繁殖実験





■産卵用水槽にした期間
1999年3月24日(開始日)〜1999年6月30日(終了日)。関わった人は私と家族などです。 A〜D水槽とE水槽のウシモツゴは産地が異なります。

■水槽の環境
太陽光は水槽の南側から半透明なプラスチック板を通してA・C水槽のみ当たり、 他の水槽は直接的に当ることはなかった。夜に蛍光灯を照らすこともあった。 水代えの際に中和剤を使ったが、それ以外の薬剤類は使用しなかった。 水温やペーハーの管理も行わなかった。 水が著しく悪化することはB水槽(開始日から約2週間)以外は1度もなかった。 水槽付近は外気よりも若干高くなり水温にもそれが繁栄された可能性が高い。 水槽には荒砂を4〜5cmの高さになるように敷き詰めた。 A・C水槽には藻類がガラス面などに多く付着していた。 餌は不定期(基本的には1日1回)に与え、鮎育成配合飼料や冷凍赤虫が主で、 生きたイトミミズ類や金魚用飼料も希に与えた。 水槽にウシモツゴ以外の水生生物は放さない(D水槽は除く)ようにした。 ただし、餌のイトミミズやそれに混じった小型の巻貝類が僅かに生き残っていることもあった。

■産卵床用設置物

産卵(産着卵)に適すると考えて水槽に設置したものです。
【a】小型の植木鉢を横倒しにしたもの。
【b】小型の植木鉢を横倒しにして、その底になる面を一部割ったもの。
【c】小型の植木鉢を一部割って水槽ガラス面などに立てかけたもの。
【d】鑑賞魚用の長さ約15cmの筒状の陶器。
【e】鑑賞魚用の長さ約15cmの筒状の陶器で側面に穴が1箇所あるもの。
【f】鑑賞魚用の長さ約15cmのT字状になった筒状の陶器。
【g】鑑賞魚用の長さ約15cmの筒状の陶器で側面に穴が開き開口部が狭いものを約45度の角度で砂に刺したもの。
【h】鑑賞魚用の陶器で、樹木の根の形をしたもの。
【i】鑑賞魚用の陶器で三角形で幾つも穴が開いたもの。
【j】大人の両手ほどの石を約45度の角度で水槽ガラス面に立てかけたもの。
【k】B5用紙程度の2つの石を互いに立て掛け、三角形の隙間ができるようにしたもの。
【l】長さ約20cmで直径約12cmのエンビパイプを横倒し、底面を安定させるために一部を切断したもの。
【m】長さ約20cmで直径約10cmのT字状のエンピパイプを横倒しにしたもの。
【n】長さ約20cmで直径約7cmのY字状に穴の開いたエンビパイプを横倒しにしたもの。
【o】長さ約20cmで直径約2cmのエンビパイプ5本を連続して敷砂に突き刺したもの。
【p】長さ約30cmで幅約10cmの雨どいを約45度の角度で水槽ガラス面に立てかけたもの。
【q】長さ約20cmで幅約10cmの雨どいを横にして水槽ガラス面に立てかけたもの。

■産着卵確認日とその状態の説明
 
[卵確認日] 産卵日とは若干異なる可能性があります。私は毎晩1度は水槽を確認した。
[計測卵] 孵化用水槽へ移す際に数えた産着卵数。潰卵は含みません。
[潰卵] 卵食いの痕跡で潰れた状態で付着していた卵です。
[床] 実際に使用された産卵床用設置物を示します。
[性] 有性卵(有)か無性卵(無)を示します。卵が順調に発生しなかったものを無性卵としました。
[備考] 卵食い行動を主に記しました。



