問題点 | 解説 |
病原体 |
水生の病原体が別水系へ広がる原因の多くは、人が安易に移動させたためです。
全国に広がったコイヘルペスウイルス(移入種)や冷水病(移入種)は国外から持ち込まれたと考えられ、
死亡率が高いため警戒されています。
例えれば鳥インフルエンザのような怖い病気で、自然界のどこにでもある風邪とは違います。
ヨシノボリが外見上は病気発症がなくとも保菌し、それを介して他の生物が感染する危険性もあります。
1匹のヨシノボリから大きな問題になる恐れがあります。
採集魚の病原体を駆除するため薬浴される方がいますが、
逆に自然へ戻す際に薬浴される方はいないでしょう。
仮に薬浴しても病原体が全て死滅するわけではありません。
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二枚貝 |
池から採集した二枚貝が水槽内でグロキディウム幼生を放出すれぱ魚に寄生します。
寄生されたヨシノボリを川へ放流すれば幼生が成貝になり、
池に元々いた二枚貝と交配して遺伝的な問題や生態系の破壊に繋がります。
幼生は視目できますが鰓の中に寄生されると、取り除くことは容易ではありません。
カワヒバリガイ属(移入種)は幼生が浮遊するため、元へ戻す際に混じった場合は大きな問題が起きます。
「環境省」によるとカワヒバリガイ属が吸虫類の第一中間宿主となり、
魚病被害が発生しているようです。
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混入 |
バケツに水槽の水を注いで、元の場所へ戻す魚を網で掬って入れると、
バケツの中には病原体の他にも、生物の卵や水草の種子など、様々な微小物が混入します。
大雑把な方は小さな巻貝や水草の断片が入っても気にされないでしょう。
観賞魚店で買った外来水草が混入して繁茂したら、取り返しがつかなくなるかもしれません。
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飼育水 |
バケツに水道水を使っても、魚を掬う時点で水槽の水は付着します。
細かいことのようですが、琵琶湖固有種のビワツボカムリ(原生動物)のようなプランクトンもいます。
「琵琶湖の自然史」によるとビワクンショウモ(緑藻類)は、
琵琶湖からの魚類の移植にともなって、数箇所で優先種になるほど増加しているようです。
緑色した水は藻の一文字では済まされません。
カエルのツボカビ症(移入種)は「WWFジャパン」が、
水槽の水は感染源となるため野外に排水することは禁物と訴えています。
タイワンシジミ(移入種)は「日本産淡水貝類図鑑(2)」によると、
家庭からシジミの砂だしや洗浄により稚貝が流れ出し、定着することが最大要因とされています。
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正確性 |
人の記憶は曖昧です。本当に川で捕ったヨシノボリでしょうか。
「あのときは湖にも寄ったけど、ヨシノボリはたぶん川だったはず」では問題が残ります。
間違えれば遺伝的な問題が発生する恐れがあります。
水槽から魚が飛び出して、隣の水槽に移動したと聞いたこともありますが、
隣り合わせの水槽にいたヨシノボリでは無いという確認が必要です。
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水槽育ち |
水槽で育った魚は自然で生き抜く力を身につけていなかったり、
警戒心が低くて他の生物に食べられやすくなっていたり、
そうした状態で急に自然に戻されてもかわいそうです。
川に戻したそばからオオクチバスに食べられたでは悲しいものです。
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移入魚 |
ヨシノボリは日本に19種類以上が知られ、移入で本来の分布域以外で見つかることもあります。
こうした移入魚は駆除の必要さえあるものですが、川に戻すヨシノボリは在来魚でしょうか。
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生態的地位 |
川に戻すのが数年後だった場合に、生物間のせめぎ合いで、ヨシノボリを採集した時に出来た隙間は埋まります。
そこに戻すのは新たにヨシノボリを入れるのと変わりません。
河川工事などで収容能力が減っていた場合に、多数のヨシノボリを戻したら、
これまで必死で生き残ってきた、ヨシノボリより弱い生物たちを減少させます。
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未知の影響 |
上述した様々な問題点が重なり合ったとき、予測できないより大きな影響が出る恐れもあります。
人が知らないことは未だ多くあると考えられ、そうした影響を未然に防ぐほうが賢明です。
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