ オオヨシノボリ種 Rhinogobius fluviatilis Tanaka, 1925
├ ヒラヨシノボリ種 Rhinogobius sp. DL
├ オガサワラヨシノボリ種 Rhinogobius ogasawaraensis Suzuki, Chen and Senou, 2012("2011")
├ ルリヨシノボリ種 Rhinogobius mizunoi Suzuki, Shibukawa and Aizawa, 2017
├ アヤヨシノボリ種 Rhinogobius sp. MO
├ カワヨシノボリ種 Rhinogobius flumineus (Mizuno, 1960)
├ ビワヨシノボリ種 Rhinogobius biwaensis Takahashi and Okazaki, 2017
├ ウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ)種 Rhinogobius sp. TO
├ シマヨシノボリ種 Rhinogobius nagoyae Jordan and Seale, 1906
│├ 九州以北集団(亜種) Rhinogobius nagoyae nagoyae Jordan and Seale, 1906
│└ 琉球列島集団(亜種) Rhinogobius nagoyae formosanus Oshima, 1919
├ クロヨシノボリ種Rhinogobius brunneus (Temminck and Schlegel, 1845)
│├ 屋久島以北集団Rhinogobius brunneus North of Yakushima Group (Temminck and Schlegel, 1845)
│└ 琉球列島集団 Rhinogobius brunneus Ryukyu Islands Group (Temminck and Schlegel, 1845)
├ キバラヨシノボリ種 Rhinogobius sp. YB
│├ 奄美集団 Rhinogobius sp. YB Amami Group
│├ 沖縄島集団 Rhinogobius sp. YB Okinawa Island Group
│└ 八重山集団 Rhinogobius sp. YB Yaeyama Group
├ アオバラヨシノボリ種 Rhinogobius sp. BB
│├ 東シナ海側集団 Rhinogobius sp. BB The East China Sea Group
│└ 太平洋側集団 Rhinogobius sp. BB The Pacific Ocean Group
└ クロダハゼ種 Rhinogobius kurodai (Tanaka, 1908)
├ クロダハゼ型 Rhinogobius kurodai f. kurodai (Tanaka, 1908)
├ カズサヨシノボリ型 Rhinogobius kurodai f. KZ (Tanaka, 1908)
├ オウミヨシノボリ型 Rhinogobius kurodai f. OM (Tanaka, 1908)
├ シマヒレヨシノボリ型 Rhinogobius kurodai f. BF (Tanaka, 1908)
└ 不明型 Rhinogobius kurodai f. unknown (Tanaka, 1908)
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科名 属名 種小名 亜種小名 個体群名 命名者名 命名年
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2013年に「日本産魚類検索 全種の同定 第三版 (以下、魚類検索3)」が出版され、日本産ヨシノボリ属は左枠のように分類されました。
それを受けて当サイト内は右枠のように変更しました。大きく異なるところはクロダハゼ種です。
カズサヨシノボリ種、オウミヨシノボリ種、シマヒレヨシノボリ種、未掲載種類は、
クロダハゼ種の型(少なくとも種ではなく亜種以下)と見なしました。
そのため魚類検索3のクロダハゼ種と、当サイトのクロダハゼ種は異なります。
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亜種以下を種にしたので混乱
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1989年 | 諸型 | 魚類検索3 | 当サイト内 |
トウヨシノボリ種 | 偽橙色型(房総型を含む)、偽橙色型 | クロダハゼ種 | クロダハゼ類(クロダハゼ型) | クロダハゼ種 (クロダハゼ類) |
房総型 | カズサヨシノボリ種 | クロダハゼ類(カズサヨシノボリ型) |
湖沼型、橙色型、琵琶トウ、琵琶湖型 | オウミヨシノボリ種 | クロダハゼ類(オウミヨシノボリ型) |
キバラトウショク、縞鰭型、池沼型 | シマヒレヨシノボリ種 | クロダハゼ類(シマヒレヨシノボリ型) |
宍道湖型 | 未掲載種類(トウヨシ ノボリとも解釈可能) | クロダハゼ類(不明型) |
黒色大型B、南九州系、西九州型 |
型名なし、他地域(北日本など) |
