同定できる写真撮影(1)





はじめに

魚の同定に役立つ撮り方を紹介します。 綺麗な写真が撮れないのは、決してデジカメのせいではなく、撮影方法の問題だと思います。 私は「ノーマルのマクロモード」で撮影しています。 魚がよく動く場合は連続撮影モードしたり、電球下では電球モードにすることはありますが、 他の設定はほとんど変更しません。基本は半押しでピントを合わせ、撮影するだけの単純な操作をしています。 特に小魚(全長15cm以下)は、デジカメの性能に頼って撮るのではなく、 「綺麗に撮影できる状態」にすることが大事です。 それには強い光やアクリルケースを使うことです。


同定できる写真に必要なもの

川で採集して小魚を撮影しようすると、バケツの上から撮るか、手に乗せて撮るくらいになります。 たいてい鰭がたたんで、口髭の有無も確認できなくなります。同定の際に必要な部分が見れません。 また、魚体に付いた水が反射して白化したり、景色が写り込むこともあります。 更に手に乗せた魚が飛んで、地面に落ちて怪我や死んだりします。 それを避けるために、小さなケースなどへ入れて撮りますが、 一般的なホームセンターや観賞魚店で売られているプラスチックケースは、 透明度がやや低い、強度が弱くて割れやすい、細かい傷が付きやすいなど、撮影用水槽としては不向きです。 そこで透明度が高くて強度があり、傷が付き難いアクリルケースを使います。 以降はアクリルケースで撮ることを前提に記述を進めます。

●そのままとアクリルケース

写真は2枚とも同じ個体です。上はタオルに乗せ、下はアクリルケース(N-1600FB)で撮りました。 同定できる写真とは、見た目が綺麗かどうかではなく、 1枚の写真にどれだけ多くの識別点を見せることが出来るかです。 人は顔を見て識別しようとするため、魚も顔つきだけで同定できると思われることがあります。 それは間違いです。魚の多くは吻端から尾鰭後端まで、1つ1つ特徴を見ないと同定はできません。 そのためにも識別点を意識して撮る必要があります。

●水道水
 
川の水をアクリルケースへ入れると、ゴミが浮いて濁っていることも多く、ピンボケした画像になりやすいです。 そのためペットボトルなどに水道水を詰めて持って行くと、クリアな水でピントも合いやすくなります。 アクリルケース(N-1600F)であれば手で魚だけを容易に取り出せるため、水道水を複数の魚の撮影で使うことが出来ます。 従来型のアクリルケース(ミルソー)は手が入らず、魚と水を一緒に取り出す必要があるため不便です(次頁参照)。 汽水魚には水道水が使えないため、写真右のように筒状のものに濾過ウールを入れ、そこに川の水を通して使うことで、ある程度は綺麗な水で撮影することが出来ます。


光の重要性

 
飼育用水槽では魚が泳ぎ回るため、尾鰭が曲がったり、斜めに写ったりします。 また、水槽用蛍光灯だけでは、光が弱くてピントが合いません。 水槽の魚を綺麗に撮ることは非常に難しいです。 写真は「第32回魚類自然史研究会」で内山りゅうさんが、 実演講座で撮影法を紹介して下さった際の様子です。 水槽の上には蛍光灯とスレーブフラッシュ4つ、斜め上からフラッシュが光ります。 撮影には上方向からの強い光が大切なのです。 しかも、底砂は白色で水槽奥ほど高くなり、背景に石を置いて狭くなっているため、 魚が手前に集まりやすく、マクロ撮影で狭くなる被写界深度に対応しています。

●屋外での撮影(明)

強い太陽光があれば、明るくピントの合った写真が撮れます。太陽光が強すぎる場合は、アクリルケースを回して良い位置を探します。 非常に良い撮影環境ですが、曇っていたりしてタイミングが少なく、朝焼けや夕焼け時の撮影は、写真が橙色ぽくなってしまいます。

●屋外での撮影(暗)

いつも都合よく強い太陽光はないため、そういう時はライトをアクリルケースの上へ乗せると、暗い中よりかは綺麗に撮れます。 それでも光が弱いため、ピンボケになりやすいです。 どうしてもピントが合わなかった場合は、フラッシュ撮影も良いですが、魚本来の色は失われます。

●屋内での撮影

スレーブフラッシュなどがなく、屋内で撮影する場合は、強い光を出すライトの下で撮ります。 水槽用蛍光灯をアクリルケースに乗せたくらいではピントが合わないため、強力な光を出すACライト(300W)が良いです。 これで上から常にフラッシュを当てたような状態になります。 ピントは合いやすいですが、電球色を抑えられる(電球モードなど)デジカメでないと、 魚も電球色ぽくなります。また、火傷するほどの熱を放つため、気泡が出て水がだんだん温まり、 長く使っているとアクリルケースが溶けます。