長良川河口堰





●はじめに
長良川河口堰の上流と下流は禁漁区です。ただし、調査は行われているようで、長良川河口堰の左岸側にあり、 資料館的な役割を果たしている「アクアプラザながら」に調査報告書が公開されています。 私は長良川河口堰の是非を問う前に一度訪れて見ていただくことをおすすめします。 今後も私は河口堰に関して自分の目で確かめて様々なことを判断していこうと思っています。

●魚道
魚道観察室やせせらぎ魚道において、大量に魚が遡上している様子を目撃することがあります。 これだけを見ると河口堰は一見問題ないように思えます。 しかし、魚道として魚が遡上できる場所は本体の両脇にわずかに設置してある程度で、 逆を言えば全てのゲートが上がっていたら、比にならないほど多くの魚たちが移動可能であったことは間違いないわけです。 魚が移動できる領域が魚道のみとするならば、 大型河川である長良川は砂時計のように一部が小川となり、海との繋がりを狭められてしまったと考えられます。

●有用魚種
特に有用魚種には配慮したとされる長良川河口堰ですが、それらすら最小限の影響で済んでいるのでしょうか。 魚は生態的に季節が大きく影響していますので、例えば有用魚種であるアユが中・流域で産卵して、 海へ出ようとして河口へ向かっても堰があるために出口が狭く、 すべてのアユがある特定の時期までに、完全に出ることができない可能性があります。 また、堰のすぐ上流は水の流れが弱く、本来の海へ移動する際に必要とした期間より、 時間を要すると考えられ、その際に堰上流の淡水域は汽水域や海水域よりも餌のプランクトン量が乏しく、 死亡率が増大すると考えてもよいと思います。たとえ堰から海へ出ることが出来たとしても、 春の遡上期には堰がその遡上を速やかに行うことが難しく、 そういった面でアユたちの減少にも繋がっていると考えられます。 これらのことは有用魚種のアユだけに言える事ではないのは言うまでもありません。 ちなみに、私は何度となく河口堰の魚道観察室などに足を運びましたが、 もう1つの代表的な有用魚種であるサツキマスは1度も見たことがありません。

●河口堰の水はどこへ?
河口堰で堰き止められた水は、三重県や愛知県の知多半島に水道水などとして利用されているということは、 私も報道などを通じて知っていたのですが、「アクアプラザながら」の職員の方にお話を伺ったところ、 三重県に関しては、その方は詳しくはわからないとのことでしたが、 知多半島に関しては、河口堰から地下を通ってサイホン方式で、 愛知県知多市にある佐布里池(そうりいけ)に辿り着くとのことです。 この池には木曽川から取水している愛知用水からの水も導入されています。 以前から木曽川の魚が愛知用水によって知多半島など各地に移動しています。 オオクチバスも愛知用水がその分布を広げた要因の1つとも言えると思います。 魚が生きたまま河口堰から佐布里池へ移動する可能性を職員の方にお聞きしたところ、否定は出来ないとのことです。 ようするに、木曽川系の愛知用水の魚と、長良川の魚がこの佐布里池には生息していると推測されます。 池には流れ込んでいるが、落差があるために池から長良川へ逆に遡上する可能性は低いようです。 しかし、佐布里池は愛知用水の水瓶的な役割を果たしていて、 その水が知多半島南部の地域まで流れ込みます。その結果、知多半島南部で長良川の魚が捕れる可能性があるわけです。 これは知多半島の在来魚たちにとってなんらかの影響が出る可能性を十分に秘めています。 愛知用水によって知多半島独自の魚たちの遺伝子はすでに崩壊している可能性がありますが、 コクチバスに代表されるような国外移入種が長良川で増えた場合は、 知多半島にもその悪影響が出ると考えると心配です。

「アクアプラザながら」などの詳細は、長良川河口堰ホームページで情報提供されています。



●アクアプラザながら
【01】 (2001.06.三重県)
長良川河口堰の駐車場内の立札です。掲載許可を得ています。
【02】 (2001.06.三重県)
河口堰から撮影したアクアプラザながらです。資料館的な役割をしているところです。観光地の1つになっている感もします。