ウシヨシノボリ | トウカイヨシノボリ種 | ウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ)種 |
- | ビワヨシノボリ種 |
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1989年に「日本の淡水魚」でトウヨシノボリと新称が与えられた種には、
後にビワヨシノボリ種とトウカイヨシノボリ種が含まれていることが判り、
この2種は形態・遺伝的の両方で、他種と区別するべきものです。
問題はこの2種を除いたトウヨシノボリ種です。魚類検索3ではこれを細分化し、
クロダハゼ種、カズサヨシノボリ種、オウミヨシノボリ種、シマヒレヨシノボリ種、未掲載種類としています。
しかし、これらは遺伝的に見れば、種を分かつほど分化しておらず、亜種以下(型・地域個体群・品種・変種)ということは、過去の複数の文献で明らかです。
また、交雑することが知られ、ある程度のまとまった地域に分布(同所的分布は移入の疑い)するため、独立種とするには疑問です。
形態的にも酷似し、曖昧な基準で分けられており、同種と考えられます。
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混迷の根源
2010年に亜種以下と思われる縞鰭型を、
シマヒレヨシノボリ(独立種)としたことが、混迷の根源だと思われます。
これによって他の諸型とのバランスを取るため、同程度の分化しかしていない、
偽橙色型をクロダハゼ種、房総型をカズサヨシノボリ種、橙色型をオウミヨシノボリ種とし、
残った地域は整理し切れず、さじを投げて、掲載すら出来なかったのでしょう。
誤りを正当化するため、誤りに沿った基準で分類した結果が、魚類検索3に現れているのだと思います。
但し、形態・遺伝的に全く同じではなく、僅かな違いは認められるため、
亜種以下の関係とは考えられます。
これらから当サイト内ではクロダハゼ種、カズサヨシノボリ種、オウミヨシノボリ種、シマヒレヨシノボリ種、未掲載種類は、
1種(クロダハゼ種)だけと見なし、他は申訳程度に型として表記することにしました。
また、型同定が困難な場合や、型間交雑している疑いのある場合は、不明型?とすることにしました。
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トウヨシノボリという和名
和名クロダハゼは1913年に与えられ、1989年にトウヨシノボリとされました。
和名の先取優先を考慮すれば、クロダハゼの方が先で、トウヨシノボリという和名は、消滅することになります。
但し、元々は琵琶湖産(正確には流入河川の安曇川?)の橙色型をトウヨシノボリとしているため、魚類検索3で新称とされたオウミヨシノボリとは同一と思われます。
そのため和名オウミヨシノボリには問題もありますが、
トウヨシノボリ(1989年)には、同じ琵琶湖に生息するビワヨシノボリが含まれている疑いが高く、
それとは切り離して定義付ける必要はあるとも言えます。
ちなみに、1989年にシマヨシノボリとされた種は、
それ以前の1913年にナゴヤハゼと付けられたようですが、魚類検索3ではシマヨシノボリとされています。
また「ヨシノボリ」はクロヨシノボリ(屋久島以北集団)を指すため、ヨシノボリ属の総称としては、
「ヨシノボリ類」が適当だと思われます。
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これらを私たちに置き換えると
ニンゲン種の日本人を、ニホンジン種にしたことで、外国人とのバランスを取るため、
カンコクジン種、チュウゴクジン種、ロシアジン種などを作り、
その他の地域は分からないので、掲載しなかったという整理です。
形態・遺伝的に全く同じではないが、無意味な細分化です。
それを受けて当サイトとしては、ニンゲン種だけで良いと判断し、他は型と見なしました。
そしてニンゲン種という和名の以前に付けられていた、ヒト種を使うことにしたのが現況です。
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「日本産魚類検索 第三版」に従い同定をするという事 |
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魚類検索3の分布には、「琵琶湖流入河川」とあっても、「琵琶湖」とは書いてありません。
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琵琶湖流入河川で捕れたからという理由で、魚類検索3に従い「オウミヨシノボリ」とされる方がおられると思います。
同定レベルは非常に高度ですが、本当に従っているでしょうか。
下の検索表で「魚類検索3に従い同定」してみて下さい。「腹鰭第5軟条は最初に」の検索項目からつまずくと思います。
ヨシノボリ属の腹鰭軟条の多くは、引っくり返すと腹側に張り付き、透明に近い色で、確認が難しいです。
標本にして顕微鏡での確認が必要だと思います。
ようするに、魚類検索3に従うと、生体をオウミヨシノボリと回答や表記することは、ほぼ無理に近いのです。
それではどうすれば良いか。魚類検索3のオウミヨシノボリだとは思うが、
途中の検索項目は省いて、従っていないため「オウミヨシノボリ?」とするのが適当だと思います。
