ウナギの蒲焼(3)





七輪やBBQコンロは臭い!!

七輪やBBQコンロは、表面が焦げやすく、身と皮の間まで、確り焼くことが困難で、臭みが残ります。 一口目に煙による香ばしさで、味は良く感じますが、後から来る臭みで、全て台無しになります。 煙が酷いため、屋外でしか使えませんし、全身が燻されて、しばらく臭いが取れません。ようするに、臭いウナギを食べて、全身も臭くなります。 魚は炭火が良いに決まっている。そう思う方はサンマを七輪で焼いてみて下さい。 網に皮が張り付いてぼろぼろ、焼きむらが酷い、中まで火が通らない、想像と違うものになると思います。 サンマで失敗するのですから、焼きの難しいウナギではなおさらです。

関西流の鰻屋さんは、串で浮かせて、遠火で焼きます。七輪やBBQコンロは、網に乗せて、近火で焼きます。これは全く違うものです。 浮かせると均一の熱で、全体をゆっくり焼けます。 網に乗せると、高温の網に触れた場所から、すぐに焦げ始めますが、周りは焼けていません。 網目模様の付いたステーキを想像して下さい。ウナギはレアやミディアムだと臭いため、ベリーウェルダンまで焼かないといけません。 しかし、網に乗せてベリーウェルダンまで焼くと、表面が焦げて苦くて食べられません。 そのため七輪やBBQコンロで作る蒲焼は、レアやミディアムになりがちで臭いのです。

炭火などの高温加熱は臭みを閉じ込める。
七輪
炭火
超高温(700〜1200℃)
魚焼きグリル
ガス火
やや高温(300〜400℃)
フィッシュロースター
遠赤外線ヒーター
適温(220〜280℃)
オーブントースター
遠赤外線ヒーター
適温(200〜250℃)
蒸す
蒸気
低温(50〜120℃)
臭みの主な原因は、身と皮の間にあるコラーゲンで、天然ウナギは皮が厚いため、養殖ウナギよりもじっくり確り焼かないと融解しません。 150〜250℃程度が適温だと思います。炭火は超高温なため、すぐに表面を焼き固め、水分と一緒に臭みも閉じ込めます。天然ウナギに炭火を使った関西流は不向きです。 それでも屋外でBBQコンロを囲んで、みんなで蒲焼を作るのは楽しいです。 BBQコンロでも関東流のように、素焼き→蒸す→たれ焼きにすれば、臭みが取れると思います。 BBQコンロで関西流は難しいですが、ウナギの幅よりも広くて多めの炭を敷き、空気口からの空気を少なくし、 低温で均一に保つと、まずは焼きむら問題が解消されるでしょう。 そして金串(竹串は焦げ落ちる)に刺し、串台などで浮かせて遠火にし、じっくり確り焼いたら、臭みが取れるかもしれません。


確り焼くことが重要

時間(分)0510152025303540455055606570
45〜50cm
50〜55cm
55〜60cm
60〜65cm
65〜70cm
70〜75cm
75〜80cm
80〜85cm
生  確り焼けた  霧吹き  たれ  完成
ウナギは適当に焼いて、たれを付ければ、良いと思っていませんか?
サケ・サバ・サンマなどを焼くのとは全く違います!

完成までの目安時間は、全長45〜85cmのウナギで、
確り焼く20〜55分+霧吹き5分+たれ焼き10分
完成まで35〜70分(冷凍は+5〜10分)は掛かります。
複数個体を同時に焼くと、より時間が掛かります。

火力が強くて、早く出来そうな場合は、弱めてじっくり焼きます。
臭いは時間を掛けるほど、気化して臭くなくなります。
段階 A B C D E
時間 0分 5分 16分 23分 32分
状態 生期 不安定期 安定期 焼けた気がする期 確り焼けた期
解説 生の状態から、確り焼けるまでは、約60%くらいに縮みます。 丸まりやすく、頻繁に引っ繰り返して、真っすぐ安定するようにします。 身が白くなって、形が安定し、水分が飛び、粘液が焦げて、かすが出ます。 少し焦げ目が出来て、薄く脂が出て、確り焼けたと、間違われやすい頃です。 脂が抜け落ち、軟らかくて身割れが始まる頃で、焦げる寸前が目安です。
ウナギは臭い魚です。その臭みはだいたい「確り焼く」で8割、「たれ焼き」で2割を消すことが出来ます。 ウナギは小骨の多い魚です。その小骨は「確り焼く」だけで、気にならなくなります。 逆に言えば、確り焼かないと、臭くて小骨が気になって不味いです。D段階でたれへ進む方が多い印象です。 これ以上に焼くと、焦げるのではないかと、不安になるかもしれませんが、まだ全く焼けていません。 尾鰭付近を除いて、簡単には焦げないため、我慢して焼き続けて下さい。 ウナギは確り時間を掛け、焦げ始める直前まで焼くのが、臭みを消して、味を向上させる、最も重要な工程です。