私の家の水槽です 
■A水槽
 卵確認日計測卵潰卵備考
13月30日55 【a】初めに確認した時よりも僅かだが、卵数が増えていると思われた。
23月31日61 【b】 
34月02日56 【a】 
44月03日29 【a】 
54月05日55 【a】 
64月08日831【a】 
74月12日2 【a】初め17時頃に確認(約50卵)、約3時間後(2卵)
84月13日101 【a】 
94月14日66 【a】産着卵は2箇所に離れて付着していた。
104月15日46 【a】 
114月17日43 【a】 
124月18日603【a】 
134月20日67 【a】 
144月22日142 【a】初め8時頃に確認し、産卵床を移動させた時刻は11時頃。
154月22日131 【a】22時頃に産着卵を確認。卵の上に更に卵が付着しているものを確認。
164月24日76 【a】22時頃に産着卵を確認。17時頃に産着卵は未確認。
174月26日83 【a】5時15分に産着卵を確認。夜明と同時刻くらいに産卵した可能性が高い。
184月28日194 【a】初め6時頃に確認(約80卵)、約12時間後(194卵)
194月29日154 【a】 
205月02日1441【a】 
215月04日225 【a】 
225月05日147 【a】産着卵は5箇所ほどのまとまりで存在。
235月09日2611【a】3時頃に産着卵を確認。前日17時頃に産着卵は未確認。
245月10日116 【a】 
255月12日50 【a】 
265月14日81 【a】18時頃に産着卵を確認。前日16時頃に産着卵は未確認。
275月15日252 【a】 
285月18日73 【a】 
295月20日53 【a】 
305月21日36 【a】 
315月22日1733【a】 
325月26日93 【a】 
335月28日74 【a】初め8時頃に確認(約30卵)、約44時間後(74卵)
345月30日140 【a】初め18時頃に確認(約20卵)、約23時間後(約50卵)、約57時間後(140卵)
356月04日65 【a】初め6時頃に確認(約20卵)、約2時間後(65卵)
366月07日0 【a】初め12時頃に確認(約30卵)、約18時間後(0卵)
376月08日0 【a】初め19時頃に確認(約50卵)、約22時間後(9卵)、約45時間後(0卵)
386月13日0 【a】初め13時頃に確認(約50卵)、約7時間後(0卵)
鑑賞魚用の横幅39cm、奥行25cm、高さ28cmのガラス4面張り水槽。 上部式ろ過器具の吸水部分を低面式ろ過器具に直結させたものを使用した。 ろ過材は科学繊維の綿を使用した。モーターポンプは通常の規格より力の強いものを使った。 産卵床用設置物は【a、b、c、g、h】を使用した。1999年3月24日(開始)〜4月24日はウシモツゴ成魚(雄4尾、雌6尾)とし、 4月24日に1尾(1歳と思われる雄)をD水槽へ移した。雄1尾のみ2歳で他は1歳の可能性が高い。6月30日に終了。

■B水槽
 卵確認日計測卵潰卵備考
13月26日26 【b】18時頃の水温は15.4℃。有性卵だったが孵化には失敗。
24月06日51 【b】前日に大幅な水換えを行った。
34月17日40 【a】 
44月20日46 【b】 
54月24日721【a】 
64月27日551【a】 
74月30日124 【a】 
85月03日556【b】 
95月04日150 【b】 
105月05日169 【b】 
115月07日57 【a】15時頃に産着卵は未確認。
125月09日1007【a】3時頃に産着卵を確認。前日17時頃に産着卵は未確認。
135月10日172 【a】 
145月12日111 【b】 
155月14日69 【a】16時頃に産着卵は未確認。
165月15日0 【b】初め20時頃に確認(約100卵)、約15時間後(0卵)
175月22日0 【b】初め18時頃に確認(約50卵)、約14時間後(2卵)、約19時間後(0卵)
185月29日831【b】モツゴの産着卵のように一文字のような状態で密に付着。
196月04日2 【a】初め8時頃に確認(約100卵)、約7時間後(2卵)
206月05日0 【a】初め17時頃に確認(約30卵)、約18時間後(0卵)
216月08日0 【a】初め10時頃に確認(約100卵)、約31時間後(0卵)
鑑賞魚用の横幅39cm、奥行25cm、高さ28cmのガラス4面張り水槽。 上部式ろ過器具を使用した。ろ過材は科学繊維の綿のみを使用した。 産卵床用設置物は【a、b、n、o】を使用した。 1999年3月24日(開始)〜4月23日はウシモツゴ成魚(雄5尾、雌4尾)としたが、 4月23日に雌1尾が水槽から飛び出て死んだため、 4月24日に雄3尾をD水槽へ移し、D水槽からは雌3尾(未成魚?)を移した。 ウシモツゴのほとんどは1歳の可能性が高い。7月1日に終了。

