ウナギの蒲焼(7)





味の違い

蒲焼の味は部位によって4つに大別できます。 前腹は内臓がある分だけ身が薄く、腹骨は硬さを感じます。 後腹は前腹よりも少し身が厚く、腹骨も少し軟らかいです。 前尾は身が厚くて脂が多く、小骨が気にならず、軟らかくて最上の部位です。 後尾は前尾ほど脂は多くなく、身が薄いため皮の味が強くなります。

●天然 vs. 養殖
全長(cm)304050607080以上
天然
養殖
天然
養殖
天然
養殖
味(点)0102030405060708090100
天然
養殖
「天然ウナギと養殖ウナギはどっちが美味しい?」という比較をよく目にします。 養殖は雄がほとんどで、全長40〜50cmで太くて揃っています。天然は雌雄で、全長30〜80cmで細〜極太とばらばらです。 身の厚みや骨の太さなどが異なり、公平な比較ができません。 仮に同程度を比較すれば、確実な違いは皮だけで、天然が厚くて硬く、養殖が薄くて軟らかいです。 脂は量が同じ場合、養殖の方が濃くてしつこく、天然は薄くてあっさりが多いです。 総合的な判断の味は、養殖は70〜80点で安定していますが、天然は20〜100点と幅が広く、洗剤臭などで食べられない0点までいます。 ただ、養殖で100点やその近くを食べたことがありません。 ようするに、養殖は全体的に美味しく、天然は不味いから絶品までいる。 どっちが美味しいかは一概に言えません。


味だけランキング

関東風
身崩れし易くて骨抜きは大変だが、上品で豆腐食感が最高!
1位

■オーブントースター
+焼き鳥台+金串+蒸す
2位

■フィッシュロースター(扉型・両面)
+グリルプレート+金串+蒸す
3位

■フィッシュロースター(蓋型・両面)
+魚焼きホイル+蒸す
ねっとりとした脂と上質な旨みだが、焼き加減が難しく、非常に軟らかいため、身崩れが避け難い。 口で脂が溶けて美味だが、焼ける量が少なく、非常に軟らかいため、身崩れに気を遣う。 ご飯の一体感が良くてふわほわ食感だが、蒸し時間が長く、非常に軟らかいため、身崩れに気を遣う。
どちらでもない
蒸し焼きやたれで煮る無難な方法だが、硬軟の調和があって最高!
1位

■鉄フライパン
+焼き網+蓋
2位

■フィッシュロースター(扉型・両面
・網無し)+魚焼きホイル
3位

■オーブントースター
+魚焼きホイル+飯蒸し
関東風と関西風のいいとこ取りで、総合評価も100点だが、煙はとても酷く、身崩れに気を遣う。 食感が非常に良く、ガツンと来る味だが、関西風としては中途半端。総合評価は高い。 脂が混ざって力強い味だが、皮は軟らかいが関東風としては中途半端。総合評価は高い。
関西風
煙は酷くて焼き加減は難しいが、スモーキーで濃い味が最高!
1位

■七輪+焼き網+下茹で
2位

■バーベキューコンロ(中・網無し)
+金串+下茹で
3位

■ステーキ皿(中)+焼き網
野性的な味の最高峰だが、面倒な炭火起こし、狼煙を全身に浴びる。網に張り付いて焦げ易い。 野性的な強い味が衝撃的だが、面倒な炭火起こし、狼煙を全身に浴びる。炭の火力が均一ではなくて焦げ易い。 パンチが効いて非常に美味だが、煙はとても酷い。初心者は確り焼かず、臭みが残る可能性がある。
食感を含む味のランキングで、臭みは完全に消えるが大前提です。サンプル(ウナギ)の質は考慮せず、蒲焼の作り方による味です。 関東風、どちらでもない、関西風は別物なために分けました。 餃子を想像して下さい。水餃子は軟らかくてやさしい味、焼き餃子は硬軟が調和する味、揚げ餃子は硬くて強い味。 水餃子が硬かったり、揚げ餃子が軟らかかったら、不味いと感じると思います。同じ餃子でも加熱方法で味の基準は異なるものです。 それと同じで、関東風は軟らかくてやさしい味、関西風は硬くて強い味が良い基準です。


