淡水魚類採集記録




採集記録方法を紹介いたします。私は淡水魚を採集した場合は、淡水魚類採集記録用紙などに記しています。 いつかこれが淡水魚のために利用されることを願っています。 こうした採集調査情報というものは極めて貴重で重要なものです。 しかし、むやみに生息地情報を公開することは、 図らずも同時にトリコ(淡水魚を採集して売買する業者へ流す人)や悪質な採集者への情報提供を意味します。 それによって乱獲と言われるマナーの著しく欠落した採集が行われる可能性があります。 危険回避のためにも完全公開は避けて、 必要に応じて調査情報を公開することが望ましいでしょう。 それは必ずしも秘蔵するという意味ではなく、 例えば魚たちの存在に無配慮な河川工事が行われた際に、 それを工事関係者などに提示することによって、 重要な参考資料となると思います。 一部のマナーのない人たちのために、 情報を制限しないといけないのはとても残念で悔しいですが、 仕方がない現実でもあります。 こうした問題が起こるのも観賞用の淡水魚需要があるためと考えて間違いありません。 その辺りを淡水魚を購入する方も十分に考慮してくださると、 淡水魚たちの将来もより良い方向が見えてくるのではないかと思います。

淡水魚類採集記録用紙は商用利用や公開される場合などを除き、 個人的な利用に関してはご自由にどうぞ。 ただし、著作権を放棄したものではありません。


◆淡水魚類採集記録用紙◆

(1)淡水魚類採集基礎資料   記入例

(2)淡水魚類一覧   記入例

(3)淡水魚類採集結果   記入例


●このマニュアルは調査及び記載方法の提案であり、 絶対的に従う必要はありません。 定義付けをしている説明文がありますが、 これは便宜上のために定義したものです。
●保存方法はファイルに閉じます。(1)と(2)はクリアブックの表と裏に入れ、 (3)はパンチで左に穴を開け、採集に出かけたごとに、(1)と(2)が入ったクリアブックの 後ろに、閉じ重ねて行きます。
●一部を除いて黒ペンで記載します。見取図を除き横書きで記します。 日付は西暦で統一し、時刻は24時間制で記します。
●淡水魚類とは、純淡水魚、回遊魚、汽水魚、遡河回遊魚、 降河回遊魚、両側回遊魚、海水魚(遇来魚)などの陸水魚を示します。 水生植物とは、沈水植物、浮遊植物、浮葉植物、抽水植物、一部の水域に侵入する湿性植物、 藻類などを示します。それらは、肉眼で容易に確認できる植物とします。 採集とは採集者によるもので、確認とは採集者以外(漁師、釣り人など)が、 採集したものを示します。目撃や死骸確認とは採集者が実際に目で見たものを示します。

淡水魚類採集水域登録ナンバー

同名の水域を区別するためなどに設けたものです。
[A]都道府県ナンバーを示します。下記にはその一例を記しています。
[B]水域名ナンバーを示し、999個所まで記せます。地点は1個所として数えます。
[C](1)の枚数(初めは1とします)を示し、(1)の状態が変化(護岸増設など)した場合には2枚目へと更新します。
[D]secretとする採集水域のみに、sを記し、それ以外は何も記しません。
[E](3)の枚数で採集に出かけたごとに数を増やしていきます。
都道府県ナンバー   01北海道 02青森 03岩手 04宮城 05秋田  06山形 07福島 08茨城 09栃木 10群馬  11埼玉 12千葉 13東京 14神奈川 15新潟  16富山 17石川 18福井 19山梨 20長野  21岐阜 22静岡 23愛知 24三重 25滋賀  26京都 27大阪 28兵庫 29奈良 30和歌山  31鳥取 32島根 33岡山 34広島 35山口  36徳島 37香川 38愛媛 39高知 40福岡  41佐賀 42長崎 43熊本 44大分 45宮崎  46鹿児島 47沖縄 48その他

