ウナギの蒲焼(11)
関西風の皮を軟らかくしたい
飯蒸し 手順 最も熱々で軟らかくなる方法 補足 1 丼鉢にご飯と水を少し入れる。 丼鉢は深くて広い物。水は蛇口シャワーに2回潜らせる程度。 2 ラップをして電子レンジで熱々にする。 オート温めではなく、最大出力でご飯から泡が出て、手で触れられないほど。 3 完成した蒲焼の皮側を、ご飯に張り付けるように乗せる。 皮が少しでも浮いたところは軟らかくなりません。 4 ラップをする。 完全に隙間が無いと、ラップは凹みますので、程よい加減にします。 5 保温バッグへ入れて閉める。 弁当箱用の保温バッグ(100均)。無い場合は乾いた布巾を被せる。 6 9〜13分ほど待つ。 8分以下は軟らかくする効果が弱い。14分以上はご飯が冷め始める。 7 たれを耐熱計量カップへ入れ、電子レンジで温める。 急に沸騰するため、注意深く見続けて、良い加減で止めて下さい。 8 保温バッグから丼鉢を取り出してラップを外す。 9 たれをウナギにまんべんなくかける。 ご飯にはウナギから落ちた量で十分です。 10 熱々で皮は軟らかく、身はサクッと感も残って美味しい!! 蒲焼の多くは「皮は硬く、濃い味」か「皮は軟らかく、薄い味」のどちらかに成りがちです。 飯蒸しは「皮は硬く、濃い味」として作った蒲焼を、「皮は軟らかく、濃い味」に変えられます。 方法は上記の手順通りで、硬くなった皮が熱々ご飯に触れて軟らかくなり、身へたれをかけることで、濃い味が戻ります。
●霧吹き
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関西風が確り焼けた後は、臭みは無くなり、味は良くなりますが、ウナギの油で揚げられて硬くなり、水分が抜けてパサパサになります。 霧吹きすることで水分を戻して、皮を軟らかくすることが出来ます。 水ではなく酒を使うと、軟らかくする効果は弱まり、身に酒の臭いが残って、表面に焦げが出来るため、失敗の原因になります。
●楽焼・せいろ蒸し・たれ煮焼き・ひつまぶし
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楽焼は確り焼く串(関西風)として作った後で、たれと一緒に蒸す方法で、身は蒸されてふにゃふにゃ、皮はたれに浸かって軟らかくなります。 せいろ蒸しは確り焼く網(関西風)として作った後で、たれご飯と一緒に蒸す方法で、時間が短いと「皮はやや硬く、普通の味」、長いと「皮は軟らかく、薄い味」になります。 たれ煮焼きは関西風として確り焼いた後で、たれで煮て皮を軟らかくし、たれを抜いて少し焦げ目をつける方法です。 ひつまぶしは確り焼く串(関西風)として作った後で、細かく刻んでお茶漬け(出汁漬け)にすることで、食べる直前に軟らかくなります。 関西風は確り焼かないと「皮は軟らかく、普通の味、臭くて食えない」になります。
●ゴム食感
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表面に焦げ目があって美味しそうなのに、ぐにゃっとしたゴム食感で、気持ち悪いことがあります。 原因は炭火などの高温加熱で表面だけを焼き固め、中まで確り火が通っていないためです。 確り焼いた蒲焼は融解や焼き付きで、主に身(皮下組織)と皮(表皮)だけになりますが、 焼きが甘い蒲焼は、身と皮の間にゴムのような弾力のある層(真皮)が残ります。 この層は強靭なコラーゲン繊維で、時間をかけて確り焼くと融解します。 融解した油は、水分が飛んで空洞になった身へ染み込み、しっとり感と旨みを増やします。 脂が乗ったウナギでも、確り焼いてここを融解しないと、脂の旨みを実感しにくいです。 蒸す(関東風)場合は素焼き工程で、表皮を焦がして穴が開くほど焼き、真皮に蒸し効果が伝わりやすくします。
味の違い
蒲焼の味は部位によって4つに大別できます。 前腹は内臓がある分だけ身が薄く、腹骨の硬さを感じます。 後腹は前腹よりも少し身が厚く、腹骨も少し軟らかいです。 前尾は身が厚くて脂が多く、小骨が気にならず、軟らかくて最上の部位です。 後尾は前尾ほど脂は多くなく、身が薄いために皮の味が強くなります。
●天然 vs. 養殖
