汽水魚を手軽に飼う(6)





飼育の各論

汽水域で採集して半海水での飼育を試みた魚種
種名大きさ飼育難易度ポイント
イセゴイ稚魚★★★★★× 餌も食べずに死んだ。幼魚であれば飼育できるかもしれない。
サッパ稚魚〜幼魚★★★★★ 外傷と輸送に弱く水槽が狭いと暴れて鱗が剥れて死ぬ。
コノシロ幼魚★★★★ 外傷と輸送に弱く水槽が狭いと暴れて鱗が剥れて死ぬ。
オオウナギ幼魚× ニホンウナギと同様で飼育は容易。
ニホンウナギ幼魚〜成魚×夜行性で水槽蓋の隙間から逃げ出すことがあるので注意。
シラウオ未成魚成魚★★★★★ 外傷と輸送に弱く飼育断念。
ウグイ幼魚縄張りを作って自分より大きな魚も追い回すことがある。
ゴンズイ幼魚〜成魚★★★臆病なところがあり他の生物との混泳に注意が必要。
クルメサヨリ稚魚〜成魚★★★★ 外傷と輸送に弱い。水槽内の障害物を減らすと飼える。
テングヨウジ未成魚〜成魚★★餌が少し特殊なだけで飼育は容易。
ガンテンイシヨウジ成魚餌が少し特殊なだけで飼育は容易。
カワヨウジ成魚餌が少し特殊なだけで飼育は容易。
クロウミウマ成魚★★★★ 餌が少し特殊。
サンゴタツ成魚★★★ 動きが遅いためカニなどに狙われやすく混泳に気をつけたい。
ムギイワシ成魚★★★★ 輸送に弱く飼育できるが痩せやすい。
トウゴロウイワシ未成魚〜成魚★★★★★ 輸送に弱く1日経たずして死ぬことが多い。
ボラ種群幼魚★★★×痩せやすい。前兆なく知らない間に死ぬことが多い。
メナダ幼魚★★× 痩せやすい。
セスジボラ幼魚★★水質悪化に強い。
コボラ幼魚〜未成魚水質悪化にとても強くボラ類の中でも丈夫な種類。
タイワンメナダ種群幼魚★★× 水質悪化にやや弱い。
ナンヨウボラ幼魚★★ ボラ類の中では弱々しいところがある。
カマヒレボラ幼魚★★× 餌も良く食べ特に問題ない。
モンナシボラ幼魚★★★少し臆病でボラ類の中では弱い。
スズキ幼魚★★★★× 少し臆病なところがあり混泳に注意。
チャイロマルハタ幼魚★★★× 少し臆病でよく隠れる。
オニヒラアジ幼魚★★★× 飼育は容易だが長期飼育は難しい。
ロウニンアジ幼魚★★★× 元気かと思っていると突然死することがある。
ギンガメアジ幼魚★★★★× 長期飼育の経験がない。
イケカツオ幼魚★★★★× 非常に気が強く他魚の鱗を食べるため混泳は難しい。
ヒイラギ稚魚〜未成魚★★★★ 輸送に弱く元気かと思っていると突然死することがある。
フエダイ幼魚 臆病で水槽に馴染むまで時間が掛かるが強い。
オキフエダイ幼魚★★★× 悪食で何でも食おうとする。水質悪化にやや弱い。
ゴマフエダイ幼魚× 悪食で何でも食おうとする。
クロホシフエダイ幼魚× 特に問題ない。
クロサギ幼魚★★★★ 臆病で他魚と混泳させると弱い。単独飼育は長生きする。
ダイミョウサギ幼魚★★★★ 臆病で弱々しく長期飼育の経験がない。
ホソイトヒキサギ幼魚★★★★ 外傷と輸送に弱く臆病。
コショウダイ幼魚× 非常に気が強く自分より大きな魚でも突っついて殺すこともある。
クロダイ幼魚★★×同種同士はよく喧嘩するが他種にはあまり悪さしない。
キチヌ幼魚〜成魚×同種同士はよく喧嘩する。
ヘダイ幼魚★★★★× 長期飼育の経験がない。
シロギス未成魚★★★★ 長期飼育の経験がない。
シマスズメダイ幼魚 水槽環境への順応性が高い。