●全体
【01】 (2000.07.三重県)
右側が上流です。
【02】 (2000.07.三重県)
通常車両は通行できませんが、堰の上には広い道があります。自転車は走行可能で、アクアプラザながらでは三輪自転車をレンタルしています。
【03】 (2000.07.三重県)
上流には国道1号線の走る伊勢大橋が見えます。
【04】 (2000.07.三重県)
右側が上流で魚道観察室が右下にあります。
【05】 (2000.07.三重県)
右岸には噴水があります。後ろの橋は伊勢大橋です。
【06】 (2001.05.三重県)
右岸からの撮影で、上流側と下流側の水位の違いがわかると思います。堰とは高さの低いダムと考えてよいと思いますが、それがわかります。
【07】 (2001.05.三重県)
養老山地と左側に見える川は揖斐川です。
【08】 (2000.07.三重県)
手前の川は揖斐川で長良川と隣接して河口は繋がっています。

●左岸呼び水式魚道(一部デニール式)
【01】 (2000.07.三重県)
真中の激流を避け両脇の魚道へと導かれる仕組みになっています。
【02】 (2000.07.三重県)
下流側です。左下に見えるのはサギ類で魚を狙っていました。他には鵜なども見られました。この狭い範囲の遡上スペースでの鳥害は少なからず影響があると考えられます。
【03】 (2001.06.三重県)
大雨による魚道閉鎖時です。ゴミが漂っています。
【04】 (2001.06.三重県)
大雨による魚道閉鎖時です。潮の影響は閉鎖時でもあるため、ゴミが移動します。

●呼び水式魚道観察室
【01】 (2000.08.三重県)
スゴモロコやヨシノボリ類が多く見られました。
【02】 (2000.07.三重県)
アユがのぼろうとしているところです。水は濁っていることが多く、向こう側の壁が見えたことはありません。
【03】 (2001.05.三重県)
春に見られるカマキリです。ボラなどを捕食している様子も見ることがあります。
【04】 (2001.05.三重県)
ゲートを遡上しようとしたカマキリがテナガエビに捕まって食べられている様子です。遡上時に泳ぎの鈍いものはゲートで待ち構えているナマズ、ヌマチチブ、テナガエビなどに捕食されることがしばしばあります。
【05】 (2001.06.三重県)
魚道が締め切られたために、酸素が不足しニホンウナギなどの魚が水面に呼吸しようと上がって来ていました。
【06】 (2001.06.三重県)
梅雨期には増水で魚道が閉鎖され、大量のゴミが流れ着いていました。
【07】 (2001.06.三重県)
増水による魚道閉鎖時に流れ着いたゴミの上にいるモクズガニ。

●ロック式魚道
【01】 (2000.07.三重県)
左側が上流でゆっくりとゲートが下がっていきます。上層部を遡上していた生物は1度も確認してません。
【02】 (2001.06.三重県)
大雨の際には開放されます。

●ロック式魚道(閘門兼用)
【01】 (2001.05.三重県)
上流から見た右岸にある閘門です。
【02】 (2001.05.三重県)
舟が実際に閘門を利用しているところです。上流は河口堰があるために静水で水上バイクで遊んでいる人を良く見かけます。そういう人も閘門を利用しています。
【03】 (2001.05.三重県)
右側の通路から閘門へ一般の人も上ることができます。

●右岸呼び水式魚道(一部玉石魚道)
【01】 (2001.05.三重県)
立入禁止区域になっているため、堰の上や離れたところからしか見ることはできません。魚道観察窓のようなものがありますが、一般には利用できないようです。

●せせらぎ魚道
【01】 (2001.05.三重県)
ゴム引布製起伏堰が水位によって開閉するようです。
【02】 (2001.05.三重県)
満潮時の撮影ですが、その名通りせせらいでいて、河口から急にこのような環境に遡上する魚は違和感がないのか疑問です。
【03】 (2001.05.三重県)
コの字型の鳥害防止ブロックが島状に並んでいます。全く効果がないとは言えませんが、危険は少なくなると思われます。
【04】 (2001.05.三重県)
かつてこのあたりは汽水でした。しかし、汽水には棲まないタニシ類が見られます。淡水化していると思われます。
【05】 (2001.05.三重県)
職員の方はコイと仰っていましたが、ボラとニゴイ類と思われます。
【06】 (2001.05.三重県)
河口堰右岸ではすぐに揖斐川と繋がります。


参考・引用文献 ※不備がある場合は改めますのでお手数ですがご連絡ください。
□ 長良川河口堰 魚道 魚たちの通る道 水資源開発公団・長良川河口堰管理局
□ 日本自然保護協会報告書85号 長良川河口堰が自然環境に与えた影響 財団法人 日本自然保護協会 発行 1999.7