「天然ウナギと養殖ウナギはどっちが美味しい?」という比較をよく目にします。 養殖は雄がほとんどで、全長40〜50cmで太くて揃っています。天然は雌雄で、全長30〜80cmで細〜極太とばらばらです。 身の厚みや骨の太さなどが異なり、公平な比較ができません。 仮に同程度を比較すれば、確実な違いは皮だけで、天然が厚くて硬く、養殖が薄くて軟らかいです。 脂は量が同じ場合、養殖の方が濃くてしつこく、天然は薄くてあっさりが多いです。 総合的に養殖は70〜80点と安定していますが、天然は20〜100点と幅が広く、洗剤臭などで食べられない0点までいます。 ただ、養殖で100点やその近くを食べたことがありません。 ようするに、養殖は全体的に美味しく、天然は不味いから絶品までいる。 どっちが美味しいかは一概に言えません。
全長(cm) 30 40 50 60 70 80以上 天然 養殖
皮 軟 普 硬 天然 養殖
脂 薄 普 濃 天然 養殖
味(点) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 天然 養殖
味だけランキング 食感を含む味のランキングで、臭みは完全に消えるが大前提です。サンプル(ウナギ)の質は考慮せず、蒲焼の作り方による味です。 関東風、どちらでもない、関西風は別物なために分けました。 餃子を想像して下さい。水餃子は軟らかくてやさしい味、焼き餃子は硬軟が調和する味、揚げ餃子は硬くて強い味。 水餃子が硬かったり、揚げ餃子が軟らかかったら、不味いと感じると思います。同じ餃子でも加熱方法で味の基準は異なるものです。 それと同じで、関東風は軟らかくてやさしい味、関西風は硬くて強い味が良い基準です。
関東風
身崩れし易くて骨抜きは大変だが、上品で豆腐食感が最高!1位
■オーブントースター(トレイ)
+焼き鳥台+金串+蒸す2位
■フィッシュロースター(扉型・両面)
+グリルプレート+金串+蒸す3位
■フィッシュロースター(蓋型・両面)
+魚焼きホイル+蒸すねっとりとした脂と上質な旨みだが、焼き加減が難しく、非常に軟らかいため、身崩れが避け難い。 口で脂が溶けて美味だが、焼ける量が少なく、非常に軟らかいため、身崩れに気を遣う。 ご飯の一体感が良くてふわほわ食感だが、蒸し時間が長く、非常に軟らかいため、身崩れに気を遣う。
どちらでもない
蒸し焼きやたれで煮る無難な方法だが、硬軟の調和があって最高!1位
■鉄フライパン
+焼き網+蓋2位
■フィッシュロースター(扉型・両面
・網無し)+魚焼きホイル3位
■オーブントースター(トレイ)
+魚焼きホイル+飯蒸し関東風と関西風のいいとこ取りで、総合評価も100点だが、煙はとても酷く、身崩れに気を遣う。 食感が非常に良く、ガツンと来る味だが、関西風としては中途半端。総合評価は高い。 油が混ざって力強い味だが、皮は軟らかいが関東風としては中途半端。総合評価は高い。
関西風
煙は酷くて焼き加減は難しいが、スモーキーで濃い味が最高!1位
■七輪+焼き網+下茹で2位
■バーベキューコンロ(中・網無し)
+金串+下茹で3位
■ステーキ皿(中)+焼き網野性的な味の最高峰だが、面倒な炭火起こし、狼煙を全身に浴びる。網に張り付いて焦げ易い。 野性的な強い味が衝撃的だが、面倒な炭火起こし、狼煙を全身に浴びる。炭の火力が均一ではなくて焦げ易い。 パンチが効いて非常に美味だが、煙はとても酷い。初心者は確り焼かず、臭みが残る可能性がある。
蒲焼を食べたら骨が喉に刺さって嫌いになった。そうした方の食べた蒲焼はほとんどが関東風です。 関東風は確り焼く工程が無いため、骨が焼き切れていません。 焼き切るとはウナギが持つ油で、骨を揚げたようにした状態です。 骨せんべいが喉に刺さらないのと同じで、簡単にバラバラと噛み砕けます。 売られている関東風は、小さめのウナギを使っていますが、それでも刺さることはあります。骨抜きするお店もあります。 それを大きめの天然ウナギで、骨抜きすることなく作れば、どうなるかは想像が付きます。 小骨が気になるようでしたら、関西風をおすすめします。
小骨が気になる
全長(cm) 45 50 55 60 65 70 75 80 85 よくある失敗風 確り焼く(関西風) 蒸す(関東風) 蒸し焼き 下茹で