小骨が気になる

全長(cm)455055606570758085
よくある失敗風
確り焼く(関西風)
蒸す(関東風)
蒸し焼き
下茹で
安心  注意  喉に刺さる
蒲焼を食べたら骨が喉に刺さって嫌いになった。そうした方の食べた蒲焼はほとんどが関東風です。 関東風は確り焼く工程が無いため、骨が焼き切れていません。 焼き切るとはウナギが持つ脂で、骨を揚げたようにした状態です。 骨せんべいが喉に刺さらないのと同じで、簡単にバラバラと噛み砕けます。 売られている関東風は、小さめのウナギを使っていますが、それでも刺さることはあります。骨抜きするお店もあります。 それを大きめの天然ウナギで、骨抜きすることなく作れば、どうなるかは想像が付きます。 小骨が気になるようでしたら、関西風をおすすめします。

●小骨抜き
関東風でウナギの骨抜きは、生の状態だと力が要るのと、ぬるぬるして上手に出来ません。 そのために蒸した後で行います。赤色の4列を骨抜きを使って引き抜きます。 多少は身をちぎってしまうため、可食部が減るのと見た目も少し悪くなります。 この工程に時間が掛かると、ウナギから水分が蒸発して、蒸した効果が弱くなるため、再び短時間だけ蒸した方が良いです。


煙を何とかする

悪い例 良い例
換気扇をあちこち回して、給気口が定まっていない。 換気扇をキッチンだけ回して、給気口が定まっている。
蒲焼を作ると多くの方法で煙が出ますが、スモーキーな風味が加わる良い味付けです。 煙は壁などに付着して、1〜2日は臭いが残り、酷い場合は1週間ほど消えません。 防ぐには換気扇と給気口の使い方が大事です。 悪い例は普段の生活では良いですが、空気の流れが広く移動して、煙もそれに乗って全体が臭くなります。 更に換気扇近くの窓を開けると、外へ出た煙が戻って循環し、最悪な状況になります。 良い例のようにキッチン(レンジフード)以外の換気扇を止めて、対角線上の窓だけを開けることで、 空気の流れがほぼ一方通行になり、他の部屋を煙から守ることが出来ます。 但し、空気が入れ替わらないため、蒲焼を作る1〜2時間だけ停めて、終わったら元に戻しておきます。

●煙の臭いを取る
上記の良い例を行っても、キッチン周辺は臭います。消臭スプレーはその臭いが気になることもあります。 そこでペットボトルの濃いお茶を、500mlほど鍋などへ入れて沸騰させます。 それを臭いが強い場所の床へ置きます(鍋敷きや丼鉢などに乗せる)。 3〜5分ほどで湯気が出なくなります。この間だけ換気扇は止めて窓は閉めます。換気扇を回すと効果はとても弱くなります。 再び沸騰させて(ガス火は換気扇を回す)別の場所へ置きます。これを繰り返して3〜4箇所で使えます。 費用は(ペットボトル2Lのお茶約160円÷4)+(ガス代約10円)=約50円です。この方法は焼肉後の消臭にも使えます。 普通の緑茶や緑茶ティーバッグは消臭効果が弱く、緑茶をフライパンで炒ったものは、ほとんど効果が無かったです。


Q & A

ありがち 本当のこと
まずはウナギの眼に千枚通しを打ってと(目打ち)。 眼に打つと不安定になります。眼と胸鰭の間くらいに打ちます。
ウナギを捌くのは無理かも。でも焼くのは出来るよ。 ウナギは3匹も捌けば何とかなります。焼くのは比較にならないほど難しいです。
私は関東なので蒸してから焼くぞ。 関東は焼いてから蒸してたれ焼きが一般的です。
炭で焼けば絶対にうまいに決まってる。 絶対に臭いです。下茹でしましょう。
竹串を2本刺して、魚焼きグリルで焼くよ。 網に乗せる場合は、竹串を刺す意味がないのと、焦げて掴めなくなります。