当サイト内ではクロダハゼ類(オウミヨシノボリ型)としていますが、
腹鰭各部等を確認していない個体は、クロダハゼ類(オウミヨシノボリ型?)とし、断定的な表記は避けています。
これはクロダハゼという種で、型まで言及すれば、オウミヨシノボリ型であろうという意味です。
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★川でトウヨシノボリ(1989年) Rhinogobius sp. OR ぽい個体を捕った(検索スタート)
├ビワヨシノボリ or ウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ)である
│├ビワヨシノボリ Rhinogobius sp. BW
│└和名の選択
│ ├トウカイヨシノボリ Rhinogobius sp. TO
│ └ウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ) Rhinogobius sp. TO
└ビワヨシノボリやウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ)ではない
├●従来の同定(1種) ←混迷しない、亜種以下を切り捨てドライで的確、不勉強と思われる
│└和名の選択
│ ├トウヨシノボリ Rhinogobius kurodai (Tanaka, 1908)
│ └クロダハゼ Rhinogobius kurodai (Tanaka, 1908)
├●魚類検索3に従い同定(4種+未掲載種類) ←混迷する、難解で問題が多い、無難と思われる
│└腹鰭第5軟条は最初に
│ ├わからない or 3分岐
│ │└未同定 or 未掲載種類
│ ├4分岐以上になる
│ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ └2分岐する
│ └頭部背面の鱗域は眼の後端付近に
│ ├わからない
│ │└未同定 or 未掲載種類
│ ├達する
│ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ └達しない
│ └腹鰭第5軟条の第1分岐と第2分岐の間は
│ ├わからない or 普通
│ │└未同定 or 未掲載種類
│ ├長い
│ │└分布
│ │ ├わからない or それ以外
│ │ │└未同定 or 未掲載種類
│ │ ├沖縄島
│ │ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ │ └四国・本州
│ │ └第一背鰭棘条
│ │ ├わからない
│ │ │└未同定 or 未掲載種類
│ │ ├明瞭な黒色斑がある
│ │ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ │ └黒色斑はないか不明瞭
│ │ └性別
│ │ ├わからない
│ │ │└尾鰭に点列
│ │ │ ├不明瞭(ない)
│ │ │ │└クロダハゼ Rhinogobius kurodai (Tanaka, 1908)
│ │ │ └ある or わからない
│ │ │ └腹鰭前方鱗(要染色、皮下に埋没している)*A
│ │ │ ├わからない
│ │ │ │└未同定 or 未掲載種類
│ │ │ ├ある
│ │ │ │└クロダハゼ Rhinogobius kurodai (Tanaka, 1908)
│ │ │ └ない
│ │ │ └シマヒレヨシノボリ Rhinogobius sp. BF
│ │ ├雌
│ │ │└*Aへ
│ │ └雄
│ │ └尾鰭に点列
│ │ ├ある or わからない
│ │ │└尾鰭
│ │ │ ├わからない or それ以外
│ │ │ │└*Aへ
│ │ │ ├白色に縁取られ、その内側に赤褐色帯がある
│ │ │ │└クロダハゼ Rhinogobius kurodai (Tanaka, 1908)
│ │ │ └軟条下部は赤色
│ │ │ └シマヒレヨシノボリ Rhinogobius sp. BF
│ │ └不明瞭(ない)
│ │ └クロダハゼ Rhinogobius kurodai (Tanaka, 1908)
│ └短い
│ └尾鰭中央に点列
│ ├わからない
│ │└第2背鰭と尾鰭
│ │ ├幅広い黄色で縁取られる
│ │ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ │ ├わからない
│ │ │└分布*D
│ │ │ ├わからない
│ │ │ │└未同定 or 未掲載種類
│ │ │ ├琉球列島
│ │ │ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ │ │ └四国、本州
│ │ │ └背鰭前方鱗*C
│ │ │ ├ない(あっても2〜3枚)
│ │ │ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ │ │ ├わからない
│ │ │ │└性別
│ │ │ │ ├雌
│ │ │ │ │└未同定 or 未掲載種類
│ │ │ │ └雄
│ │ │ │ └第1背鰭
│ │ │ │ ├わからない
│ │ │ │ │└尾鰭基底に橙色斑
│ │ │ │ │ ├わからない