(1)淡水魚類採集水域基礎資料
【水域名】
河川や湖沼などの名称を記します。同じ水域名で採集水域が離れ別の場所になる場合は、St.(数字) や地点名を記します。水路など名前がない水域は、地名などの名称を頭に使って記すと分かりやすくて良いでしょう。
【地名】
採集水域の地名を都道府県名から全て記します。
【記録日】
護岸、障害物、底質、備考、見取図を記録して日付を記します。
【水域】
採集水域に該当する水域区分を○で全て囲みます。もしくは、その他の欄に記します。 また、関連はあるがそれほど強く現れていないと思われるものには名称の下に波線を記します。 水域名(河川・湖沼名など)のみから水域区分を位置付けると間違うこともありますので、注意が必要です。
[河川形態型]T.1蛇行区間における瀬と淵の出現の仕方による分類(A型:多くの瀬と淵が交互に出現し上流に多い B型:瀬と淵が1つずつ出現し中流から下流に多い)。 U.瀬から淵への流れ込み方による分類(a型:滝のように流れ込み上流に多い b型:なめらかに流れ込むが波立ち中流に多い c型:なめらかに流れ込みほとんど波立たなく下流に多い)。
[網目状の砂洲]明確な瀬と淵を形成せず扇状地に多い。
[支流]本流(一般的な解釈)に対して直接注ぎ込む河川を第1支流といい、第1支流に直接流れ込む河川を第2支流という順番で示す。河川の中で、支流の枠内に○を付けない河川は本流のみとします。
[新流]本流から枝分かれし、再び本流に合流する河川。
[分流]放流から枝分かれし、そのまま海へ注ぎ込む河川。
[せき止め]ダム湖や丘陵地によく見られる溜め池。
[掘った]平野部に見られることが多く、堤防を造るために土を取った跡などにできた水域。
[河跡]河川の屈曲部が新流や分流の登場によって出来た、水の流れをもたない三日月状の沼池。
[湿地]湖沼に長い年月を掛け土砂が堆積して湿地状になったところ。
[溝渠農業地]堀をもち溝渠を灌漑・排水に共用する農法を示し、日本の代表的平野部に見られる。濃尾平野輪中地域にかつて存在した堀田がそれに属する。
[溜まり]河川敷内に自然にできた孤立した水溜まり。
[わんど]河川敷内に水制(水の流れを規制したり流速を弱めたりする人工構築物)に砂や泥が回りを取り巻くように堆積し、池状の入江になった水域。
[孤立わんど]わんどに似るが普段は完全に本流などと孤立して池のようになった水域。
[公園の水域]公園や庭園にある人工的に造られた水域。または、著しく人工化した水域。
[一時的水域]増水や水域敷地から溢れた水によって一時的に出来た水域。
[汽水域]塩水と淡水の混じった水域。これを囲まないものはすべて淡水域とする。
【護岸】
採集水域に設置されている護岸を○で全て囲みます。もしくは、その他の欄へ記します。また、関連はあるがそれほど強く現れていないと思われるものには名称の下に波線を記します。護岸の種類が複数の場合は護岸と状態を線で結んでおきます。 この項目で扱う護岸とは護岸部分である法覆、法覆を支える部分である法止め、法止めを水勢による浸食から守る部分である根固め、川底などを水勢による浸食から守る床止めの4種類とする。 また、これらは採集水域に接しているものとし、増水で年間数回程度ほどしか接しないものや、堆積物などで埋まったりして淡水魚類にとって重要ではないものなどは除きます。 護岸の名称や下記の解説文は土木工学的な分類とは異なる箇所があります。コンクリートとは合成樹脂やモルタルもこの場合は含みます。
[柳枝工]法覆に木杭を打ち柳で柵を造り、その内側に粗朶、連柴、土、砂利、石などを敷いたもの。
[並杭]木杭を水域に連続して縦に刺したもの。または、木杭を横に並べた丸太柵や木杭に粗朶を巻き付けた粗朶柵。
[捨石]根固めや床止めなどのために、水域の底に置き並べたり、捨てられた石。
[蛇籠]多くの石を金網などを使い長方形に囲んで造った籠状のもの。
[空石積]コンクリート接着を使わずに自然石を積んだり張り付けたりしたもの。
[連石積]コンクリート接着を使わずに切り取った石をほぼ隙間なく積んだり貼り付けたりしたもの。
[連石張]コンクリート接着を使って切り取った石などを面的に張り付けたもの。
[玉石]コンクリート接着を使って自然石(玉石)を出っ張るように張り付けたもの。
[矢板]鉄製の板を法止め部分に並べたもり張り付けたもの。
[異型ブロック小]主にコンクリート製で凸凹や穴が開いている形のもので、ほとんどが法覆として使われ鉄線などで連結している場合も多い。幅は49cm以下とし、それ以上は異型ブロック大と見なします。