捌き方

ガタガタにならないようにするには?
【包丁】 出刃包丁など分厚いものを使っていませんか。慣れないうちは薄いカッターナイフが良いです。
【まな板】 幅の狭い(10cm程度)まな板を使っていませんか。捌く際にウナギがずれるため、ある程度(20〜30cm)の幅が必要です。 そのずれを力で押さえつけると、切る方への注意が散漫になります。
【生きたウナギ】 生体はまな板の上でよく動き、慣れないうちは力で押さえつけても、綺麗に捌くのは難しいです。冷凍庫へ1時間くらい入れてから捌きましょう。
【背鰭を意識】 刃が中骨に当たり、背鰭のすぐ上を切っていたのに、だんだん上へ離れる場合は、背鰭の位置を見ながら切ります。
【慎重すぎる】 刃先が身から皮まで突き抜けるのではないかと心配になって、同じ場所に何度も切れ目を入れる方がいます。 少しくらい突き抜けても良いですので、奥まで入れて刃先を戻すことなく引き続けます。修正は開いてからにしましょう。
参考:「ウナギの捌き方」


皮のぬめりは取らなくていいの?
【取らなくて良い】 臭みの原因ではないです。ぬめり(粘液)は熱に一番近く、最も早く焼けて、臭みが消える場所です。
【勝手に取れる】 ウナギをホイルなどに置く焼き方だと、勝手に剥がれ落ちます。串打ちすると焼き付きますが、味や臭みに影響はありません。
【どうしても取りたい】 冷凍すると水洗いで取れます。生体に熱湯を掛けても取れますが、大暴れするため、あまり掛からなかった部分は取れず、 掛かり過ぎた部分は皮が割れます。ウナギは熱湯後も生きているため、包丁でぬめりを削ぎ取るのは、手を切りそうになります。 そのために捌いた後で、まな板に皮側を上へ向けて置き、熱湯を掛けて包丁で削ぎ取ります。熱湯を掛け過ぎると、皮が破れたり丸まったりして、 焼き上がりがボロボロになりやすいです。ぬめりは取りはなるべく止めましょう。


保存方法

泥抜きはどうやればいいですか?
【不要】 臭み消しには無意味で、味を落として、費用・場所・手間・時間が掛かります。
【井戸水】 鰻屋さんの常套句「うちの鰻は綺麗な井戸水に、2〜3日さらしているので臭みが無い」これは泥抜きではなく、立場での餌抜きです。 焼いた際に臭みが残りやすいのは、粘液や皮ではなく、皮と身の間にあるコラーゲン繊維です。半年くらい飼育して新陳代謝させれば変化するかもしれません。
参考:「ウナギの保存方法」


たれ

たれは注ぎ足しほど良い?
【差別化】 100年注ぎ足しのたれと、今日作ったたれ、どちらが食べたいですか。これは味の比較ではなく、鰻屋さんの宣伝と差別化です。
【腐ります】 一般家庭では鰻屋さんのように毎日使いません。特に焼いたウナギの頭や骨を入れたり、 蒲焼に使ったたれを戻すと、酸化して腐るのが早まります。冷蔵庫で保管しても1週間と持ちません。 それを非加熱でご飯に掛けると体を壊します。シンプルに作ったたれであれば、数箇月は冷蔵庫で保管できます。
【10年以上注ぎ足し】 実験的に2008年頃から10年以上も、注ぎ足しているたれを使っていますが、出来立ての方が良いです。たれは古くなると醤油の風味が飛びます。
参考:「うなぎのたれ」 「創業時のタレは残っていない」


頭と骨を入れると美味しくなる?
【生臭くなる】 たれに生の頭と骨を入れるのは、臭みが溶け出して、気持ち悪くなります。適当に焼いた場合も同様です。確り焼くと臭みは消えますが、焦げかすが入って苦くなります。 身・皮・骨・粘液・血などのかすがたれに浮いて、食感を邪魔して見た目も悪いです。 たれにウナギの出汁が出て、より美味しくなるというのは、容易に想像できますが、現実は違います。たれに頭と骨を入れると不味くなります。また、酸化して腐るため、長期保存が出来なくなります。
参考:「うなぎのたれ」