│ │ │ │ │ │└未同定 or 未掲載種類
│ │ │ │ │ ├ない
│ │ │ │ │ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ │ │ │ │ └ある
│ │ │ │ │ └頬に赤色小斑点*B
│ │ │ │ │ ├ない
│ │ │ │ │ │└カズサヨシノボリ Rhinogobius sp. KZ
│ │ │ │ │ ├ある
│ │ │ │ │ │└オウミヨシノボリ Rhinogobius sp. OM
│ │ │ │ │ └わからない
│ │ │ │ │ └性別
│ │ │ │ │ ├雌
│ │ │ │ │ │└体側後半の暗色斑
│ │ │ │ │ │ ├不定形で斑紋の間も不明瞭
│ │ │ │ │ │ │└カズサヨシノボリ Rhinogobius sp. KZ
│ │ │ │ │ │ ├明瞭で斑紋の間も明瞭
│ │ │ │ │ │ │└オウミヨシノボリ Rhinogobius sp. OM
│ │ │ │ │ │ └わからない
│ │ │ │ │ │ └尾柄部の鱗外縁*E ←正誤表で削除された
│ │ │ │ │ │ ├円い
│ │ │ │ │ │ │└カズサヨシノボリ Rhinogobius sp. KZ
│ │ │ │ │ │ ├角ばる(丸いのもまじることもある)
│ │ │ │ │ │ │└オウミヨシノボリ Rhinogobius sp. OM
│ │ │ │ │ │ └わからない
│ │ │ │ │ │ └未同定 or 未掲載種類
│ │ │ │ │ └雄 or わからない
│ │ │ │ │ └*Eへ
│ │ │ │ ├伸長せず台形
│ │ │ │ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ │ │ │ └烏帽子型→*Bへ
│ │ │ └ある(鰓蓋上縁付近に達する)
│ │ │ └*Bへ
│ │ └白色、青白色で縁取られる
│ │ └*Dへ
│ ├多数ある
│ │└トウヨシノボリ(1989年)ではない or 未掲載種類
│ └ない(あっても、点列線、本数も少ない)
│ └*Cへ
└●当サイト内の同定(1種4+不明型) ←やや混迷する、実態的だが中途半端、独自と思われる
└魚類検索3に従い同定した結果
├クロダハゼであった
│└クロダハゼ類(クロダハゼ型) Rhinogobius kurodai f. kurodai (Tanaka, 1908)
├カズサヨシノボリであった
│└クロダハゼ類(カズサヨシノボリ型) Rhinogobius kurodai f. KZ (Tanaka, 1908)
├オウミヨシノボリであった
│└クロダハゼ類(オウミヨシノボリ型) Rhinogobius kurodai f. OM (Tanaka, 1908)
├シマヒレヨシノボリであった
│└クロダハゼ類(シマヒレヨシノボリ型) Rhinogobius kurodai f. BF (Tanaka, 1908)
└未同定 or 未掲載種類
├クロダハゼぽい(東京都・神奈川県・静岡県で捕った等)
│└クロダハゼ類(クロダハゼ型?) Rhinogobius kurodai f. kurodai? (Tanaka, 1908)
├カズサヨシノボリぽい(千葉県上総丘陵で捕った等)
│└クロダハゼ類(カズサヨシノボリ型?) Rhinogobius kurodai f. KZ? (Tanaka, 1908)
├オウミヨシノボリぽい(琵琶湖流入河川で捕った等)
│└クロダハゼ類(オウミヨシノボリ型?) Rhinogobius kurodai f. OM? (Tanaka, 1908)
├シマヒレヨシノボリぽい(瀬戸内海側で捕った等)
│└クロダハゼ類(シマヒレヨシノボリ型?) Rhinogobius kurodai f. BF? (Tanaka, 1908)
├クロダハゼ、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリ、シマヒレヨシノボリ以外のトウヨシノボリぽい
│└クロダハゼ類(不明型) Rhinogobius kurodai f. unknown (Tanaka, 1908)
└見当も付かない or 型間交雑の疑いがある
└クロダハゼ類(不明型?) Rhinogobius kurodai f. unknown? (Tanaka, 1908)
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魚類検索3は便利で価値の高い図鑑ですが、必ずしもスタンダードではなく一学説です。
査読が無いため、著者が選んだ情報に、主観や都合や偏りがあっても、そのまま載せられます。
例えるならば「さかなのまとめ」です。製作者が選択する部分によって、同じ素材にも関わらず、随分と印象が変わります。
ある方は「魚類検索3は小説」だと表現されていました。
それでも原典を確認するのは面倒なため、まとめられたものを使わざるを得ないのも実情です。関連記事として
日淡こぼれ話の「図鑑と同定、
ゴマハゼ、
シロメバル」もご笑覧下さい。
こうした認識を持った上で、魚類検索3という名著を、活用したいものです。
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結局どう呼んだら良いの?