[異型ブロック大]主に根固めや床止めのために置かれたコンクリート製(石を併用するものを含む)のもので、商品名ではテトラポッド(波消し利用が多い)が知られている。幅は50cm以上とし、それ以下は異型ブロック小と見なします。
[魚巣ブロック]コンクリートの枠に石を詰めたものなどがある。魚巣ブロックと呼ばれるものには、魚の巣としての効果がほとんどないものがある。それに該当すると考えられるものには○で囲まずに下に波線を記します。
[状態]設置状態を示し底面以下は側面とします。階段は3段以上とします。傾斜の設置角度は45度未満とし、法覆の水際から法止めまでの水面距離は1m以上とします。垂直の設置角度は45度から約90度までとします。
【障害物】
採集水域にある障害物などをすべて○で囲みます。もしくは、その他の欄に記します。 また、関連はあるがそれほど強く現れていないと思われるものには名称の下に波線を記します。 [樹木]水域に侵入している樹木。
[枯木]水域に侵入している枯れた樹木。倒木とも呼ばれるもの。
[木杭]樹木の杭が水域に刺さっているもので、護岸として利用されているものは含まない。
[置石]親水公園的な場所によく見られ、景観を向上させるためや子供の水遊びのためなどに、水域に露出するように置かれた石。飛石と呼ばれるものを含む。
[桟橋]船の荷の積み下ろしなどに使用する大型の桟橋から、釣り用の小型のものまでを示す。船の係留に使われることもある。
[係留舟]決まった係留場所を持ち、常にその係留が確認できる舟。
[定置漁具]大型の定置漁具(巻網、えり、登り落ち漁など)。
[小型ごみ]水域に捨てられた自然分解されにくい小さなごみ(空き缶、ビニール袋、瓦や陶器類など)。泥などの堆積で埋まり空間環境的な役割がないものは除く。ごみの量は目立つ場合に○で囲む。
[大型ごみ]水域に捨てられた自然分解されにくい大きなごみ(自転車、タイヤ、トタン板など)。泥などの堆積で埋まり空間環境的な役割がないものは除く。
【底質】
採集水域に約5%以上存在する礫などをすべて○で囲みます。もしくは、その他の欄に記します。 また、約5%未満のものは名称の下に波線を記します。底面にコンクリート護岸が確認できる場合などは、 コンクリートが底質という記し方ではなく、その上にある礫などを底質とします。また、堆積したごみなどは障害物とします。
[岩]礫が集合して固まっているものや大きな礫。
[巨礫]256mm以上の礫など。
[大礫]64mm以上256mm未満の礫など。
[中礫]2mm以上64mm未満の礫など。
[砂]0.074mm以上2mm未満の礫など。
[シルト]0.005mm以上0.074mm未満の一般的に泥と呼ばれるもの。ヘドロと呼ばれるものは含まない。
[粘土]0.005mm未満0.001mmの一般的に粘土と呼ばれるもの。
[堆積落葉]落葉や小枝が形を保ったまま堆積したもの。
【備考】
採集水域の特徴などを記します。例として、淡水魚類を取り巻く人間活動やその規則、 増水時や渇水時の状態、人工的な水量調整、冷水・温水性湧水、水質、流量、淵の型、 浮石や沈み石、露岩環境、河床勾配など。
【見取図】
採集水域とその付近の水域の平水時の状態を出来るだけ詳しく記します。 方位を記します。 底面護岸は水域記号の斜線と斜線との間に、側面護岸や水際とは接しないよう少し距離を開け、斜線を1本ずつ引いておきます。 点線で、植生界、干潟、瀬や淵、水に隠れた水制などを囲んで分かるようにすると良いです。 長い時間が経ってからもわかるように、鉄道駅やバス停留所、地点名入り信号機、学校、神社、寺院、橋梁名などを記すと良いです。
[水域]斜線と斜線の幅や角度は一応の基準を持って記します。
[湿地]点線で湿地や抽水・湿性植生地を囲みそこに記号を記します。
[荒地]点線で荒地を囲みそこへ記号を記します。
[自然物護岸]植物や石など自然物を加工して造られた護岸をで面積に応じて複数列などにして記します。
[堅固な護岸]コンクリート(接着使用を含む)や鉄板を使った堅固な護岸を記します
[異型ブロック]点線で異型ブロックのある場所を囲みそこに×を記します。
[水深計測所]水深を計測した場所を示し、数値はその近くに記しておきます。
[主な採集水域]主に採集を行う場所を赤色のペンや鉛筆で囲みます。
【写真】
採集水域全体が写り平水時のものが望ましいです。セロハンテープやのりなどで写真を貼り付けておきます。見取図に撮影ポイントを記すと良いです。
【水生生物一覧】
現在までに採集、確認、目撃などができた水生生物を記します。
【水生植物一覧】
現在までに採集、確認、目撃などができた水生植物を記します。