■C水槽
 卵確認日計測卵潰卵備考
14月12日85 【j】 
24月19日112【a】19時頃に初め確認(約20卵)、約4時間後(11卵+潰卵2卵)
34月22日55【b】22時頃に初め確認(約20卵)、約1時間後(5卵)
44月23日0 【a】22時頃に初めに確認(約20卵)、約10時間後(0卵)
55月02日333【a】 
65月03日104 【k】卵の発生状態から3日以上は経過していると考えられた。
75月05日1423【a】 
85月07日167 【k】 
95月12日0 【k】12時頃に初めに確認(2卵・潰卵3卵)、約48時間後(0卵)
105月18日14811【k】産着卵は【k】内側の片側に144卵+潰卵11卵があり反対側に4卵が付着。
115月26日3 【k】18時頃に3卵を確認した後にそのまま水槽に戻した。有精卵の可能性が高い。
125月27日471【k】前日に戻した同じ場所に新たに着卵させたものと考えられた。
136月01日2010【k】12時頃に初めに確認(約30卵)、約15時間後(20卵+潰卵10卵)
146月02日3848【a】産着卵の回りにアメーバのような5mm以下の生物を3個体確認。
鑑賞魚用の横幅39cm、奥行25cm、高さ28cmのガラス4面張り水槽。 エアレーション式の底面式ろ過器具を使用した。産卵床用設置物は【a、j、k、p、q】を使用した。 1999年3月24日(開始)はウシモツゴ成魚(雄4尾、雌4尾)としたが、 ウシモツゴのほとんどは1歳の可能性が高い。6月30日に終了。

■D水槽
 卵確認日計測卵潰卵備考
15月03日118【p】卵は【p】内側にあり真下の【m】に零れ落ちたと思われる卵が付着。1卵は目視。
25月04日7315【p】No.1と同所に産着卵があり前日の1卵が含まれる可能性がある。着卵密度が低い。
35月08日0 【k】初め8時頃に(約15卵)、約9時間後(0卵)
45月12日0 【p】潰卵のみを4卵確認。
55月13日0 【p】潰卵のみを5卵確認。卵食いされた痕跡と考えられる。
65月14日0 【a】潰卵のみを35卵確認。雄が産着卵から離れたときに雌が卵食いしたところを目撃。
75月14日0 【a】初め6時頃に(15卵・潰卵1卵)、約7時間後(0卵)
85月22日0 【k】初め9時頃に(約30卵)、約9時間後(0卵)、角度約45度の【k】が約25度に傾いていた。
鑑賞魚用の横幅90cm、奥行45cm、高さ45cmのガラス4面張り(2つの角は曲げてある)水槽。 上部式ろ過器具の吸水部分を低面式ろ過器具に直結させたものを使用した。 ろ過材は科学繊維の綿と活性炭を使用した。産卵床用設置物は【a、i、j、k、l、m、p】を使用した。 1999年3月24日(開始)〜4月24日はウシモツゴ52尾(成魚は少ない)と、 トウカイコガタスジシマドジョウ8尾。ウシモツゴ1尾は片目を失っていた。 4月24日にA水槽から1尾(1歳と思われる雄)を移した。 B水槽から雄3尾(未成魚?)を移し、D水槽からは雌3尾(未成魚?)を移した。 37尾(片目を失った個体を含む)とトウカイコガタスジシマドジョウのすべてを鑑賞魚用水槽へ移した。 それによりウシモツゴ成魚や未成魚(雄6尾、雌10尾)となった。6月30日に終了。