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名称(表記) | 意味 |
トウヨシノボリ | 魚類検索3を未読か従わず、従来の整理を使っている。 |
魚類検索3の宍道湖型、西九州、北日本のトウヨシノボリを示す。 |
オウミヨシノボリ=トウヨシノボリとしている。 |
クロダハゼ、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリを1種(クロダハゼ=トウヨシノボリ)と見なしている。 |
クロダハゼ、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリ、シマヒレヨシノボリを1種(クロダハゼ=トウヨシノボリ)と見なしている。 |
旧トウヨシノボリ | トウヨシノボリ(1989年)からビワヨシノボリ、トウカイヨシノボリを除いたものを示す。 |
トウヨシノボリ(1989年)からビワヨシノボリ、トウカイヨシノボリ、シマヒレヨシノボリを除いたものを示す。 |
クロダハゼ | 魚類検索3に従い同定をしたことを示す。 |
クロダハゼ、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリを1種(クロダハゼ)と見なしている。 |
クロダハゼ、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリ、シマヒレヨシノボリを1種(クロダハゼ)と見なしている。 |
カズサヨシノボリ | 魚類検索3に従い同定をした結果が、カズサヨシノボリだったことを示す。 |
オウミヨシノボリ | 魚類検索3に従い同定をした結果が、オウミヨシノボリだったことを示す。 |
シマヒレヨシノボリ | 文献(2010)か魚類検索3に従い同定をした結果が、シマヒレヨシノボリだったことを示す。 |
ヨシノボリ属の一種 | 魚類検索3に従い同定をして未同定だったことを示す。 |
魚類検索3のビワヨシノボリ、トウカイヨシノボリ、クロダハゼ、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリ、シマヒレヨシノボリの分布域以外(北日本・九州など)のトウヨシノボリ(1989年)を未掲載種類と見なしている。 |
クロダハゼ類 | 旧トウヨシノボリを示すが、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリなどの存在を、肯定も否定もしない曖昧な名称。 |
クロダハゼ類(クロダハゼ型) | 魚類検索3のクロダハゼを、クロダハゼ種の中にある型と見なしている。 |
クロダハゼ類(カズサヨシノボリ型) | カズサヨシノボリをクロダハゼの型と見なしている。 |
クロダハゼ類(オウミヨシノボリ型) | オウミヨシノボリをクロダハゼの型と見なしている。 |
クロダハゼ類(シマヒレヨシノボリ型) | シマヒレヨシノボリをクロダハゼの型と見なしている。 |
クロダハゼ類(不明型) | 魚類検索3の未掲載種類をクロダハゼの型と見なしている。 |
まとめると文献(2010)と魚類検索3のお陰で、現在はカオス中です。
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いわゆるトウヨシノボリの細分化されたものは、全てが暫定的で、分類整理の定説、共通の標準和名はなく、答えが複数ある状態です。
無難なのは従来通り1種だけと見なして「クロダハゼ類」が良いと思います。
学名及び標準和名の決定と、新知見や新見解が論文発表されるのを待ちましょう。
カズサヨシノボリとオウミヨシノボリは、魚類検索3が提唱した種のため、
魚類検索3に従い同定(生体はほぼ無理)した結果がないと、使えない名称(生体に表記があったら懐疑的)です。
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千葉県の上総丘陵でトウヨシノボリを捕りました。これってカズサヨシノボリですよね?