(2)淡水魚類一覧
【水域名】
水域名とSt.や地点名を記します。
【初採集日】
初めて採集を行った日付を記します。
【現在までに採集・確認及び目撃・死骸確認した淡水魚類】 淡水魚類の名称(基本的には標準的な和名)を記します。交雑魚も記します。 採集や確認以外は数字に目撃は○、死骸確認は△で囲みます。 一般的な分類以外の記し方をして分けて扱う場合は、 淡水魚類名の前に※を記します。変形魚(奇形)は淡水魚名の後に(変)と記しておきます。
【他の淡水魚類】
淡水魚類に関する聞き込み情報や記録などを記します。 【備考】
採集水域の淡水魚類の形態や生態など、他の水域とは異なる特徴などを記します。

(3)淡水魚類採集結果
【水域名】
水域名とSt.や地点名を記します。
【日時】
採集開始日時と採集終了日時を記します。 採集開始時刻から採集終了時刻が24時間以上になる場合は用紙を更新します。
[合計]採集開始時刻から採集終了時刻を示し、準備や後片付け、休憩など採集を行っていない時間は含ませません。
【天気】
雨や雪などの降り具合も記します。
[以前]採集開始時刻以前の24時間の天気で特に降水の有無を記します。
【水温】
採集開始時刻前後に上層水を日陰で計測した数値を記します。
【流速】
流速を数値として計測しない場合は、5段階程度に予め分けておいたものを記します。(例)T激流.U速い.V緩やか.W遅い.X止水.など。
【透視度】
採集開始時刻の少し前に日陰で計測した数値を記します。透視度を数値として計測しない場合は、5段階程度に予め分けておいたものを記します。(例)T澄み切る.U澄む.Vやや濁る.W濁る.X濁りが著しい.など。
[備考]水質の細かな状態を記します。(例)藻類で緑色になっている。白濁している。油が浮いている。泡切れが悪いなど。
【使用漁具】 [ ]内に使用した漁具の数値などを記します。もしくは、その他の欄に記します。
[(a)びんどう]ガラス製とプラスチック製のものを主に示す。 仕掛ける時間は、場所、状態、季節などにもよるが基本的に30分間とします。 餌はサナギ粉や練り餌など特にコイ科魚類が好むようなものにすると良いです。
[(b)籠網]仕掛ける時間と餌はびんどうと同様。
[(c)たも網]メダカ類の成魚が網目から抜け出ない程度のものを示します。 基本的に1人1本使用し、たも網による採集人数が複数になる場合は、全員の採集時間の合計を記します。
[(d)稚魚用たも網]ミジンコ類も採集できる網目のものを示します。それ以外はたも網と同様。
[(e)投網]投網を打った回数のうち、障害物で網がほとんど開かず捕れなかった場合など、失敗した回数は備考の項目に記してここには含めない。
[(f)四つ手網・追い込み]個数が複数になる場合は、全部の採集時間の合計を記します。
[(g)四つ手網・餌仕掛け]仕掛ける時間は基本的には15分間とします。餌はびんどうと同様。
[(h)釣り]個数は針の数を示します。仕掛けが同じ竿が複数になる場合は合計時間を記します。また、仕掛けが異なる場合はその他の欄に記します。
[(i)叉手網]メダカ類の成魚が網目から抜け出ない程度のものを示します。叉手網による採集人数が複数になる場合は、全員の採集時間の合計を記します。
【淡水魚類】
採集や確認以外は数字に目撃は○、死骸確認は△で囲みます。
[個体数]採集個体数は正確に数える必要がありますが、やむを得ない場合におよその単位として+の記号を使用します。 目撃は同じ魚を何度も数える可能性もありますので、具体的な数量は記さず所感的(多い・少ないなど)なことを記しておきます。
[発育状態]採集個体の該当するものを塗り潰します。目撃したものは、半分だけ塗り潰します。
[仔稚魚]孵化してから鱗が出来上がるまでのもの。
[未成魚]鱗が出来上がってから最初の成熟を迎えるまでのもの。
[成魚]最初の成熟を迎えてから以降のもの。
[卵有]雌の腹部に認められる卵。
[その他]その他の2次性徴を特に示す。
[採集漁具]使用漁具の中で実際に採集できた漁具のアルファベットを枠に記載し、その中でも圧倒的に有効であった漁具には、アルファベットの右上にを記すと良い。
[備考]最大最小全長(mm)、最大最小体長(mm)、産卵管の長短、その他の2次性徴の詳細、それぞれの個体数などを主に記します。
【水生動物】
採集、確認、目撃したものを記します。採集した個体数も記すと良いです。
【水生植物】
採集、確認、目撃したものを記します。茂り具合や付着状態なども記すと良いです。
【採集者】
採集者名をすべて記します。
【備考】
増水や減水など普段と異なったことを主に記します。 釣り人や先に採集していた人がいた場合は、その状況も記します。水質や波の状態や採集目的なども記すと良いです。


◆淡水魚類採集記録HTML◆

淡水魚類採集記録HTML使用例


上のものは私がHTML保存で使っている採集記録です。 少し前と異なりサイトを作るソフトや類似した機能を持つものが数多く出回っていますので、 そうしたソフトで淡水魚採集の記録を作ってみてください。 いつか淡水魚のために利用できる日が来るかもしれません。

参考・引用文献 ※不備がある場合は改めますのでお手数ですがご連絡ください。
□ 渓流棲昆虫の生態 可児藤吉全集 可児藤吉 思索社 1944(1979)