ウシモツゴ




ウシモツゴ
コイ目 コイ科 カマツカ亜科 モツゴ属 シナイモツゴ種 ウシモツゴ亜種
CYPRINIFORMES Cyprinidae Sarcocheilichthyinae Pseudorasbora pumila subsp.

婚姻色が強く出た産卵期最盛期の雄(愛知県産)

■成魚の全長
自然下では6〜7cm(雄:5〜7cm、雌:4〜6cm)、飼育個体は8cmを超えることもある。

■地方名
文献によるとウシモロコやケンカモロコなどとあるが、 濃尾平野ではどちらの地方名も使っている方には出会ったことがない。 希にモツゴをウシモロコと呼ぶ方もいますが、 ウシモツゴの生息地にモツゴが侵入し、置き換わった後も同じ名称で呼んでいるのかもしれません。 聞き込みでウシモツゴを持って行って見て頂くと、 昔のウシモロコという表現を使われた方もいました。 ケンカモロコについて聞き込みでは岐阜県羽島市在住の方が子供の頃に、 ウシモツゴ(地方名:ウシ)を堀潰れで捕り、 バケツに入れて喧嘩をする様子を眺めて遊ぶことがあったそうです。

■形態

日本に生息するモツゴ属は3種類あり、外部形態で判別することは容易ではありませんが、 モツゴは側線が完全なためシナイモツゴやウシモツゴと区別できます。 シナイモツゴとウシモツゴは縦条の有無で分けられるとされていますが例外も少なくなくありません。 両者の雌を比較するとシナイモツゴは縦条がはっきりと現れる個体がほとんどですが、 ウシモツゴは幼魚に縦条が見られることが希にある程度です。 雄のシナイモツゴも縦条が明瞭ですが、婚姻色によって全身が黒くなると確認できなくなります。 その他の傾向としてウシモツゴの方がずんぐりしていて体高が高く、 成魚の全長がやや小さいため目が慣れると見分けられます。

■生息場所
愛知県・岐阜県・三重県に分布します。生息水域は10ヶ所ほどです。 ため池やそれに繋がる水域に見られますが、かつては平野部のクリーク(堀田など)でも確認されていました。 岐阜県は岐阜県希少野生生物保護条例により全域で採捕禁止です。 愛知県は西尾市と豊田市が地方公共団体として天然記念物に指定しているようです。

■食性
自然界で主に何を食べているかは観察されていませんが飼育下では雑食です。

■採集方法
  
びんづけ、籠網、たも網など基本的にはどんな漁具でも採集可能です。 聞き込みでは釣針に囮のウシモツゴを付けて、 石垣などウシモツゴが潜んでいそうなところに近づけ、 囮を追い払おうと出てきたウシモツゴをたも網で素早く掬うこと捕り方があったそうです。 縄張り意識の強いウシモツゴには適した方法なのかもしれません。

■利用
濃尾平野では佃煮として食べられていたようですが、 今となってはそれがウシモツゴだったのかモロコ類だったのかは不明です。 雌の子持ちを塩焼きにして食べたところ非常に美味でした。 1990年代前半は鑑賞魚店で見かけることは少なく、 1ペア25,000円という価格を聞くこともありました。 それ以降は1尾が2,000円程度のようです。



■野外の飼育
 
(1) 必要とする道具など
【発泡スチロールケース】四角形の底が深いものを魚屋などから譲ってもらう。バスタブなども良い。
【砂】鑑賞魚用の細かい砂。
【飾り】鑑賞魚用の陶器など。
【水生植物】オオカナダモなど丈夫な水草。
【貝類】イシガイ類やドブガイ類などの丈夫な二枚貝。付着藻類を食べてくれる小さな巻貝類。
【微生物】ミジンコやイトミミズなど。
(2) 水槽の設置
雨が入る場所であれば水を足すことが減りますが、 大雨で水と魚が一緒に流されないように、ケースの高い場所に小さなの穴を開けておき、 水だけが排出できるようにしておくと良いでしょう。
(3) 飼育できる個体数
成魚であれば4〜8個体程度です。 小さなドジョウなども入れても良いと思います。 1〜3日に1回は餌を与えます。
(4) 水換え
設置してから1週間以上して水に濁りなどがないようであれば水換えは必要ありません。 水が20%ほど減ってきたら水道水を直接少しずつ入れます。 逆に設置してから1週間以上して様々な問題があった場合は、 水換えをするよりも他に原因がある可能性が高いため調べて改善させます。
(5) その他
天気予報などで積雪が予想された時は蓋をするなどしてケースに入るのを防いでください。 そうしないと水がシャーベット状になってウシモツゴが死にます。 水面に薄氷が張る程度では死ぬことはありません。 トンボのヤゴなどを見つけたときも排除しないとウシモツゴを食べてしまうおそれがありますので気をつけてください。



■室内の飼育
 
(1) 必要とする道具など
【35cm〜60cmのガラス水槽】一般的なガラス水槽です。
【砂】鑑賞魚用の細かい砂。底面式ろ過器具に吸いこまれない程度の大きさを選ぶ。
【飾り】小型の植木鉢などが良い。
【ろ過器具など】上部式ろ過器具の吸水部分を低面式ろ過器具に直結させたものを使い ろ過器具に使用するモーターポンプはやや強いものが良い。ろ過材は化学繊維の綿と活性炭を入れる。
【ヒーター】設定温度は15〜20℃くらいが良いようです。
【鑑賞魚用蛍光灯】無くても構いません。
(2) 水槽の設置
室内の太陽光が差す場所が良いです。砂は底面式ろ過器具の上に5cm前後の高さになるように敷きます。
(3) 飼育できる個体数
成魚であれば5〜15個体程度です。鮎育成配合飼料や生きたイトミミズ類が主食としては良く、 冷凍赤虫や金魚用飼料など副食も必要です。餌は基本的に1日1回は与えます。
(4) 水換え
設置してから1〜2週間以上して水に濁りなどがないようであれば水換えは必要ありません。 2〜3ヶ月に1回ほど水槽内の3分1の水代えを行う程度で良いでしょう。 水が20%ほど減ってきたら水道水を直接少しずつ入れます。 逆に設置してから2週間以上して様々な問題があった場合は、 水換えをするよりも他に原因がある可能性が高いため調べて改善させます。
(5) その他
水槽が安定してからは特別な管理をする必要はほとんどありません。 ただし水温が30℃を超える日が続くと死ぬことがあります。 そうした際にオオカナダモなどの水生植物を多く入れるとなぜだか死ぬことが減ります。 淡水魚の中でもウシモツゴは水温変化に強い魚で、タナゴ類ほど気を使う必要はありません。 この設備はウシモツゴを飼育してきて最も状態が良く、産卵もする確立が高い水槽環境です。


参考・引用文献 ※不備がある場合は改めますのでお手数ですがご連絡ください。
□ 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚 2版 川那部浩哉・水野信彦編 監修 山と渓谷社 1995.9.1