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【分布同定は使えない】 この地方のトウヨシノボリは、この種だという分布同定は使えません。
【魚類検索3に従い同定しましょう】 その結果が、カズサヨシノボリに該当した場合にだけ、カズサヨシノボリだと言えます。
オウミヨシノボリに該当すれば、上総丘陵で捕った個体でも、それはオウミヨシノボリです。
同定が難しい場合は、クロダハゼ類が無難です。
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北海道でトウヨシノボリを捕りました。これって今は何て言う名前なの?
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【分布同定は使えない】 この地方のトウヨシノボリは、この種だという分布同定は使えません。
【魚類検索3に従い同定しましょう】 その結果が、カズサヨシノボリに該当すれば、北海道で捕った個体でも、それはカズサヨシノボリです。
該当種類が見つからなかった場合は、未掲載種類(ヨシノボリ属の一種)と判断できます。
同定が難しい場合は、クロダハゼ類が無難です。
参考:「Twitterログ」
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未掲載種類ってどう扱えばいいの?
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【分布同定は使えない】 魚類検索3の2042ページに「宍道湖型...西九州,北日本のトウヨシノボリについては...掲載しなかった」とあります。
これに従って宍道湖、西九州、北日本の個体を、
クロダハゼ、カズサヨシノボリ、オウミヨシノボリ、シマヒレヨシノボリなどでは無いとする根拠はありません。
魚類検索3に従い同定し、該当種類が見つからなかった場合にだけ、未掲載種類(ヨシノボリ属の一種)と判断できます。
名称はトウヨシノボリかヨシノボリ属の一種が良いでしょうが、
そもそもの同定が難しい場合は、クロダハゼ類が無難です。
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もうよくわかんないからトウヨシノボリでいいよね?
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最初にクロダハゼ(1913年)と名付けられ、同種に対してトウヨシノボリ(1989年)と名付けられました。それが判明したのは2011年です。
ようするに、クロダハゼという名前があるのに、名前がないと思われて、トウヨシノボリと付けられた重複和名です。
その後にトウヨシノボリ(1989年)には、ビワヨシノボリとウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ)の2種が含まれいることが判明し、
更に魚類検索3では、琵琶湖流入河川産トウヨシノボリ(1989年)を、オウミヨシノボリとしています。
これらにより、トウヨシノボリという表記には、複数の問題点があります。
そのため的確で曖昧なクロダハゼ類が無難です。
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トウヨシノボリがダメなら旧トウヨシノボリでいいよね?
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クロダハゼ(1913年)→トウヨシノボリ(1989年)→2013年と変わっているため、トウヨシノボリに旧を付けるのは不自然です。
また、ヨシノボリ橙色型(琵琶湖流入河川産)をトウヨシノボリ(1989年)としているため、魚類検索3に当てはめるとオウミヨシノボリです。
ようするに、旧トウヨシノボリはオウミヨシノボリを指し、適当な表記とは言えません。
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(2013年5月4日公開)
■ トウヨシノボリの混迷 2018年 ■
日本の淡水魚 (1989年) | 諸型 (?〜1989〜2013年) | 魚類検索3 (2013年) | 日本の淡水魚 (2015年) | 魚類館 (2018年) |
トウヨシノボリ種 | 房総型 | カズサヨシノボリ種 | 大型で雄の第 1背鰭が高くて 烏帽子形の型 | トウヨシノボリ種 |
湖沼型、橙色型、琵琶トウ、琵琶湖型 | オウミヨシノボリ種 |
宍道湖型 | 未掲載種類(トウヨシ ノボリとも解釈可能) | ヨシノボリ属の一種 (旧トウヨシノボリ) |
黒色大型B、南九州系、西九州型 |