■E水槽
鑑賞魚用の横幅60cm、奥行30cm、高さ35.5cmのガラス4面張り(2つの角は曲げてある)水槽。 上部式ろ過器具の吸水部分を低面式ろ過器具に直結させたものを使用した。 ろ過材は科学繊維の綿と活性炭を使用した。産卵床用設置物は【d、e、f、p】を使用した。 1999年3月24日(開始)はウシモツゴ7歳以上の老成魚(雄2尾、雌2尾)で、 4月22日に雄1個体が死に、6月2日には全ての個体が死んだため終了。 E水槽の個体は1997年に2回と1998年に7回の産卵を確認しています。 なおウシモツゴの産卵で最も遅かったのは1997年6月19日でした。



■孵化用水槽

産着卵を確認後は産卵床を別のもの(ほとんどの場合が同じ産卵床用設置物)と交換して孵化用水槽へ移した。 孵化用水槽は小型のガラス水槽やバケツなどを使用した。 孵化用水槽は産着卵が元々あった産卵用水槽の水を使った。 産着卵にはエアレーションを強めに当てるようにした。 孵化用水槽への太陽光は非常に弱くではあるが当たっていた。 ろ過や水温調節は行わなかったが粗塩を僅かに投与することもあった。 孵化用水槽内にはなぜか微生物をよく目撃した。 孵化が間近と思われた卵は産着床を孵化用水槽(大型のバケツ)に集めて孵化させることもあった。 孵化までは9〜13日程度で水温が高いほうが期間は短くなった。 孵化が遅い卵は先の尖ったもので卵を破いて孵化させることもあった。 これらを放置するとカビなどが発生して死んでしまうことが多かった。 孵化した後は仔稚魚用水槽へ移した。



奇形個体のウシモツゴ

■仔稚魚用水槽
仔魚を細かい目の網やスポイトなどで掬い上げて、孵化した場所の水が入ったビニール袋に入れた。 それを仔稚魚用水槽(主に小型のガラス水槽)に15分以上浸してた後に水と仔魚をゆっくりと放した。 餌は不定期(基本的には1日1回)に与え、鮎育成配合飼料や冷凍赤虫が主で、 生きたイトミミズ類、金魚用飼料、卵黄(乾燥させたもの)も希に与えた。 薬剤類の使用や水温調節は行わなかった。 水代えはほとんど行わず蒸発して減った分だけ注ぎ足す程度だった。 ウシモツゴ(仔稚魚)以外の魚は放していない。 仔稚魚の成長や死亡率は飼育設備はほとんど関係ないように思えたが、 与える餌の量と頻度は非常に大きく影響している考えられた。 餌が少ないと大きな個体が小さな個体を共食いすることも希ではなかった。

■餌と塩分
鮮魚店で使われる発泡スチロールに10cmほど水を入れてヒーターで28度に設定し、 その中に牛乳ビンほどのガラスビンにブラインシュリンプ卵と塩水を入れて孵化させていた。 それをウシモツゴに餌として与え、残った餌はそのまま発泡スチロールに流していた。 そうした作業を幾日か繰り返していると、ウシモツゴ2尾が発泡スチロール内に泳いでいるのを目撃した。 孵化用水槽から仔稚魚用水槽へ移す際に誤ってこぼれ落ちた個体と考えられた。 それを10日ほど放置したところ他の仔稚魚用水槽と比べて成長が2倍以上の早さで大きくなった。 これは豊富な餌とヒーターによる水温の高さが原因と考えられた。 塩分は1%以上になっていると考えられたが、ウシモツゴはどの仔稚魚用水槽よりも順調に育って成魚になった。

■奇形個体

順調に行けば孵化1〜2年後には成魚となります。 その中には奇形も発生しますがこれは先天的よりも仔稚魚期に栄養不足などにより、 後天的に奇形となった方が高いと考えています。 それを防ぐには仔稚魚を常に餌を食べられる状態にして、共食いや餓死も減らせると同時に成長も早め、 ヒーターで水温を一定に保って塩水1%ほどにすることにより病気予防することが出来ます。