オヤビッチャ幼魚★★★★ 汽水域へは偶来性が高く半海水での飼育は厳しい。
シマイサキ幼魚中層を泳ぐ汽水魚の中では穏和で臆病。
コトヒキ幼魚 他魚の鱗を突っついて食べるため長期の混泳は無理に近い。
ユゴイ幼魚 中層を泳ぐ汽水魚の中では穏和。
オオクチユゴイ幼魚★★★★ 長期飼育の経験がない。
イシダイ幼魚★★★ 気が強くて他魚を追い回す。長期の半海水での飼育は難しい。
ノトイスズミ幼魚★★★★ 汽水域へは偶来性が高く半海水での飼育は厳しい。
カゴカキダイ幼魚 気が強くて他魚の鰭をかじり取る事がある。
メジナ幼魚× 丈夫だが狭い水槽で飼うと早く死ぬことがある。
カマキリ(アユカケ)幼魚★★★×高水温に弱く冷却設備が必須。
ウツセミカジカ稚魚〜幼魚★★★×高水温に弱く良い水槽環境を保たないと死ぬ。
ダイナンギンポ幼魚★★★ 水質悪化に弱い。
ベニツケギンポ幼魚★★他魚とのトラブルが少ない。
ギンポ幼魚★★★★★ 餌も食べずに死ぬ。上手に飼育されている方もいる。
トサカギンポ幼魚〜成魚他魚を噛み付くこともある。カキ殻など隠れ家は多いほうが良い。
イダテンギンポ稚魚〜成魚他魚を噛み付くこともある。カキ殻など隠れ家は多いほうが良い。
ナベカ未成魚 特に問題なく飼える。
ニジギンポ幼魚★★★★ 汽水域へは偶来性が高く半海水での飼育は厳しい。
カワアナゴ幼魚餌を近くに落としてあげないとあまり食べない。
チチブモドキ幼魚〜未成魚基本的に夜行性だが日中でも餌は食べる。
オカメハゼ幼魚★★ 水槽から飛び出て死んだことがある。
タネハゼ幼魚〜成魚穏和でトラブルも少なく他魚の攻撃もゆったりかわす。
ミナミイソハゼ成魚★★ 飼育から数日を乗り越えれば安定して飼い易い。
ウロハゼ幼魚★★ ハゼ類の中でも大きくなる種類のため混泳に注意。
ヒトミハゼ成魚★★★ 頑固に餌をなかなか食べない。
クモハゼ幼魚〜未成魚 他魚とのトラブルが少ない。
クロヤハズハゼ成魚 温和で特徴があまりない。
ホシハゼ未成魚★★水槽にすぐ慣れて餌を食べる。低塩分に弱いかもしれない。
ヒメハゼ幼魚〜未成魚★★★ 水槽に馴染めず飼育初期に死ぬことがある。
ツマグロスジハゼ幼魚〜未成魚★★ 水質悪化にやや弱い。
スジハゼ未成魚★★ ツマグロスジハゼよりも水槽環境への順応性がある。
クロコハゼ幼魚〜成魚 ハゼ類の中では温和。
シロウオ成魚★★★★ 汽水域では産卵期の春に見られるが年魚でその後すぐに死ぬ。
ミミズハゼ幼魚〜成魚★★ 砂に潜るので姿が何日も見られないことがある。
ミナミヒメミミズハゼ幼魚〜成魚★★ 砂に潜るので姿が何日も見られないことがある。
イドミミズハゼ汽水型未成魚★★ 地中生活かと思っていたが割と砂上に出てくる。
ヒモハゼ幼魚〜成魚★★★ 他生物から攻撃されやすい。
マツゲハゼ成魚★★★★ ハゼ類の中では神経質で餌をなかなか食べない。
カマヒレマツゲハゼ成魚★★★★ ハゼ類の中では神経質で餌をなかなか食べない。
ミナミサルハゼ成魚★★  やや他魚との競争に弱いところがある。
ビリンゴ幼魚〜成魚★★ 特に問題なく特徴も少ない。
スミウキゴリ幼魚〜成魚 体の割りに口が大きいので他魚を食われないよう注意。
エドハゼ成魚★★★ 砂穴に入りたがるのでテッポウエビ類に攻撃されやすい。
チクゼンハゼ幼魚〜成魚★★★ 他魚から攻撃されやすい。