■安心 ■注意 ■喉に刺さる![]()
●小骨抜き
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関東風でウナギの骨抜きは、生の状態だと力が要るのと、ぬるぬるして上手に出来ません。 そのために蒸した後で行います。赤色の4列を骨抜きを使って引き抜きます。 多少は身をちぎってしまうため、可食部が減るのと見た目も少し悪くなります。 この工程に時間が掛かると、ウナギから水分が蒸発して、蒸した効果が弱くなるため、再び短時間だけ蒸した方が良いです。
切る切らないの違い
蒲焼は切ると切らないの違いで、食感や味が大きく変わります。 蒸さない関西風は包丁で一口大に切ります。蒸す関東風は切りません。 混同されている方が多い印象です。例えると関西風は豚カツ、関東風はコロッケと似ています。 豚カツを包丁で切らずにかぶりつくと噛み切り難く、豚肉から衣が剥がれて一緒に食べられません。 それと同じで関西風を包丁で切らずにかぶりつくと噛み切り難く、身から皮が剥がれて一緒に食べられません。 コロッケは包丁で切らなくても箸で切り分けられ、ジャガイモと衣は剥がれずに一緒に食べられます。 それと同じで関東風は箸で切り分けられ、身と皮は剥がれずに一緒に食べられます。 また、関西風は切らないとご飯と一緒に食べられません。 ひつまぶしが切られていない状態と同じです。蒸していない蒲焼は切りましょう。
煙を何とかする
悪い例 良い例 換気扇をあちこち回して、給気口が定まっていない。 換気扇をキッチンだけ回して、給気口が定まっている。 蒲焼を作ると多くの方法で煙が出ますが、スモーキーな風味が加わる良い味付けです。 煙は壁などに付着して、1〜2日は臭いが残り、酷い場合は1週間ほど消えません。 防ぐには換気扇と給気口の使い方が大事です。 悪い例は普段の生活では良いですが、空気の流れが広く移動して、煙もそれに乗って全体が臭くなります。 更に換気扇近くの窓を開けると、外へ出た煙が戻って循環し、最悪な状況になります。 良い例のようにキッチン(レンジフード)以外の換気扇を止めて、対角線上の窓だけを開けることで、 空気の流れがほぼ一方通行になり、他の部屋を煙から守ることが出来ます。 但し、空気が入れ替わらないため、蒲焼を作る時間だけ停めて、終わったら元へ戻します。
●煙の臭いを取る
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上記の良い例を行っても、キッチン周辺は臭います。消臭スプレーはその臭いが気になることもあります。 そこでペットボトルの濃いお茶を、500mlほど鍋などへ入れて沸騰させます。 それを臭いが強い場所の床へ置きます(鍋敷きや丼鉢などに乗せる)。 3〜5分ほどで湯気が出なくなります。この間だけ換気扇は止めて窓は閉めます。換気扇を回すと効果はとても弱くなります。 再び沸騰させて(ガス火は換気扇を回す)別の場所へ置きます。これを繰り返して3〜4箇所で使えます。 費用は(ペットボトル2Lのお茶約160円÷4)+(ガス代約10円)=約50円です。この方法は焼肉後の消臭にも使えます。 普通の緑茶や緑茶ティーバッグは消臭効果が弱く、緑茶をフライパンで炒ったものは、ほとんど効果が無かったです。
●屋外
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炭火焼きの煙は一方向ではなく、微風でも移動するため、避けることは出来ません。 何も対策をしない場合は、全身が燻されて衣類は洗濯、体は風呂で洗わないと、臭いが取れなくなります。 吸い込むと鼻の奥の方に煤が付着し、最悪は3日間くらいも臭いが残ります。 そこで扇風機を使って、斜め下からウナギの直上を、風が通るようにし、煙を一方向にします。 そうすると煙がない場所が出来るため、そこへ座って焼く作業をすれば、煙を浴びるのは手くらいで済みます。 風のある日は扇風機の風力が負けて乱れたり、強力なサーキュレーターで飛ばしても、煙が戻って来ることがあります。 戻って来た煙を吸い込んだ扇風機やサーキュレーターは、油分を含んだ煤が羽根に付いて、解体して掃除する必要があります。