●確り焼くか蒸す
よくある失敗例 時間(分)024681012 141618 臭い
臭み
工程 素焼き たれ焼き
関西流 時間(分)024681012 1416182022242628 303234363840臭くない
臭み
工程 素焼き 確り焼く たれ焼き
関東流 時間(分)024681012 1416182022242628 303234363840 4244464850 525456臭くない
臭み
工程 素焼き 蒸す たれ焼き
関東流は「蒸してから焼く」のではなく「素焼き→蒸す→たれ焼き」です。 最初から蒸したら、臭みは取れませんし、茹でたウナギにたれを付けるのと、そんなに変わりません。 工場生産の蒲焼は「蒸す→素焼き→蒸す→たれ焼き」と2回蒸すこともあります。 蒸すのは余分な脂を落とすためではなく、素焼きで取りきれない臭みや、ゴムの様に硬い皮を処理しているのです。 蒸すが無い関西流は「素焼き→確り焼く→たれ焼き」で処理しています。 そのため関東流の蒲焼は焦げ目が少なくて黄色、関西流は焦げ目が多くて茶色になります。 鰻屋さんの99%以上は養殖ウナギで、普通は15〜60分ほど蒸されています。 天然ウナギは皮が厚くて硬いため、より長く蒸す必要があります。上の模式図はウナギ全長55〜60cmを焼いた場合です。


串打ち

関東流「素焼き→蒸す→たれ焼き」は短い竹串、関西流「素焼き→確り焼く→たれ焼き」は長い金串が多いです。 串打ちは浮かせて焼く場合で、網に乗せる場合は不要です。 串打ちして網に乗せる場合は、串で身が千切れたり、焼きむらが出来たり、抜く際に身崩れするなど、問題の方が大きいです。 串打ちすることなく網へ乗せる場合は、焼き初めに丸まりやすく、トングで頻繁に引っ繰り返す必要はありますが、その後に大きな問題はありません。

●蒲焼はバーベキューではない
形状は東西どちらも丸串か角串が良く、平串は綺麗に刺せずに抜け難いです。 関東流は竹串で身の中心を通し、場所による厚みの違いで、縫うような刺し方になります。 関西流は確り焼けて来ると、金串が身を割って外れやすく、 それを防ぐためにやや皮に近い場所へ刺します。 皮側に少し突き出しても問題はないですが、身側に串が見えるようならばやり直します。 東京にあるテレビ局は、関東流を放送することが多く、竹串に刺さったウナギを、何度も引っ繰り返す映像を目にします。 こうした場合に関東流か関西流なのかを、認識せずに記憶すると、東西の焼き方が混ざった状態で、蒲焼を作ろうとして失敗します。 BBQコンロに乗せて竹串で焼くというのは典型的な誤りです。 素焼き後に蒸すことなく、竹串で確り焼くことも出来ず、東西どちらの必要工程も飛ばして、臭い失敗蒲焼を作ることになります。


皮を軟らかくしたい

飯蒸し
手順最も熱々で軟らかくなる方法 補足
1 丼鉢にご飯とを少し入れる。 丼鉢は深くて広い物。水は蛇口シャワーに2回潜らせる程度。
2 ラップをして電子レンジで熱々にする。 オート温めではなく、最大出力でご飯から泡が出て、手で触れないほど加熱。
3 完成した蒲焼の皮側を、ご飯に張り付けるように乗せる。 皮が少しでも浮いたところは軟らかくなりません。
4 隙間の無い様にラップをする。 完全に隙間が無いと、ラップは凹みますので、程よい加減にします。
5 保温バッグへ入れて閉める。 弁当箱用の保温バッグ(100均)。無い場合は乾いた布巾を被せる。
6 10〜12分ほど待つ。 8分以下は軟らかくする効果が弱い。14分以上はご飯が冷め始める。
7 たれを耐熱計量カップに入れ、電子レンジで温める。 急に沸騰するため、注意深く見続けて、良い加減で止めて下さい。
8 保温バッグから丼鉢を取り出してラップを外す。
9 たれをウナギにまんべんなくかける。 ご飯にはウナギから落ちた量で十分です。
10 熱々で皮は軟らかく、身はサクッ感も残って美味しい!!
蒲焼の多くは「皮は硬く、香ばしくて強い味」か「皮は軟らかく、物足りない味」のどちらかに成りがちです。 飯蒸しは「皮は硬く、香ばしくて強い味」として作った蒲焼を、「皮は軟らかく、香ばしくて強い味」に変えられます。 方法は上記の手順通りで、硬くなった皮が熱々ご飯に触れて軟らかくなり、身へたれをかけることで、強い味が戻ります。

●霧吹き
確り焼けた後は、臭みは無くなり、味は良くなりますが、ウナギの脂で揚げられて硬くなり、水分は抜けてパサパサになります。 そこで関東流は蒸して、水分を戻すのですが、一般家庭では蒸し器を出す手間と、30〜60分も掛かり、 上手にやらないと身崩れしたり、脂や旨味も流れ落ちてしまいます。それと比べて霧吹きは、手間要らずで、時短で簡単です。 水ではなく酒を使うと、軟らかくする効果は弱まり、身に酒の臭いが残って、表面に焦げが出来るため、失敗の原因になります。