焼き

身と皮のどっちから焼けばいいですか?
【身側から焼く】 焼き始めて形が安定するまでの収縮は、皮側が短時間で身側が長時間です。 下火で網や板で皮側から焼くと、すぐに縮んで丸まって、皮と身の両側とも焼きむらに成りやすいです。 串打ちすると皮の丸まりを抑えられるため、下火で皮側から焼いても良いですが、捻じれた状態で固まることがあります。 上火や上下火は身側を火力の強い方へ向けたが良いです。基本的には身側から焼いて下さい。


臭みを取るのに一番重要なのは?
【確り焼く・蒸す・蒸し焼き・下茹で】 ウナギは普通の魚ではないです。
参考:「臭みを消す4つの方法」 「Yahoo!知恵袋 2016/5/21 11:55」
No. 確り焼く(関西風) 蒸す(関東風) 蒸し焼き 下茹で
臭み消し ○経験と技術がいる ○たいてい簡単に消せる ◎簡単に消せる ◎簡単に消せる
時間 ○素焼き+確り焼く30〜60分 ○蒸す15〜30分 ◎蒸し焼き15〜25分 ◎下茹で5〜15分
小骨 ◎焼き切れて気にならない △大きめは小骨取り必要 ○少し焼き切れる ○だいたい焼き切れる


フィッシュロースターなんて持ってません。おすすめの焼き方は?
フライパン+アルミホイル 動画有。臭みを茹でて気化させる方法。65cm以上の大型個体は小骨が気になる恐れはある。
フライパン+蒸す 動画有。フライパンで下茹で・素焼き・蒸し・たれ焼きをする。関東風の箸で切れる軟らかい蒲焼になる。
オーブントースター+魚焼きホイル+霧吹き 動画有。家庭に1台はある。後で食パンを焼いても、臭い移りはあまりないです。
ステーキ皿(中)+焼き網 鋳鉄に網を乗せて焼くだけで非常に美味しい。屋外でカセットコンロを使えば煙も気にならない。


失敗しやすい焼き方は?
【魚焼きグリル】 最弱でも高温加熱で、焦げやすく、ゴムのような食感、臭みが残りやすい。魚焼きホイルなどで温度を下げ、じっくり焼けるように工夫が必要。
【魚焼き網】 火が出る、煙が酷い、丸まる、焼きむら、焦げ付き、時間が掛かる、たれが焦げて苦味、臭みが残る、洗い物が大変。
【炭火】 超高温加熱で臭みを閉じ込める。食べた後も気持ち悪さが残る。下茹ですると解決するので試して下さい。
参考:「関西風の炭火焼きは臭い!!」 「生うなぎを蒲焼きに調理した結果・・・失敗しました」


まとめ

ここだけは抑えておこう
泥抜き不要、無意味、損する。
たれ頭や骨を入れない。新鮮な方が良い。
串に刺したら網に乗せない。
天然鰻養殖よりも皮が厚いので焼き方が違う。
臭み消し確り焼く、蒸す、蒸し焼き、下茹で。
炭火焼き確り焼けないので、蒸すか下茹でする。
火力炭火などの高温加熱は臭みを閉じ込める。
世間やネットではありえない焼き方を目にすることがよくあります。 例えば、ひつまぶし専門店のWebサイトで、竹串の関東風(ムシ)画像が使われていました。調べたところ写真素材でした。 ひつまぶしは関西風なため、金串でしか確り焼けず、蒸して軟らかいと、細かく切れません。ひつまぶしが作れるはずがありません。 上画像はコンビニのチラシです。炭火の焼き台に直接蒲焼を乗せています。鉄久に乗った皮側はおそらく焦げています。 焼き台に対して蒲焼の向きが縦横逆で、串を刺していないので、通常は炭へ落下します。落ちていないのは何か仕掛けがありそうです。 こうした間違ったイメージが頭に残ってしまうと、真似をして失敗するのは仕方が無いことです。