型名なし、他地域(北日本など) | 小型で雄の第 1背鰭が低い型 |
偽橙色型(房総型を含む)、偽橙色型 | クロダハゼ種 |
キバラトウショク、縞鰭型、池沼型 | シマヒレヨシノボリ種 |
ウシヨシノボリ | トウカイヨシノボリ種 |
- | ビワヨシノボリ種 |
当ページは魚類検索3による混迷を、少しでも整理しようと2013年に制作しました。
それから5年が経ち2018年に「小学館の図鑑Z 日本魚類館 (略称:魚類館)」が出版されました。
両図鑑は同じ編者(執筆担当者は異なる)で、トウヨシノボリの項では魚類検索3にも触れられています。
すなわち、魚類検索3以後の最新見解が魚類館に記されています。
日本の淡水魚(2015年)も含めて変遷を上表にしました。
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新トウヨシノボリ
魚類館ではオウミヨシノボリとカズサヨシノボリを、識別困難でトウヨシノボリに含めています。
これは上記の「トウヨシノボリという和名」で記したように、同一種の重複和名問題が、解消されて良かったです。
その一方でトウヨシノボリ(1989年)からは、クロダハゼ、ビワヨシノボリ、トウカイヨシノボリ、シマヒレヨシノボリが切り離された上で、トウヨシノボリとされています。
また、オウミヨシノボリを琵琶湖流入河川産ではなく、琵琶湖産と解釈して、その写真をトウヨシノボリとして掲載しています。
これらからトウヨシノボリ(1989年)とは異なり、魚類館のトウヨシノボリの定義は「新トウヨシノボリ」とも言えるものです。
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大型と小型
新トウヨシノボリは「大型で雄の第1背鰭が高くて烏帽子形の型(略称:大型)」と「小型で雄の第1背鰭が低い型(略称:小型)」の2型に分けられています。
トウヨシノボリ(1989年)と新トウヨシノボリ(琵琶湖産)は大型です。小型は千葉県産の写真が掲載されていますが、
これは魚類検索3における房総型(カズサヨシノボリ以外)のうち「雄の第一背鰭が台形で伸長せず北総域に分布するもの」だと思われます。
大型は両側回遊性で、小型は内陸性が多いようです。型の意味合いについては言及がなく、後に種・亜種に整理される含みは読み取れません。
サクラマス・ヤマメのように、同種でも生活形態によって、形態の変異幅が広い、生態型や表現型可塑性などだろうと判断しています。
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混迷の根源は未着手
魚類館 (2018年) | 当サイト内 (2018年) |
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大型で雄の第1背鰭が 高くて烏帽子形の型 | トウヨシノボリ種 | クロダハゼ類(トウヨシノボリ型) | クロダハゼ種 (クロダハゼ類) |
小型で雄の第1背鰭が低い型 |
クロダハゼ種 | クロダハゼ類(クロダハゼ型) |
シマヒレヨシノボリ種 | クロダハゼ類(シマヒレヨシノボリ型) |
トウカイヨシノボリ種 | ウシヨシノボリ(トウカイヨシノボリ)種 |
ビワヨシノボリ種 |
魚類検索3と比べて、魚類館は未掲載種類を出さない良い整理で、執筆者及び編者は大変にご苦労されたと思います。
しかし、この問題はシマヒレヨシノボリを、独立種にしたところから始まっており、それを解決しないと混乱は続くと予想します。
トウヨシノボリ(1989年)は、クロダハゼ(1908年新種記載)、ビワヨシノボリ(2017年新種記載)、トウカイヨシノボリ(未整理種)の3種で良いと考えます。
クロダハゼ、新トウヨシノボリ(未整理種)、シマヒレヨシノボリ(未整理種)は、形態差異が曖昧で変異幅が広く、交雑の原因もあると考えられますが、
識別困難な個体が希ではない頻度で出現します。
今後にこれら3つは新種記載済のクロダハゼとして、思い切った整理が成される日を待ち望みます。
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(2018年4月2日追記)
■ トウヨシノボリの混迷 2019年 ■
トウカイヨシノボリとシマヒレヨシノボリは2019年2月28日に新種記載されました。
シマヒレヨシノボリは先述のように、今でも独立種か懐疑的に思っていますが、当サイトではひとまず記載を重んじることにします。
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(2019年3月4日追記)
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