味の違い

蒲焼の味は部位によって4つに大別できます。 前腹は内臓がある分だけ身が薄く、腹骨は硬さを感じます。 後腹は前腹よりも少し身が厚く、腹骨も少し軟らかいです。 前尾は身が厚くて脂が多く、小骨が気にならず、軟らかくて最上の部位です。 後尾は前尾ほど脂は多くなく、身が薄いため皮の味が強くなります。

●天然 vs. 養殖
全長(cm)304050607080以上
天然
養殖
天然
養殖
天然
養殖
味(点)0102030405060708090100
天然
養殖
「天然ウナギと養殖ウナギはどっちが美味しい?」という比較をよく目にしますが、 養殖は全長40〜50cmと揃っていますが、天然はそれ以下やそれ以上もいるため、 身の厚みや骨の太さが異なり、公平な比較ができません。 仮に同程度を比較すれば、確実な違いは皮だけで、天然が厚くて硬く、養殖が薄くて軟らかいです。 脂は量が同じ場合、養殖の方が濃くてしつこく、天然は薄くてあっさりが多いです。 総合的な判断の味は、養殖は70〜80点で安定していますが、天然は20〜100点と幅が広く、洗剤臭などで食べられない0点までいます。 ただ、養殖で100点やその近くを食べたことがありません。 ようするに、養殖は全体的に美味しく、天然は不味いから絶品までいる。 どっちが美味しいかは一概に言えません。


煙の臭いを取る

蒲焼を焼くと多くの方法で臭いが出ます。煙が壁などに付着して、1〜2日は臭いが残り、酷い場合は1週間ほど消えません。 消臭スプレーを使うと、その臭いが気になることもあります。ここでは簡単で効果が高かった、ペットボトルの濃いお茶を使う方法を紹介します。 ペットボトルの濃いお茶を、500mlほど鍋などへ入れて沸騰させます。それを臭いが強い場所の床に置きます(鍋敷きや丼鉢などに乗せる)。 3分くらいすると湯気が出なくなります。再び沸騰させて別の場所へ置きます。これを繰り返して、3〜4箇所で使えます。 費用は(ペットボトル2Lのお茶約160円÷4)+(ガス代約10円)=約50円です。この方法は焼肉後の消臭にも使えました。

●ペットボトルのお茶の方が良い
普通の緑茶と緑茶ティーバッグは、消臭効果が弱かったです。緑茶をフライパンで炒ったものは、ほとんど効果が無かったです。 これらよりもペットボトルの普通のお茶を使う方が効果がありました。 ペットボトルの濃いお茶を、3回沸騰させてものを、飲んでみたところ、味がほとんどしませんでした。 もったいないですが、出涸らしは捨てるしかなさそうです。


Q & A


泥抜きはどうやればいいですか?
【不要】 臭み消しには無意味で、味を落として、費用・場所・手間・時間が掛かります。
参考:「ウナギの保存方法」

皮のぬめりは取らなくていいの?
【取らなくて良い】 臭みの原因ではないです。ぬめりは熱に一番近く、最も早く焼けて、臭みが消える場所です。
【勝手に取れる】 ウナギをホイルなどに置く焼き方だと、勝手に剥がれ落ちます。串打ちすると焼き付きますが、味や臭みに影響はありません。
【どうしても取りたい】 冷凍すると水洗いで取れます。生体に熱湯を掛けても取れますが、 大暴れするため、あまり掛からなかった部分は取れず、掛かり過ぎた部分は皮が割れます。 ウナギは熱湯後も生きているため、包丁でぬめりを削ぎ取るのは、手を切りそうになります。 そのために捌いた後で、まな板に皮側を上へ向けて置き、熱湯を掛けて包丁で削ぎ取ります。 熱湯を掛け過ぎると皮が丸まって、焼きが失敗しやすくなります。

臭みを取るのに一番重要なのは?
【確り焼く】 30〜60分は確り焼く。もしくは30〜60分は蒸す。ウナギは普通の魚ではないです。
参考:「確り焼くことが重要」 「2016/5/21 11:55:19」

たれは継ぎ足すほど良い?
【差別化】 100年継ぎ足しのたれと、今日作ったたれ、どちらが食べたいですか。これは味の比較ではなく、鰻屋さんの宣伝と差別化です。
【腐ります】 一般家庭では鰻屋さんのように毎日使いません。特に焼いたウナギの頭や骨を入れたり、 蒲焼に使ったたれを戻すと、酸化して腐るのが早まります。冷蔵庫で保管しても1週間と持ちません。 それを非加熱でご飯に掛けると体を壊します。シンプルに作ったたれであれば、数箇月は冷蔵庫で保管できます。
【10年以上継ぎ足し】 実験的に2008年頃から10年以上も、注ぎ足しているたれを使っていますが、出来立ての方が良いです。たれは古くなると醤油の風味が飛びます。
参考:「うなぎのたれ」 「創業時のタレは残っていない」

フィッシュロースターなんて持ってません。初心者でも出来る簡単な焼き方は?
【オーブントースター】 一般的な家庭に1台はあると思います。手軽に出来ます。後で食パンを焼いても、臭い移りはあまりないです。
参考:「オーブントースターで蒲焼を作る!」