キセルハゼ成魚★★★ 他魚から攻撃されやすい。
クボハゼ成魚★★ 特に問題なく特徴も少ない。
ニクハゼ成魚★★★ ハゼ類にしてはやや気が弱いため混泳に注意。
アゴハゼ幼魚★★ 特に問題なく特徴も少ない。
ドロメ成魚 特に問題なく特徴も少ない。
マハゼ幼魚〜成魚成長が非常に速い。
アシシロハゼ幼魚★★★ ハゼ類の中では弱い。
マサゴハゼ成魚★★★ 砂礫やサンゴ砂が底だと居心地が悪そうに思える。
ノボリハゼ未成魚★★ 気が強くて他の魚を噛み付くこともある。
クチサケハゼ未成魚★★★ 特に悪さもせず癖も少ないが長期飼育は出来なかった。
ヒナハゼ幼魚〜成魚 雄同士の喧嘩で追い掛け回すが特に問題はない。
アベハゼ幼魚〜成魚何の問題もなく飼育できます。
アベハゼ×イズミハゼ成魚何の問題もなく飼育できます。
ゴマハゼ幼魚〜成魚 何故か大型魚と一緒に飼っても食われ難い。
ゴクラクハゼ幼魚〜成魚 特に問題なく特徴も少ない。
クロヨシノボリ稚魚★★★★ 食われるのかいつの間にかいなくなる。
クロダハゼ類(トウヨシノボリ型)稚魚★★★ 突然死がやや多い。
チチブ稚魚〜成魚他魚に激しく攻撃するため混泳は難しい。
ヌマチチブ幼魚〜成魚他魚に激しく攻撃するため混泳は難しい。
シモフリシマハゼ幼魚〜成魚 やや攻撃的なところもある。
アカオビシマハゼ幼魚 やや攻撃的なところもある。
ショウキハゼ成魚★★★ 元気かと思っていると突然死することがある。
タビラクチ成魚★★ 野菜類などを与えて約1年飼育した経験がある。
トビハゼ幼魚〜成魚愛嬌抜群で同種同士は喧嘩するが他種にはあまり悪さしない。
ヒゲワラスボ幼魚〜未成魚★★ 一見弱々しく見えるが強い。
コガネチワラスボ幼魚 砂を口に加えて運び底地形が変わるほど穴を空ける。
サツキハゼ幼魚〜成魚 日によってカキ殻から出たりこもったりする。
クロホシマンジュウダイ幼魚〜成魚丈夫で適応が早い。縄張り意識が強く他魚を攻撃する。
クロハギ幼魚 非常に臆病でいつも隠れているが確り大きくなる。
オニカマス幼魚★★★★× 輸送にやや弱く長生きしたこともない。
クロソイ幼魚★★★★ 汽水域へは偶来性が高く半海水での飼育は厳しい。
カサゴ幼魚★★★★ 飼育に強いが餌を選り好みする
ハオコゼ成魚★★★★ 飼育に強いが餌を選り好みする
マゴチ稚魚〜幼魚★★★★★× 水槽に馴染めず死ぬことが多い。
テンジクガレイ幼魚★★★★ 水槽にも馴染めず長期の飼育経験がない。
ヒラメ幼魚★★★× 輸送に弱いが採集から数日を乗り越えればベアタンク飼育も可。
イシガレイ幼魚★★★× 輸送に弱いが採集から数日を乗り越えればベアタンク飼育も可。
マコガレイ幼魚★★★★× 輸送に弱く水槽にも馴染めず長期の飼育経験がない。
ギマ稚魚〜幼魚★★★ 他の生物に狙われやすく混泳に注意。
クサフグ幼魚★★★ 皮膚毒の影響で水質が悪くなり他魚との混泳は不向き。
サザナミフグ幼魚★★★ 皮膚毒の影響で水質が悪くなり他魚との混泳は不向き。
大きさ : 飼育を試みた魚種の大きさ
飼育難易度 : 容易★ 普通★★ やや難しい★★★ 難しい★★★★ お手上げ★★★★★
成 (成魚まで60cm水槽で飼育できるか) : 可能○ 厳しい△ 不可能×
温 (水温33℃を超える真夏を乗り越えられるか) : 可能○ 厳しい△ 不可能×

