濃尾平野の淡水魚(5)








ヒガイ(ビワヒガイ型)  国内移入種
ヒガイ(ビワヒガイ型) or ヒガイ(ビワヒガイ型)×ヒガイ伊勢湾周辺種
 Sarcocheilichthys variegatus f. microoculus Mori, 1927
   
    
    
    
  

近付くと俊敏に逃げた

カニとりくんで捕獲
今のところ多くは見つかっていません。 写真は全て同じ産地の個体で、アユの放流などによって進入したと考えられます。 尾柄高÷頭長はカワヒガイ>49%>ビワヒガイとされていますが、 これまで同水域において5個体を計測したところ何れも47%以下で、 尾柄高(9.8mm)÷頭長(23.8mm)=約41%という個体も確認しています。 在来のヒガイ伊勢湾周辺種と交雑が起きていることも考えられます。 特に最下段の2個体は交雑ではないかと思われます。



ヒガイ伊勢湾周辺種
 Sarcocheilichthys sp.
   
    
    
    
    
    
   
   
 
婚姻色の出た雄が横切る 雌を追尾する雄
病原体が原因なのか痒がる 群れが来た
生息水域は広いですが生息数は多くありません。クロダイのいる汽水域でも見られます。 岐阜県では春に婚姻色の出た個体をサクラバエと呼び、美味しいとされますが私はあまり好みの味ではないです。 ヒガイ類は遺伝的に、従来のカワヒガイ(伊勢湾周辺以外産)・ビワヒガイ・アブラヒガイと、カワヒガイ(伊勢湾周辺産)の2つに大別されます。 そのうち前者は「ヒガイ」で良いですが、後者はヒガイ属の一種としか言いようが無く、ここでは分かり易くするため、ヒガイ伊勢湾周辺種と表記しました。



カマツカ
 Pseudogobio esocinus (Temminck and Schlegel, 1846)
  
   
    
 
画面下方で口をもぐもぐ ヒガイ伊勢湾周辺種と一緒に泳ぐ
1匹が2匹で戻って来た 水草が頭に当たる
泥煙に驚いて逃げる 痒がる
生息水域も個体数も多く普通に見られます。



ナガレカマツカ
 Pseudogobio agathonectris Tominaga and Kawase, 2019
    
    
  
   
 
水流が好き 水流が大好き
野菜類ミックスを食べる(飼育4年余り)

カマツカ×ナガレカマツカ
  
   
カマツカと混生し、生息水域は限られています。



ツチフキ(JL)  国内移入種
 Abbottina psegma Jordan and Fowler, 1903
   
   
   
    
 
砂を吹いています 餌を口で転がす
砂上にいるのを手掴み 左から右へ移動する
流れに押される 野菜サプリを食べる
ホトケドジョウに動じず
生息水域も個体数も徐々に拡大して、大河川から用水路まで見られるようになりました。 文献によってツチフキは濃尾平野が自然分布とされたり移入種とされるなど見解が異なります。 ツチフキは主に岐阜県で見つかることが多いですが、 岐阜県内の膨大な方言を集めた「続・私のまわりの魚たち」を基にかつての状況を考察したところ、 方言名としてカマツカ46名称、ゼゼラ6名称あるのに対して、ツチフキは全くありませんでした。 濃尾平野でツチフキは徐々に生息範囲を拡大している印象が強く、 以前は未確認だった水域から突如として採集することがあります。 これらから考察してツチフキは移入種として扱うのが妥当と考えられます。



ゼゼラ河川集団
 Biwia zezera subsp.
   
    
    
   
   
   
   
    
   
    
    
    
    
 
ひたすら底を突く 急に体をひねって泳ぎ出す
手掴みに失敗 手掴みに成功
底をつついて食物を探す よく見ると4匹います
スゴモロコと一緒に泳ぐ

ゼゼラ類(ゼゼラ, ゼゼラ河川集団, or 雑種)
 
冬場は広い地域で見られます。従来ゼゼラは1種とされていましたが「Kawase and Hosoya, 2010」により、 ゼゼラ Biwia zezera と ヨドゼゼラ Biwia yodoensis の2種に分類されました。 ゼゼラは側線鱗数36〜38枚で濃尾平野、琵琶湖、淀川流域、山陽地方、九州北部に分布。 ヨドゼゼラは側線鱗数33〜35枚で琵琶湖(絶滅?)と淀川流域に分布。 濃尾平野はゼゼラの分布域とされていますが、 私が濃尾平野で確認した多くの個体は、側線鱗数34〜35枚で他の形態もヨドゼゼラに近い印象を持ちました。 琵琶湖と淀川流域以外のゼゼラ属はまだ研究段階にあるそうで、ヨドゼゼラ提唱者と相談し、 濃尾平野、山陽地方、九州北部に分布するゼゼラ属を、当サイトでは「ゼゼラ河川集団 Biwia zezera subsp.」として扱うことにしました。 「魚類学雑誌54巻2号(2007.11.26)」によると、遺伝的に濃尾平野では、在来のゼゼラ河川集団と移入のゼゼラが確認され、交雑もしているようです。 ゼゼラと交雑していることから、濃尾平野のゼゼラ河川集団は、ゼゼラの亜種以下と捉えられるかもしれません。 特に最下段の個体は交雑ではないかと思われます。