60cm水槽

39cm水槽

ヨコエビ類を狙う
  
まずは捕れた魚を飼って見ましょう。失敗しても同じことを繰り返さないことが重要です。
  
汽水魚飼育の初心者におすすめはハゼ類で、非常に種類が多く60cm水槽以下でたいてい飼育できます。 カワアナゴ、ヒナハゼ、ゴマハゼ、タネハゼ、トビハゼなどは特におすすめです。 イダテンギンポやトサカギンポは飼い易くてかわいいしぐさが魅力です。 トサカギンポはカキ殻内に産卵して孵化したこともあります。 成魚は大きくなるが幼魚は飼い易いのはニホンウナギ、キチヌ、シマイサキ、コボラなどです。 コトヒキやイケカツオ(幼魚)は他魚の鱗を食べるため、単独飼育される場合を除いて持ち帰らない方が無難です。 チチブとヌマチチブは口に入る魚は食べ、口に入らない魚は齧る凶暴な一面があるので要注意です。 淡水で捕ったテンジクカワアナゴは汽水水槽で問題なく飼育できました。

●大型魚の幼魚飼育
 
  
成長して1mになったアカメ。飼えますか。それでもアカメを買いますか。
  
「日本の淡水魚 2版」によるとコボラは全長28cmでキチヌは全長50cmと大きくなる魚であることがわかります。 写真のキチヌは1年も経たないうちに2倍以上の大きさになり、もう1年も経てば60cm水槽では手狭になります。 本当は120cm水槽で飼育したいのですが、採水や管理など面倒を見れる余裕がありません。 60cm水槽で無理やり飼い続けるのは気の毒です。 「飼育できる方に譲る」引き取り手がいません。 「食べる」飼育魚を食べるのはかわいそう論以外に、与えてきた餌が人に害がないか心配です。 「標本にする」管理面の負担が大きいです。「処分する」残念ですが現段階では有力です。 こうした内容を記すと遺伝子汚染になるわけではないから「採集してきた場所に戻せばよい」という方がおられます。 飼育個体の放流は自然界で淘汰されたはずの劣勢個体にも繁殖の機会を与え、 キチヌ全体にとって良い影響をもたらしません。 水槽に別の地域から捕ってきた魚(コボラ)に付着していた病原菌や寄生虫がキチヌに取り込まれ、 それらと一緒に放流することになります。 2003年に問題化したコイヘルペスウイルスはその典型的なものでしょう。 これらの理由により飼育個体を採集地に戻してはいけません。 私はキチヌを採集したとき全長50cm近くになる魚だということは知っていました。 飼育者として最後まで責任を持って飼い続けるべきだと思っています (1年半で1尾は全長26cmで飛び出して死に、もう1尾は90cm水槽に移し変え、ヒーターが壊れて4年8ヶ月で死にました)。 大型魚を飼おうとされる方は私の失敗を思い出して下さい。 アカメ幼魚はよく売れるらしく乱獲されて問題になっていますが、 全長1m以上になることは図鑑などを見れば書いてあります。 成魚まで飼うには水族館並みの設備が必要でしょう。 それを承知で購入されているのか、飼えなくなったら自ら処理できるのでしょうか。 大きくなったからという理由で全国各地にペットが捨てられいますが、 アカメもその中に含まれていないことを願います。

●病気
 
  
この個体は何度か同じ症状が出て治ったけど、結局は薬で死なせてしまった…。
  
淡水魚と海水魚の飼育は病気の前兆や症状が目に見えてわかることも多いですが、 汽水魚は病気らしい病気はほとんどかかりません。写真のクロホシマンジュウダイのような症状は希で、 ヒーターで水温31℃にしたところ白い付着物は1日で綺麗に落ち、念のために薬(エル○ージュ)を入れたところ翌日に死にました。 これまで同じような経験は何度かありますが、強い薬のためクロホシマンジュウダイにとっては、劇薬になってしまったようです。 薬で治ることもあれば治りかけていた魚を死なすこともあり、水換えと加温でゆっくり治す大事さを改めて認識しました。 病原体によるものかわかりませんが、キチヌの鰭が充血して畳み気味になったりすることはありましたが、 この場合は水換えをするとたいてい治りました。

●混泳
 
  
この魚とこの魚は混泳できますか。という質問の答えはやってみないとわかりません。
  
これまで汽水魚を飼育して来て大半の死因は混泳の失敗です。 汽水魚は気の強い魚が多く、鰭齧りなどの外傷を確認した場合は、 直ちに別の水槽に分けないと翌日は瀕死ということもあります。 ほぼ同じ大きさのキチヌ3尾とコボラ1尾を飼育していたとき、 キチヌ1尾がコボラに突っつかれて鱗がボロボロになり数日で死にました。 やがてキチヌ2尾は成長してコボラよりも何倍もの大きさになりましたが、 コボラがキチヌを追い回して突っつく様子を何度も目撃しました。 その後にコボラは一緒の水槽にいたコボラよりも小さなトサカギンポらに齧られて死にました。 原因は餌やりを3日ほど忘れたために空腹で襲ったようです。 このように混泳の可否は一概に種類や大きさで判断がつくものではなく、 日頃から魚の様子をよく観察して、変化を見逃さないようにすることが大切です。